米国ニューヨーク州ブルックリンにあるグラドは、3世代にわたるフォノカートリッジの名門ブランド。ティファニーの時計技師だったジョセフ・グラド氏が自分でフォノカートリッジを製作し、1953年にグラド・ラボラトリーズを設立したのがスタートだ。
今回はTimbreという中級クラスのオーパス3と、安価なプレステージ・レッド3を聴いた。ともに発電方式はMI(ムービングアイアン)型に分類されるが、磁性材の軽量円盤を動かすというグラド独自の構造。銅線が巻かれた、左右合計4本のポールで発電するという仕組みである。
オーパス3はメープル材ハウジングを採用し、ここで聴いたのは4mVの高出力タイプ。他にインダンクタンスとインピーダンスを下げた1mVの低出力機とモノーラル仕様がある。カンチレバーはアルミニウム製で、ダイアモンド針は楕円形状ということだ。
本誌試聴室ではテクニクスSL1000Rを使って聴いている。デイヴ・グルーシンのダイレクト盤では、トランジェントのよさが感じられる軽快な音を聴かせた。アンセルメ指揮「三角帽子」は、力感を備えながらも繊細な音の語り口。総じて柔軟さを感じさせる印象であり、入念な鳴らし込みで音楽の表現力はもっと高まると思わせた。発電構造を共通にするプレステージ・レッド3は上級機ほど音の深みは感じさせないものの、5mVの高出力がもたらす元気のよさが身上のよう。アナログ盤再生の入門用に好適だ。