JSD Pure Blackは、『管球王国』80号でリポートしたJSD S75の後継機である。後継機といってもマイナーチェンジ版と発表されていて、価格は据え置き。スペックも、ボディ構造の強化にともない自重が2g増したくらいで同等だ。実機をよくよく観察して発見したのは、カンチレバーとSFLスタイラスの結合法が変わったことである。旧タイプのそれを、筆者はまるで魔法のようと記した。新しいPure Blackはむしろオーソドックス。ホワイトサファイアのカンチレバー先端に孔をあけ、針先を深く植え込んである。振動質量がすこし増えたかもしれないが、感覚的には手堅く安心だ。

 今回の試聴では待望の昇圧トランスを通して聴くことができた。驚きの価格ではあるけれど、高純度銀線巻きのトロイダル型で、グレーハンマートーン塗装の非金属ケースに収まった純正品だ。アンバランス接続専用だが、EMTカートリッジと他社のMC型向けの選択機能をもつユニバーサル設計になっている。詳しくはカタログ類を参照していただきたい。

 とにかく1mV出力クラスのMCでは、毎度頭を悩ます昇圧手段。Pure BlackとSTX 5/10のコンビは、期待にまったくたがわず鮮やかな美音を振り撒く。骨格のたくましい、それでいて華美に過ぎず深々と豊潤優雅な音楽表現はまさにプロ級の貫録だ。1本の音溝が繰り広げるマジックに、LPの回転がそっと寄り添う不思議な快感を味わった。

画像1: 音楽表現はプロ級の貫禄。MC型カートリッジ・EMT JSD Pure Black

Cartridge
EMT 
JSD Pure Black
¥580,000

●発電方式:MC型 ●出力電圧:1mV(1kHz、5cm/sec) ●インピーダンス:24Ω ●適正針圧:2.4g ●自重:12g ●針交換価格:¥450,000 ●問合せ先:(株)エレクトリTEL. 03(3530)6276

画像2: 音楽表現はプロ級の貫禄。MC型カートリッジ・EMT JSD Pure Black

Step Up Transformer
EMT
STX 5/10
¥900,000

●昇圧比:+14dB(1:5)/+20dB(1:10)●インピーダンス:250Ω(EMTポジション)/25Ω(Open・+14dB)/100Ω(Open・+20dB)●寸法/重量:W200×H80×160Dmm/1.9kg

画像: 針先の接合方法と、ボディ背面(シェルと接する側)に金属プレートを追加して共振を抑えるサンドイッチ構造がJSD S75からの主な変更点。

針先の接合方法と、ボディ背面(シェルと接する側)に金属プレートを追加して共振を抑えるサンドイッチ構造がJSD S75からの主な変更点。

画像: 昇圧トランスSTX5/10の背面。上段が入力、下段は昇圧比+14dB(EMTカートリッジ推奨)と+20dBの2系統の出力。中央部は、上からアース端子、ハムの影響を選択するグラウンドオプション(Input Cold/Floating/Center Tap)、使用カートリッジに応じた負荷切替えのロードオプション(EMT=EMT製/Open=他社製)を配置する。


昇圧トランスSTX5/10の背面。上段が入力、下段は昇圧比+14dB(EMTカートリッジ推奨)と+20dBの2系統の出力。中央部は、上からアース端子、ハムの影響を選択するグラウンドオプション(Input Cold/Floating/Center Tap)、使用カートリッジに応じた負荷切替えのロードオプション(EMT=EMT製/Open=他社製)を配置する。

画像: 針先の接合部を確認する高津氏。
針先の接合部を確認する高津氏。

関連サイト

この記事が読める季刊「管球王国」Vol.94のご購入はコチラ!

This article is a sponsored article by
''.