フェーズメーションはアナログ再生機器に注力しているオーディオメーカーだ。新製品のフォノイコライザーEA550と昇圧トランスT1000は、ともに同社の最高級機で確立したモノーラル筐体構造を採用している。グラウンド線の接続が必要になるけれども、ステレオ音場の拡がりとセパレーション感など筐体を左右独立とした利点は大きい。背面にある端子群は結線のしやすさを考えた配列で、単純なモノーラル筐体ではないというコダワリが見て取れる。
本誌試聴室のシステムはエアータイトのATC5プリアンプとATM3パワーアンプ、そしてB&W800D3モニタースピーカーである。それにテクニクスSL1000RアナログプレーヤーとフェーズメーションのMC型フォノカートリッジPP2000を用意して試聴に臨むことにした。
まずは、単体の昇圧トランスT1000から。大型EIコアの採用と2次側の巻線にPCトリプルC銅線を使っているのが本機の特徴で、シングルエンド接続で聴いたドナルド・フェイゲン「ザ・ナイト・フライ」は、弾力のあるリズムの低音域をベースに厚みのある音を聴かせる。音抜けも良好なのは音質比較で決めたというフルテック製ロジウム端子の効力もあるに違いない。アンセルメ指揮「三角帽子」は、臨場感の豊かさが印象的で全体的にクリアーな音である。井筒香奈江のダイレクト・カッティング盤も、深遠な音場空間に立体的に音像が浮かぶ。
バランス入力(XLR端子)に変えて聴いてもレベル差はないが、微妙ながらも輪郭を鮮やかに描く傾向に思えた。広帯域さも感じさせる、優れた昇圧トランスだ。
フォノイコライザーアンプのEA550は、オール半導体増幅である。フェーズメーションの信条である無帰還回路にこだわった本機のEQ補正はCR型。不要な超低域をカットするローカットフィルターも、CR型の2段無帰還回路になっているという。
入力が3系統も用意され、うち2系統はRCA端子とXLR端子を併設している。内蔵するMC用の昇圧トランスはT1000のそれと同等とみていい。アンセルメ指揮「三角帽子」は半導体増幅らしい歯切れの良さと締まった音を基調としていて、やはりモノーラル筐体らしい奥行き感の深い音場空間を提示する。S/N感も優れており、ドナルド・フェイゲン「ザ・ナイト・フライ」はダイナミックな演奏でグイグイと音が迫ってくる。聴き込んでくると生真面目さを内包する端正な表情も感じられ、井筒香奈江のダイレクト・カッティング盤は、意識させるような誇張感のない、良い意味でリファレンス的な音調バランスに好感を抱いた。
オーディオテクニカのVM760SLC(VM型)を組み合わせた音は意外なほど相性がよく、高帯域で力強い音。音離れも優れていて品位の高さも感じさせる美音だった。
Phono Equalizer Amp.
フェーズメーション
EA550
¥600,000
●入力端子:3系統(RCAアンバランス/XLRバランス×2、RCAアンバランス×1)●出力端子:2系統(RCAアンバランス×2)●入力インピーダンス:47kΩ以下(MM)、1.5Ω〜40Ω(MC)●利得:38dB(MM)、64dB(MC)●寸法/重量:W211×H93×D360mm/5.5kg×2台
●問合せ先:協同電子エンジニアリング(株)TEL. 045(710)0975
Step Up Transformer
フェーズメーション
T1000
¥300,000
●入力端子:1系統(RCAアンバランス/XLRバランス)●出力端子:1系統(RCAアンバランス)●入力インピーダンス:1.5Ω〜40Ω●利得:26dB●寸法/重量:W174×H90×D173mm/2.0kg×2台
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