画像: ステレオサウンド オリジナルソフトの魅力を語る 名盤ソフト 聴きどころ紹介48/尾崎亜美『HOT BABY』『Air Kiss』『Shot』『POINTS-2』SACD/CDハイブリッド盤

緩急自在の尾崎亜美の歌声と凄腕演者による名演を4人の敏腕エンジニアが収めた名盤たち

 1976年にシングル「冥想」でデビューした尾崎亜美。同年リリースのファーストアルバム『SHADY』は、冒頭の「プロローグ」を除く全曲が自身の作詞・作曲、松任谷正隆の編曲によるもので、バッキングには鈴木茂(ギター)、林立夫(ドラム)らが参加。「ポスト・ユーミン」「ニューミュージックの新星」といった呼び声で歓迎され、近年はシティポップの文脈でも再評価が進む名盤だ。

ステレオサウンド社からリリースされている4枚のSACD/CDハイブリッド盤ー『HOTBABY』『Air Kiss』『Shot』『POINTS-2』は、尾崎亜美の45年以上の音楽キャリアにおいて第二期に位置する作品群である。ソロアーティストとして3rdシングル「マイ・ピュア・レディ」でブレイクし、ソングライターとしても杏里「オリビアを聴きながら」や髙橋真梨子「あなたの空を翔びたい」といった提供曲をヒットさせた尾崎が、レコード会社を東芝EMIからキャニオン・レコード(現ポニーキャニオン)に移籍。ソロアーティストとしてさらなる飛躍を図り、それぞれの作品で積極的に新機軸を打ち出している。

1981年5月作品『HOT BABY』1981年12月作品『Air Kiss』

 1981年5月リリースの7thアルバム『HOTBABY』は、尾崎亜美にとって初の海外レコーディング作品。デヴィッド・フォスターが全8曲の編曲を担当し、TOTOのスティーヴ・ルカサー(ギター)とジェフ・ポーカロ(ドラム)ら、名だたるミュージシャンがセッションに参加。録音・ミックスは1978年にスティーリー・ダン『Aja』でグラミー賞最優秀録音賞を受賞したアル・シュミットが担当と、なんとも贅沢なアルバムに仕上がっている。

同じく1981年12月にリリースされた8thアルバム『Air Kiss』は、いわば前作『HOTBABY』の姉妹版。ここではデヴィッド・フォスター自らが仲間たちを引き連れて来日。全8曲の編曲と演奏(キーボード、ベース、ミニムーグ)を担当している。マイケル・ランドウ(ギター、ベース)とマイク・ベアード(ドラム)による冴え渡った演奏も聴きものだ。本作の録音・ミックスはジョージ・マッセンバーグ。フォスターらに同行し、一口坂スタジオで録音・ミックスを行なっている。

画像: 1981年5月作品『HOT BABY』1981年12月作品『Air Kiss』

Stereo Sound REFERENCERECORD
SACD/CDハイブリッド『HOT BABY/尾崎亜美』

(ポニーキャニオン/ステレオサウンドSSMS-020) ¥3,850 税込

●1981年作品
●演奏:ジェイ・グレイドン(g)、スティーヴ・ルカサー(g)、ジェフ・ポーカロ(ds)、トム・スコット(sax)、ニール・ステューベンハウス(b)、デヴィッド・フォスター(key)
●録音/ミックス:アル・シュミット
●マスタリングエンジニア:鈴木浩二(ソニー・ミュージック)
●備考:オリジナル盤リリース当初のスモールディスクに収録されていた「Sweet Christmas Song」は未収録
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画像: Stereo Sound REFERENCERECORD SACD/CDハイブリッド『HOT BABY/尾崎亜美』

Stereo Sound REFERENCERECORD
SACD/CDハイブリッド『Air Kiss/尾崎亜美』

(ポニーキャニオン/ステレオサウンドSSMS-022) ¥3,850 税込

●1981年作品
●演奏:マイク・ベアード(ds)、マイケル・ランドウ(g、b)、デヴィッド・フォスター(key)●録音/ミックス:ジョージ・マッセンバーグ
●マスタリングエンジニア:鈴木浩二(ソニー・ミュージック)
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1982年作品『Shot』1986年作品『POINTS-2』

1982年11月リリースの9thアルバム『Shot』では、久しぶりに鈴木茂、林立夫ら国内のなじみのミュージシャンを起用。尾崎本人が全曲の編曲を手がけているが、前2作でのフォスターとの共同作業で得たノウハウが反映され、より成熟した“尾崎亜美らしさ”を展開している。ミックスは名匠・内沼映ニ氏。

1986年3月リリースの『POINTS-2』は、1983年の『POINTS』の続編。松田聖子、杏里、岡田有希子、松本伊代、河合奈保子らに提供した楽曲をセルフカヴァーした作品集で、ハリウッドのONE ON ONE Studioにて日米混合のスタッフで録音されている。こちらのミックスは前田信雄氏によるものだ。

画像: 1982年作品『Shot』1986年作品『POINTS-2』

Stereo Sound REFERENCERECORD
SACD/CDハイブリッド『Shot/尾崎亜美』

(ポニーキャニオン/ステレオサウンドSSMS-023) ¥3,850 税込

●1982年作品
●演奏:林立夫(ds)、後藤次利(b)、岡沢茂(b)、鈴木茂(g)、佐藤準(key)、小林信吾(syn)、笛吹利明(Ac.g)他、
●ミックス:内沼映二
●マスタリングエンジニア:鈴木浩二(ソニー・ミュージック)
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画像: Stereo Sound REFERENCERECORD SACD/CDハイブリッド『Shot/尾崎亜美』

Stereo Sound REFERENCERECORD
SACD/CDハイブリッド『POINTS-2/尾崎亜美』

(ポニーキャニオン/ステレオサウンドSSMS-021) ¥3,850 税込

●1986年作品
●演奏:江口信夫(ds)、深井康介(b)、堀越信泰(g)、小林信吾(key)、谷有光(key)、他
●録音:ピーター.T.ルイス、前田信雄、矢野真一
●ミックス:前田信雄
●マスタリングエンジニア:鈴木浩二(ソニー・ミュージック)
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 これらのSACD化にあたっては、ポニーキャニオンの管理するオリジナルマスターが東京・乃木坂のソニー・ミュージックスタジオに持ち込まれ、小原由夫氏の立ち合いのもと、マスタリングエンジニア・鈴木浩二氏の手によりSACD層のDSD音源とCD層のPCM音源の両新規マスターが作成された。オリジナルマスターのフォーマットは、『HOTBABY』と『Shot』の2作がPCM形式のデジタルアーカイヴ、『Air Kiss』と『POINTS-2』の2作が76cm/s収録の4分の1インチアナログテープ。前者のデジタルアーカイヴは、ソニーの独自技術でアップコンバート、アナログ領域でSONTEC製イコライザーを使って若干の補正を行なったものをCD層のPCM音源に。その音源をソニー開発のDAW(Digital Audio Workstation)「SONOMA」で変換したものがSACD層のDSD音源となる。後者のアナログマスターは、スチューダー製オープンリールデッキA820でプレイバック。デジタルマスターと同様にSONTEC製イコライザーで若干の補正を行なったものをPCM音源に、SONOMAで変換したものをDSD音源としている。

豊かなダイナミックレンジとディテイル感を重んじるアル・シュミットの『HOT BABY』、キレ味のいいギターのカッティングやドラムのフィルを克明に捉えるジョージ・マッセンバーグの『Air Kiss』、豊かな空気感と情報量に驚かされる内沼映二の『Shot』、歌謡曲ミーツ西海岸サウンド的な取り合せを衒いなく聴かせる前田信雄の『POINTS-2』。4枚のSACD層を聴くと、4人のエンジニアの個性が見事なまでに浮かび上がる。SACD層とCD層を聴き比べると、いずれの作品でもSACD層は主役たる尾崎亜美の歌声をより艶やかに再現しており、加えて『Air Kiss』の最終曲「Just Once Again」などに代表される見晴らしのいい音場の広がり感には、SACDだからこそ味わえる音響的な心地よさが備わっている。いずれもレコーディングとマスタリングの両方を手がける鈴木浩二氏らしい、オリジナル音源の聴かせどころを熟知した仕上がりだ。

 2023年2月現在、尾崎亜美のハイレゾ音源が聴けるのは、実はまだこの4タイトルだけである。意外なことに、ダウンロードでも配信でもアルバム単位のリリースはない。緩急自在なその歌声と卓越したソングライティング、丹念につくり込まれたサウンドメイキングの妙味を、ぜひともSACDで味わっていただきたい。

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