石川さゆりの名唱を、録音し続けてきた名手・内沼映二。彼自身の選曲で選び抜かれた12曲がダイナミックに味わえる

 名歌手・石川さゆり。その録音を長らく担当している名エンジニアの内沼映二氏。彼が録音した石川さゆりの数々の名曲の中から、彼女の歌唱力・表現力・声質を存分に味わえる楽曲を内沼氏自身が12曲選曲、フラットトランスファーで収めたSACD/CDハイブリッド盤が本作だ。

Stereo Sound REFERENCE RECORD
SACD/CDハイブリッド盤『StereoSound REFERENCE RECORD/石川さゆり』

(テイチクエンタテインメント/ステレオサウンド SSMS-071)¥5,500 税込

1.夢の浮橋
2.転がる石
3.朝花
4.雪幻花
5.さのさ
6.木遣りくずし
7.酒供養
8.再会
9.いつか微笑むとき
10.山査子
11.残雪
12.花火

●選曲・構成:内沼映二(ミキサーズラボ)
購入はこちら

 1曲目「夢の浮橋」は強打の三味線が鮮烈。その音に煽られた前奏のオケが只ならぬ物語を予感させる。しかし歌はそれ以上に深い悲しみの世界へと誘う。圧倒的歌唱力と、声を生々しい音像と化した録音が凄い。2曲目の「転がる石」は、阿久悠が病を押して書いてくれた、とテレビで石川さゆりが語っていた。それ故か、歌は生きる力に満ちる。ビートに乗せたドス声が見事だ。一転、3曲目「朝花」では南の風が吹く。石川さゆりの表現力の幅の広さに感嘆した。

 7曲目「酒供養」は8ビートで意表を突く。大編成のパワーサウンドと真っ向勝負の、陽気でノリのいいパワフルヴォイスが聴きどころである。ここまでは2000年代前半の作品で、既存盤の音づくりとは異なり、フラットトランスファーを基本にマスタリング、音量を上げれば伸びやかな歌声がダイナミックに浮かび上がる。それにしても、石川さゆりの守備範囲の広さに圧倒される。

 守備範囲の広さは、2020年の、2曲の俗曲で強く意識する。とりわけ5曲目「さのさ」は三味線に加えモダン大型楽器ピアノが発する緊張感と向き合うも、しかし歌は力まず、しなやかだ。新境地である。こうして23年まで、新たな作家陣と向き合い、数々の新境地を披露する。8曲目「再会」は、爽やかな歌声で魅せる青春ソング。

 12曲目「花火」は、抜群の録音が詩の一節一節を際立て、聴く者をその歌世界へととんでもなく引きずりこむ。繊細に捉え配置した各種撥弦楽器も聴き込みたい。

 石川さゆりの歌が凄いのはもちろん、加えて録音ももまた凄いのだと思う。別の観点での聴きどころは、SACD層で聴くか、CD層で聴くのか、もあろう。ともにデジタルディスクでの再生とは言え、似て非なるもの。石川さゆりが微笑みながら「どっちがお好きですか?」と問いかけるようだ……。

This article is a sponsored article by
''.