映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第50回をお送りします。今回取り上げるのは、韓国版ゾンビパニック作『新感染半島』の第3弾『新感染半島 ファイナル・ステージ』。前作から4年後の世界を舞台に、圧倒的物量をもって迫ってくる彼らの姿を描き、韓国では大ヒットを記録。元旦からその脅威を、とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)
【PICK UP MOVIE】
『新感染半島 ファイナル・ステージ』
2021年1月1日(金)TOHOシネマズ日比谷 他 全国ロードショー
ソウルを出発した高速鉄道の車内が阿鼻叫喚の地獄絵図に! ゾンビたちをタコ殴りした豪腕マ・ドンソクの出世作ともなった人気作『新感染 ファイナル・エクスプレス』の続編が登場した。
舞台は爆走する車内という「線」から「面」へ。事件から4年。今回は感染者があふれ、陸の孤島となった韓国を背景に、無数のゾンビと私設軍隊、死の街に潜入した主人公(『義兄弟 SECRET REUNION』のクールガイ、カン・ドンウォン)たちが激突。『マッド・マックス』タイプのバトル・アクションが展開する。
演出は前作につづいて新鋭のヨン・サンホ。監督は『新感染 ファイナル・エクスプレス』の前日譚に当たる感染爆発初期の混乱を描いたアニメーション長編『ソウル・ステーション・パンデミック』(皮肉でダークなオチが付いたスリラー)を作っており、これでそれぞれタッチが異なるパンデミック三部作が完成したことになる。
視力が低下し暗闇ではふらふらしているだけだが、音や光に気がつくと獲物めがけて猛スピードで襲いかかってくる感染者。本作のモンスターは『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『ワールド・ウォーZ』と同じ近年主流の「走るゾンビ」で、へたすりゃ生きてるときより元気なのだから始末に負えない。個人的にはじわじわ近づいてくるスロウな連中が好きだけどね。
見渡す限りの瓦礫の街。この終末世界の敵はゾンビだけではない。一帯を支配する無法者たちの改造車と大型トラックの猛烈なカーチェイスが大きな見せ場になっている。そこにゾンビの群れが押し寄せる三つ巴の戦い。ゾンビの発生によって、人間の欲望や社会格差がむき出しになるシリーズの特性は守られている。
前作のマ・ドンソクのような際立ったキャラクターがいないのが弱点だけれど、それを物量で埋めたということだろうか。死の世界からの決死の脱出劇。歌手としても知られるイ・ビョンヒョンがライフルを構え、幼い娘たちを守る戦う母親を演じている。
『新感染半島 ファイナル・ステージ』
2021年1月1日(金)TOHOシネマズ日比谷 ほか全国ロードショー
監督:ヨン・サンホ
出演:カン・ドンウォン、イ・ジョンヒョン、クォン・ヘヒョ、キム・ミンジェ、ク・ギョファン、イ・レ、イ・イェオン
原題:PENINSULA
配給:ギャガ
2020年/韓国/シネマスコープ/1時間56分
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公式サイト:https://gaga.ne.jp/shin-kansen-hantou/