Qobuzの魅力を際立たせるJET6トゥーイーターの威力!解像度と音楽性が両立した3つの個性

 エラックの最新の「ELEGANT BS 312.2」、「SOLANO BS 283.2」、「VELA BS 404.2」という3つのブックシェルフスピーカーでQobuzを聴く。

 

ELAC

画像1: 『ELAC』注目モデルで聴くQobuz《スピーカーシステム編》

Speaker System
ELEGANT BS 312.2
¥385,000(ペア) 税込

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:JET型トゥイーター、115mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:3.2kHz
●出力音圧レベル:88dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W123×H208×D282mm/7.2kg
●オプション:専用スタンド(LS60、¥104,500ペア 税込)、LS60専用トッププレート(TOP PLATE BS 312.2、¥16,500ペア 税込)あり、その他グリル、スピーカーベースあり
●備考:写真の仕上げはハイグロス・ブラック、他にハイグロス・ホワイトあり

 

Speaker System
SOLANO BS 283.2
¥330,000(ペア) 税込

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:JET型トゥイーター、150mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:2.4kHz
●出力音圧レベル:85dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W190×H331×D248mm/8kg
●オプション:専用スタンド(LS60、¥104,500ペア 税込)、プロテクター・グリル(¥10,450ペア 税込)あり
●備考:写真の仕上げはハイグロス・ブラック、他にハイグロス・ホワイトあり

 

Speaker System
VELA BS 404.2
¥660,000(ペア) 税込

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:JET型トゥイーター、180mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:2.4kHz
●出力音圧レベル:87dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W276×H412×D332mm/9.7kg
●オプション:専用スタンド(LS60、¥104,500ペア 税込)
●備考:写真の仕上げはハイグロス・ブラック、他にハイグロス・ホワイト、ウォルナット・ハイグロス ¥715,000(ペア)税込 あり

●問合せ先:(株)ユキム TEL. 03(5743)6202

 

 

 なんと言っても、JET5から約10年振りにリニューアルしたJET6トゥイーターが技術のポイントだ。このハイルドライバー(蛇腹型トゥイーター)は25mmドームの10倍という発音面積の大きさが強みだ。今回は振動板の質量分布を変化させ、振動板の畳み幅を複雑な組合せにしたことが、メインの変更点。これは共振と歪みの低減、高域の直線性改善に著効という。

 Qobuzのストリーミングで鳴らす曲の聴きどころは次の通り。

①お馴染みのUAレコードの「チーク・トゥ・チーク/情家みえ」(192kHz/24ビット)は、冒頭のベースとピアノの弾力感、ヴォーカルの質感、各音像の定位、空間表現など。

②「中央フリーウェイ/荒井由実」(96kHz/24ビット)は、ベースの音階感、ユーミンの歌の質感、溌剌感など。

③『モーツァルト:交響曲第41番/ペルトコスキ指揮ドイツ・カンマーフィル』から「第1楽章」(96kHz/24ビット、以下「ジュピター」)。これぞピリオド楽器を使うオーケストラのキレキレなモーツァルト。エネルギー感、生命感、ハイテンション感など。

④「ショパン:英雄ポロネーズ/ポリーニ」(192kHz/24ビット、以下「英雄ポロネーズ」)は、ピアノのキレ、解像感、クリアーさ、そして何と言ってもポリーニの演奏の凄み。

Qobuzは、デラN1A/3+デノンDCD-SX1 LIMITEDで再生。アンプはPMA-SX1 LIMITED。

画像2: 『ELAC』注目モデルで聴くQobuz《スピーカーシステム編》

  

画像3: 『ELAC』注目モデルで聴くQobuz《スピーカーシステム編》

今回試聴した3製品に共通して使われているJET6トゥイーター。ハイルドライバー方式と呼ばれるJETトゥイーターの第6世代で、振動板に使われるカプトン素材に印刷加工されたアルミニウムパターンの厚みに変化を持たせて、共振および歪みの低減を果たしたことがトピックだ

 

 

ELEGANT BS 312.2はQobuzの魅力をストレートに体感させる

 1999年に新生エラックとして日本で再登場を飾り、洛陽の紙価を格段に高めたCL310JETの最新世代。紙とアルミの複合振動板、115mm口径ASXR(アルミニウム・サンドウィッチ・クリスタルライン)コーン型ウーファーとJET6トゥイーターによる2ウェイバスレフ型の小型モデル。

 ①「チーク・トゥ・チーク」では空間感の優秀さが、まず印象的。音場が透明で、空気が澄んでいる様子がありありと伝わってくる。小口径ウーファーならではの反応の俊敏さ故に、ベースのピチカートはキレがシャープ。ヴォーカルはやや細めだが、輪郭の屹立感と中味の凝縮感は高い。ヴォーカル、ベース、ピアノという音像要素が強固に存在し、互いに密度の高いアンサンブルを成している。ソロピアノはタッチの強靱さと、そこに込める感情の発露が印象的だ。

 ②「中央フリーウェイ」。冒頭のベースの密度が高く、エッジが明確。鋭角的なヴォーカルが、宙を舞う。中間部でヴォーカルがダブルトラック(多重録音)になると、さらにパワーと切り込みが増す。右チャンネルのギター・カッティングが鋭い。ELEGANT BS 312.2はユーミン初期音源の魅力をストレートに再現してくれた。

 ③「ジュピター」は、アグレッシブで尖鋭な切れ味。エキセントリックな本演奏の凄みと音楽的エネルギーの爆発的発露を、何のケレン味なしに、猛烈な勢いでストレートに聴かせてくれる。音場の密度感の高さ、このサイズ故の凝縮感の凄まじさ、力感と強靱な進行力と本スピーカーならではの物理的な再現性が、本演奏のアグレッシブさを、より加速させている。解釈のウルトラモダンさと、凄まじくも高解像度な録音の合成の魅力を、この小さなスピーカーは描き切った。

 ④「英雄ポロネーズ」は、ポリーニならではの強靱な音楽性がまさに屹立。貴族的な気高さが、これ以上シャープにはなれないというほどの鮮鋭さの中に聴けた。凝縮感と点音源的な立体感にて、Qobuz音源の魅力をストレートに体感させてくれるスピーカーだ。

画像4: 『ELAC』注目モデルで聴くQobuz《スピーカーシステム編》

エラックは1926年、ドイツ・キールで創業。MMカートリッジのオリジネイターとしても知られている。日本では1990年前後に一旦輸入が途絶えていたが、1998年にCL310JETというコンパクトでありながら、極めて再現性の高いスピーカーで日本再上陸。その後、スピーカーブランドとして日本でも定着した。ELEGANT BS312.2は、そのCL310JETの現代版というべき製品。キャビネットサイズや基本的なスピーカー構成はそのままに、ユニットやクロスオーバーなどを洗練させている

 

 

SOLANO BS 283.2で鳴らすQobuzは上質な「音楽の艶」が快感

 SOLANOとは、スペイン語で「風」。エラック・キール本社にてベテランのロルフ・ヤンケ技師の開発になるもの。アルミベース、アルミ・ダイキャスト製フレーム、ウェーブ・ガイド……など上級のVELAシリーズで開発したノウハウが多く援用されている。紙とアルミの複合振動板ASコーンによるウーファーは150mm口径。実に緻密で上質なサウンドが持ち味。「音楽の艶」が上質だ。

 ①「チーク・トゥ・チーク」では、冒頭から、質感の圧倒的高さが聴けた。ベースの一音一音にエネルギーが横溢し、微細な音の粒子が細やかに敷き詰められている印象。ピアノの転がり感が俊敏で、音の飛翔スピードが速い。ヴォーカルがいい。切れ込みが鋭く、リジッドなエッジに囲まれた音の内実には微粒子が蝟集している。

 特に注目はエラックの美質である「艶感」が、たっぷりと放出される点だ。ELEGANT BS 312.2ではストレートで直裁的な再現だったが、SOLANO BS 283.2になると、伝統的な美的質感が色濃い。まるで、エンクロージャー表面の艶々としたピアノ塗装の輝きにも似て、ヴォーカルの艶々とした(といってもべっとりとはしない)、上質な輝きが耳に心地よい。ピアノソロも、一音一音の立ち上がり/下がりが明瞭で、グロッシーだ。高域は、水滴がころころと転がり出すような軽快な煌めき。

 ②「中央フリーウェイ」では、ヴォーカルを含めた、各楽器群がたいへんクリアーに屹立したトゥッティを堪能。艶が合算されて「絢爛」となるのも、エラック高級グレードスピーカーのキャラクターだ。特にストリングスの艶感が美しい。ユーミンのダブルトラックも、ハーモニーの絢爛さが快感だ。

 ③「ジュピター」は本来、キレキレなピリオド楽器演奏なのだが、SOLANO BS 283.2ではそれに加えてエラックならではの「高解像のグロッシー」さが加わり、生体的な情報性というか、実に生々しい臨場感が聴けた。

 ④「英雄ポロネーズ」。ELEGANT BS 312.2とは異なる音調で再生した。ELEGANT BS 312.2は音像をシャープに押し出すが、SOLANO BS 283.2は「場の雰囲気」が豊かなのである。強靱なピアニズムが、広いホールに拡散されていく様子が生々しい。ポリーニのシャープネスと、収録会場のソノリティのリッチネスの両方を高い次元でSOLANO BS 283.2は聴かせる。Qobuz音源が持つ、高い情報性に加え、エラック的な情緒性の再現が、実に耳の快感だ。

画像5: 『ELAC』注目モデルで聴くQobuz《スピーカーシステム編》

2021年に登場したSOLANOシリーズは独キール生産のエラックスピーカーとしては手頃な製品群となるが、JETトゥイーターや最新の音響解説で設計されたウェーブガイドなど、VELAシリーズの技術的成果を盛り込み、高い人気を誇っていた。SOLANOシリーズは、2024年にトゥイーターを最新のJET6に換装した「.2」に進化。キャビネットやクロスオーバーなどは変更を受けておらず、純粋に高域ユニットの高性能化を果たした格好だ

 

 

音源の情報性と音楽性をリッチに描くVELA BS 404.2

 VELA BS 404のリニューアル版。ウーファーは180mm口径のAS XRコーン。アルミ・ダイキャストベース部にマウントされたフロント・バッフルはスラントが与えられ、ウーファーとトゥイーターの時間軸整合が図られている。

 ①「チーク・トゥ・チーク」は、本作で私はプロデューサーを務めたが情家みえはここまでの細やかな情報性と情緒性を持って歌っていたのかと、VELA BS 404.2で聴いて、初めて分かった。それが「苦み」だ。情家はスムーズにすべらかに歌の表面を描く歌唱と、苦みを湿らせる歌唱を巧みに使い分けている。その味わい(たとえば冒頭の「♪HEAVEN〜♪」)が、実に美味なのである。アーティキュレーションがとても細やかで、歌の表情が多彩だ。Qobuz音源の情報性と情緒性を余すところなく表現していた。

 ②「中央フリーウェイ」。初期ユーミンの斬新さをアーティスティックな輝きの中に聴かせるのがVELA BS 404.2の、まさに魔法だ。ユーミンのヴォーカルが神々しく、豊かな詩情を湛える。ヴォーカルを含め、曲を構成する各音像が、確固たる存在感と高尚な質感を持つ。

 ③「ジュピター」。口径の大きなウーファーは上質な低音を再生し、ワイドレンジ感とバランスの良さを支える。シャープネスやアグレッシブさを主体に聴く音源だが、実はその中には豊かな情緒感が含まれることが、VELA BS 404.2で聴けた。ちょっとしたタメやアゴーギクに俊敏な味わいが素晴らしい。

 ④「英雄ポロネーズ」では切れ込みの鋭さと、ハーモニーも豊潤さという一見、アンビバレントな質感を共存させるのが、このスピーカーの凄いところ。ムジークフェラインザールの豊かなホールトーンを味方に付け、尖鋭な切れ味に、巧みに響きを与えるポリーニの神業を堪能。音源が持つ、情報性と音楽性をたいへんリッチに、しかも高貴に再現するスピーカーと聴いた。

画像6: 『ELAC』注目モデルで聴くQobuz《スピーカーシステム編》

JET6トゥイーターを搭載したVELAシリーズの最新世代「VELA 400.2」では、2ウェイブックシェルフスピーカーを2種類ラインナップしている。150mm口径ウーファー搭載のVELA BS 403.2(¥462,000ペア税込/ブラックハイ・グロス、ホワイト・ハイグロス)と、180mm口径ウーファー搭載の本機である。エラックでは本体幅191mmの前者を「スモールタイプ」、本体幅276mmの本機を「ラージタイプ」と称している。前者の容積は約16リットル、本機は約37リットル(いずれも単純に寸法を乗じて計算した値)とかなり異なるので、設置環境/用途に合わせて選択するとよいだろう

 

 まとめると今回の3種のスピーカーはQobuzの優れた音源の本質を、エラックならではの上質な艶と品格感の高い絢爛さで包み、高解像度と高音楽性が両立した名スピーカー群であった。グレードによる違いは、性能差というよりも、個性と聴いた。Qobuzの魅力はエラックでさらに増した。

 

 

>総力特集!音楽はいい音で聴く。Qobuzのすべて【HiVi2025年春号】目次ページ はこちら

>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』

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