映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第79回をお送りします。今回取り上げるのは、フランス発のパロディの快作『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』。終始爆笑必至の注目作。とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)
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『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』
7月15日(金)より、全国ロードショー
古くはルイ・ド・フュネスが怪盗とドタバタをくり広げる『ファントマ 電光石火』や、クロード・ジディ監督とダニエル・オートゥイユがコンビを組んだ青春コメディ『ザ・カンニング{IQ=0}』、ジャック・ヴィルレ主演の『奇人たちの晩餐会』など、フランス映画にもバカ寄りの痛快コメディがあったものだった。
おそらくいまもあるんだろうな、タイクツなお洒落映画以外にも。それを教えてくれるのがTV業界出身で仲間とコメディ・グループ、バンド・ア・フィフィを結成して『真夜中のパリでヒャッハ-!』や『シティハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(これは快作!)などを作ってきたフィリップ・ラショーだ。
日本の原作漫画への愛をたっぷりと注ぎ込んだ『シティハンター~』につづき、ラショーが目をつけたのがスーパーヒーロー映画。自身が演じる駆けだし俳優のセドリックがつかんだビッグ・チャンス。バットマンそっくりのヒーロー、バッドマン役に抜擢されたセドリックは、父親の急病の連絡を受けコスチューム姿のまま、あわてて病院に向かう。
その途中に事故を起こした彼は記憶を失い、かたわらのコスチュームを見て自分は本当にスーパーヒーローだと勘違いをしてしまうのだ。
そして始まる大乱戦。主役不在なのに映画は代役でテキトーに進み、セドリックはジョーカーそっくりの宿敵ピエロを追う。
仲間のアルッティ、ブダリらが今回も共闘。『シティハンター~』では香を演じたエロディ・フォンテン(名前の安さがいいですな)は私生活でもラショーとの間に一子をもうけたパートナーで、今回も息の合ったところを見せている。
『ジョーカー』での階段でのダンス、目の周りを黒く塗っている素顔のバッドマン、ムジョルニアを構えたソーやキャプテン・アメリカ(もちろん偽物)がバッドマンと並び立つDCとマーベルが合体した名場面など、版権だいじょうぶなのかコレ、の名場面がつづく。
しまいにはスタン・リーのそっくりさんやお尻を撃たれるトム・クルーズ(の後ろ姿)まで登場するのだ。
下ネタもこれまで通り快調だが、くだらないものを大マジメに作っているので今回もファンは楽しめるだろう。
フィリップ・ラショー、現在42歳。これからもシネフィルが鼻もひっかけないフランス映画を作ってくれ!
映画『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』
7月15日(金)より、グランドシネマサンシャイン池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国ロードショー
出演:フィリップ・ラショー、ジュリアン・アルッティ、タレク・ブダリ、エロディ・フォンタン、アリス・デュフォア、ジャン=ユーグ・アングラ―ト、アムール・ワケド
製作・監督・脚本:フィリップ・ラショー
原題:Superwho?
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
2021年/フランス・ベルギー合作/フランス語/シネマスコープ/5.1ch/83分/映倫 G
(C)CINEFRANCE STUDIOS - BAF PROD - STUDIOCANAL - TF1 STUDIO - TF1 FILMS PRODUCTION (C)STUDIOCANAL (C)Julien Panie
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