TVS REGZAは、アメリカ・ラスベガスで開催されている世界最大のテクノロジー見本市「CES 2023」にブースを出展、映像エンジン「レグザエンジンZRα」の新機能に関するデモ展示を行っている。それに先立ち、日本の報道陣に向けてCES2023での展示内容に関する説明会が開催されたので、以下でその詳細をお伝えしたい。
冒頭登壇したTVS REGZA株式会社 取締役副社長 石橋泰博さんは、2022年は3年の期間をかけて開発した「レグザエンジンZRα」を搭載した有機ELテレビやMiniLEDバックライト&量子ドットフィルター搭載液晶テレビを中心に、充実したラインナップが揃ったと語った。これにより市場でも4Kテレビでのトップシェアを競うことができたそうで、2023年はそれを広げるべく、さらにいい商品を届けていきたいと語った。
そのキーとなるのが新しいレグザエンジンZRαだ。もともとZRαにはディープニューラルネットワークが搭載されており、これを進化させるとともに、新たなセンシングテクノロジーを組み合わせることで、さらなる感動体験、感動できる映像体験を作っていきたいと考えているという。
具体的にはテレビにミリ波レーダーを搭載して視聴者の人数や場所を検知、視距離を把握して映像や音を最適化するというものだ。AI側の進化としては映像解析テクノロジーをブラッシュアップし、映像の構造や被写体の種類を判別することで、奥行再現などを改善していくという。
続いて、それらの具体的な技術内容について、同社の研究開発センター半導体開発ラボ長の山内日美生さんが解説してくれた。
まず「ミリ波レーダー高画質テクノロジー」では、上記の通り、ミリ波レーダーを内蔵することで、視聴者に最適な画質を実現する。ミリ波レーダーは自動運転車などにも搭載されているデバイスで、これを使うことで人数や距離といったデータを取得できるという。
そもそもテレビを見ている場合、視聴距離が近い時は画面の情報を充分把握でき、ノイズも目に付きやすい状況になる。これに対し視聴距離が遠くなると、精細感やコントラスト感が物足りなく思えてしまう。これまでは視聴距離に関わらず同じ絵が表示されていたわけだが、新しいレグザエンジンZRαではミリ波レーダーで視聴距離を把握し、距離に応じた最適な絵柄に自動調整するのだという。具体的には距離が近い場合はノイズを抑制して自然な高画質を志向し、遠い場合は精細感を高めてメリハリのある絵柄に変更しているそうだ。
さらに音質面でも視聴者が座っている場所を検知して、左右のスピーカーの出力時間を調整することで位相差が発生しないように、タイムアライメントの補正を行ってくれる。なお視聴者の検出は2人までを想定しており、補正は画面に近い人をターゲットにして行うそうだ。
続いて「構図推定 AI立体感復元超解像技術」についても説明された。これはZRαのAI機能を進化させたもの。これまでもZRαでは被写体検出を行っていたが、今回は画面全体の構図を把握し、その中で被写体となっている人物の顔や服を正確に把握、より人物表現に適した絵柄に調整するというものだ。
デモでは橋の上に立つ人物をAIが判別、背景の建物などのノイズを抑制しながら奥行きのある空間を再現していた。さらに人物の顔や衣装はディテイルまで自然に再現し、精細感も充分保たれている。
もうひとつ、「AIコンテンツ判別によるネット動画高画質化技術」では、ネット配信番組に対しての高品質化にも取り組んでいる。そもそもレグザでは地デジやBSなどの放送番組について、電子番組表でジャンル情報を取得し、視聴中の番組ジャンルに合わせた最適化を行っている。しかしネット番組ではジャンル情報がわからないので、最適化が難しかったという。そこで新しいZRαではAIを使ってネット配信コンテンツの特徴を判別し、種類に応じた高画質化処理を加えるよう進化している。
まず映像に含まれるフィルムグレインを検出し、ビデオ/フィルム/アニメ映像の3種類に分類する。その際、最近のアニメ映像は背景の描き込みが緻密で、さらにCGを使うなど、画像全体を見てもアニメか実写かの判別が難しくなっているので、今回はキャラクターの顔を検出して実写かアニメかを区別しているとのことだ。
またアニメ作品は配信では圧縮率が高いこともあってキャラクターの顔や髪などのグラデーションでバンディングが目に付きやすいという。そこで新ZRαではバンディングを抑えてなだらかなグラデーションが再現できるような処理を加えている。さらに輪郭線の黒をしっかり沈めて、切れのいい表現にすることで映像のクリアーさを演出しているそうだ。
そして、CES2023のレグザブースには、これらの新機能を盛り込んだレグザエンジンZRαを搭載した2023年レグザとして、77インチの4K有機ELモデルと、75インチ4K Mini LEDバックライト&量子ドットテクノロジーを搭載した液晶モデルが展示されている。4K有機ELは画質・音質・スペックのすべてで頂点を目指した製品であり、液晶モデルではMini LEDバックライト、量子ドットアルゴリズムもすべて新規開発されているそうだ。
この2モデルからもわかる通り、TVS REGZAでは、2023年はテレビの大画面化に注力していくという。画質・音質の両方で高いクォリティが実現できた今、より大きな価値、没入感を提供するためには大画面化が最適ということなのだろう。進化したレグザエンジンZRαとミリ波レーダーによるセンシングがもたらす高画質・高音質・快適な操作性がテレビライフにどんな新しい価値を加えてくれるのか、期待したい。