ミニLEDの液晶テレビは一昨年ぐらいから注目され始めたが、今年のバーチャルCES2021では、その勢いがさらに増したことが分かった。
ミニLEDとは、要するに小さなLED。その定義はメーカーによってまちまちだが、一般には直径が100μmから200μmのLEDを言う。高さも通常LEDよりは比べ物にならないほど薄い(100μm未満のLEDを『マイクロLED』という)。
これを画素として使うわけではない。ミニLEDレベルだと、そのままLEDで絵を出すには粗すぎる(フルHDでさえ108万画素が必要で、現状のミニLEDでは3桁足りない)ので、あくまでバックライト用途。ローカルディミンングとして、それを数万個敷き詰め、部分発光エリアも数千に増やした液晶テレビのことを言う。
要するに小さなLEDを多数使い、ローカルディミングのバックライト制御をより細かく分割しようという単純な発想だ。これがもう1段階小さなマイクロLEDレベルに到達したら、1画素としてのサイズにもなる。
昨年のCES2020、中国のTCLは25,000個、長虹(チャンホン)は5,000個のLEDを使用した液晶テレビを展示していた。いずれにせよこれは中国メーカーの戦略で、何故かと言うと新世代デバイスとされるOLEDは先行メーカーが強すぎて、今からやっても追いつけないからだ。そこで、バックライト用LEDの微細化で新アプリケーションを用意した、という経緯。
特に昨今は、アメリカでストリーミングが急激に人気を博し、それが液晶テレビを選好させている。今回のCESでの話題のひとつが明らかにテレビの復権だった。中国、韓国のテレビメーカーは、揃ってこの期間で、北米でいかに伸びたかを喧伝した。
中国のスカイワースは、「2019年11月からの一年に、北米で売り上げが137%伸びました」(Tony Wang社長)と言った。これまでOLEDに押されっぱなしだった液晶が反撃に立ち上がった形だ。TCLが始めたが、今や韓国のサムスン、LGも参入。巣ごもりで予想以上に大型液晶が売れ始め、液晶でも行けると、再度力を入れ始めた。
そのTCLは、LEDの光を拡散するレンズを極薄にすることで、LEDバックライトと液晶層との距離間を0mmまで縮小したOD Zero(Optical Depth Zero)技術を開発。ミニLEDの開拓者としての矜持を見せた。
TCLはIFA 2018に世界で初めてミニLEDをデビュー。19年から世界でミニLED液晶テレビを発売。昨年のCES 2020では、小型LEDを数万個並べてバックライトを構成する「Vidrian Mini-LED」技術を発表した。今回は第3世代のOD Zero技術。一般的な液晶テレビやQLEDでは、LEDバックライトと液晶層が10~25mm離れているが、OD Zeroでは距離間を0mmまで縮小したとする。正確にいうと、マイクロレンズを小型化し、その頂点が限りなく、液晶レイヤーに接近したということだ。
TCLはLEDの数や、ブロック数を公表していないがLGエレクトロニクスはプレスカンファレンスで、初の「QNED Mini LED TV」を紹介すると発表。30,000のLED、2,500のエリア数を公表している。LGエレクトロニクスは日本で紹介する方向と思われるが、日本メーカーの態度は不明だ。日本では有機ELテレビへの憧れが強く、そこまで液晶に力を入れるのかという意見もある。