2019年から今年にかけて、俄然注目度が上がっている音楽再生ソリューション「Roon(ルーン)」。レコード、CD、ハイレゾと推移してきた音楽再生史上初めて、「楽曲再生」と「楽曲を探す」という本来別々の作法を1つのソフトウェア上で統合した、画期的な存在である。
話題のルーンだけに、多くの方が「試したい」と考えているはずだが、ルーンの環境を構築するためには1つ障壁があった。ルーン対応のネットワークプレーヤーとiPad等の操作端末の他に、頭脳部として機能するルーンサーバーが必要になるのだ。
そのルーンサーバーとしての役割を担うのは元々パソコンだったのだが、ルーンのプログラムをインストールする手間や、電源を入れてから起動、そして終了のためのシャットダウン動作が面倒などはっきりいって使いづらかった。
そのような中、昨今ついにルーン純正のサーバー「Nucleus(ニュークリアス)」が登場。さらにオーディオショップがインテルのNUC(Next Unit of Computing)ベースの独自モデルをリリースするなどしており、これらはパソコンベースのルーンサーバーよりも圧倒的に使いやすいので脚光を浴びている。
●Roon Server対応ミュージックサーバー
SOtM sMS-1000SQ Eunhasu
¥500,000(税別、USB出力モデル)
¥550,000(税別、デジタル出力モデルまたはアナログ出力モデル)
●使用OS:Linux(Eunhasu OS)
●利用可能なオーディオ再生ソフトウェア:RoonServer(Roon Ready)、TIDAL、Qubuz、Minim Server、DLNA(Open Home)、Logitech Media Server(LMS)、Squeezelite、HQplayer Network Audio Adapter、Shairport
●基本ストレージ:64GバイトSSD
●拡張ストレージ:最大8TバイトHDDまたは2TバイトSSD
●接続端子:Audio grade USB 3.0port(tX-USBexp)、External power input jack、USB power on/off switch、USB audio class 2.0 support※デジタル出力モデルは上記にAES/EBU、Coaxial、Optical出力を追加。アナログ出力モデルはバランス、アンバランス出力を追加
●寸法/質量:W360×H68×D240mm/4kg
※オプション(価格はすべて税別)
●SSD交換:2Tバイト¥55,000、4Tバイト¥75,000
●HDD追加:2Tバイト¥18,000、4Tバイト¥25,000
●マスタークロック入力機能追加:USB出力モデル¥120,000、デジタル出力/アナログ出力モデル¥150,000
●リッピングドライブ追加¥30,000
と、前置きが少々長くなってしまったが、このルーンサーバーに新たな注目株が登場したのだ。それが、SOtMがリリースするRoon Server対応ミュージックサーバー「sMS-1000SQ Eunhasu(ウナス)」である。
SOtMはアジアに拠点を持つ新進気鋭のメーカーだが、PCオーディオの世界では名を知らぬものはいない。オーディオグレードのパソコン用USB出力カードや、空冷ファンのノイズを低減するファン用ノイズフィルターなどを提供し、高い評価を受けている。
近年は、そのノウハウを使った小型のネットワークトランスポート、「sMS-200 Neo」「sMS-200ultra Neo」や、ネットワーク品質を向上させる光LAN用SFPポート付きネットワークスイッチの「sNH-10G」、さらにマスタークロックの「sCLK-OCX10」などが好評で、ホームオーディオユーザーからの知名度も上がってきた。筆者も自宅でsNH-10Gを利用しており、ネットワークオーディオ環境で活躍している。
sMS-1000SQ Eunhasuの特徴をひと言で言うなら、ルーンサーバーとしての使い勝手を生かしつつも、後発として多くのストロングポイントを保有している。それは大きく2点あり、1つはルーンサーバー以外にも様々なサーバー機能を利用できること。もう1つは上記の良質なSOtMのプロダクトを生かし、電源の強化やクロックの追加などルーンサーバーとしての音質向上が行えることだ。
sMS-1000SQ Eunhasuの筐体はアルミ製で、LinuxをベースとしてSOtMの独自OSが動作している。標準構成では64GバイトのSSDが搭載されており、追加で最大8TバイトHDDまたは2TバイトSSDの内臓ストレージを利用できる。
sMS-1000SQ Eunhasuは、上記構成をベースとして3種類の出力(USB、デジタル、アナログ)を持つモデルが用意されている。
またsMS-1000SQ Eunhasuはルーンサーバー以外にも、ネットワークオーディオを使用するユーザーに有用な様々なソフトウェアが利用可能だ。例えば、海外製のネットワークプレーヤーの多くが利用するサーバーソフトMinim Serverを始め、DLNA(Open Home)サーバー、Logitech Media Server(LMS)、Squeezelite、HQplayer Network Audio Adapterなどが利用可能で、TIDAL/Qubuz再生を実現するプラグインも用意されている。さらにCDリッピング機能も実装している。
高機能というと操作が煩雑になると心配される方も多いと思うが、インターネットブラウザ経由で管理画面にアクセスして設定変更が行えるなど、ユーザビリティも考慮されている(最低限のPCスキルは必要だが)。
またメイン電源とUSBオーディオポートにクリーンな電源を独立供給できるなどの、機械的な音質向上アイテムも利用可能だ。さらにSOtMのマスタークロックsCLK-OCX10から、10.000MHz正弦波クロック出力を受け取り、USB周りの動作精度を上げてトランスポートとしての音質を更に上げることまで可能なのだ。
今回はsMS-1000SQ Eunhasuを自宅環境に持ち込み、ルーンサーバーとして使用した。組み合わせるルーンのエンドポイント(音声出力)には、先日導入したRoon Readyのネットワークプレーヤー、ルーミン「X1」を用いる。さらに今回は筆者が所有するMac miniベースのルーンサーバーと比較試聴も行った。
ラックに設置されたsMS-1000SQ Eunhasuは、オーディオ製品らしい面持ちを備えている。
購入時点でルーンサーバーがインストールされているから、sMS-1000SQ Eunhasuの背面に電源アダプターとLANケーブルをつないで、フロントパネル右側の電源ボタンを押せば準備完了だ。
iPadのルーンアプリを立ち上げ、本体内部のSSDストレージに保存したジョン・ウィリアムズ指揮の『ライヴ・イン・ウィーン』(96kHz/24ビット/FLAC)を再生した。ここで1ついいなと思ったのは、本モデルは記憶媒体を内蔵するのでNASなどを別途用意する必要がないこと。もちろん本機に挿入したUSBメモリーやNAS内の楽曲も再生可能である。
お気に入りのプレーヤー、ルーミン「X1」との組み合わせで、快適なRoon環境を構築
気になるsMS-1000SQ Eunhasuのルーンサーバーとしての音質だが、筆者所有のMac miniベースのルーンサーバーと比べて、一聴して聴感上のS/Nと分解能に優れ、サウンドステージの奥行や高さも正確に表現されている。
『ライヴ・イン・ウィーン』は『スター・ウォーズ』や『E.T.』などの映画音楽をウィーンフィルが演奏するオーディオファイル人気急上昇中のタイトルだが、これを聴いていると他にある同様の映画音楽やサウンドトラックも聴きたくなった。
ここでルーンのアドバンテージが生きる。再生中に表示される、ジャンル、アーティスト、指揮者などから新たなリンクが表示され、TIDALとQobuzから同様の楽曲に辿り着き再生することができる。これぞルーンのアドバンテージだ。
いかがだったろうか? 現在ルーンサーバーにはいくつか選択肢がある。中でもsMS-1000SQ Eunhasuは、ベースモデルの音質的素性のよさに加え、PCオーディオで評価の高いSOtMの後付け製品を利用して更なる音質アップが狙える。言葉が悪いがこれはドーピング的な魅力があるルーンサーバーである、しかも他のサーバーとしても使える多機能性も魅力で、購入後の使用範囲が大変広い製品でもある。