最近、中国・広州のLGディスプレイ有機EL工場に出張する機会があり、そこで意外な話を聴いた。

 中国の有機EL市場には、多くの中国メーカーや韓国メーカーが群がっているが、なかでも日本のソニーと中国のスカイワースの二社が抜きん出ているという。スカイワースは、当初から有機ELにひじょうに力を入れていた深センのメーカーで、そのポジションは当然という気がするが、ソニーの有機ELテレビが高く評価されているのは、誇らしい。

 実はヨーロッパ市場でも、ソニーの有機ELテレビはひじょうに評価が高い。55型の1800ユーロ以上の、いわゆるプレミアム市場で30%以上、65型の同じく2500ユーロ以上の市場で40%以上のシェアを獲得し、もちろんナンバーワンだ。なぜ、ソニー有機ELテレビは、ヨーロッパでこれほど強いのか。ソニー・ヨーロッパでテレビマーケティングを担当する上杉孝仁VP(バイス・プレジデント)
に解説してもらった。

画像: ソニーの有機ELテレビは65型、2500ユーロ以上の市場で40%以上のシェアを獲得している

ソニーの有機ELテレビは65型、2500ユーロ以上の市場で40%以上のシェアを獲得している

上杉 まず徹底したマーケットデータ分析です。一般的に入手できる市場環境やシェアなどのデータを元に、われわれが販売戦略を立てやすいようにいちいちRAWデータに戻し、戦略に基づいた切り口で360度データを見ています。必要に応じて店舗ごとのデータも見るなどの作業も行なっています。

麻倉 有機ELテレビは2017年に参入しています。どのように販売促進を進めてきたのでしょう?

上杉 お客様が最終的に製品選びを決めるのは店頭だと思いますので、まず重要な店舗を選んで、そこをしっかりやりましょうと。それから主要国でキャンペーンやTV CFを、2年間展開しました。とにかく「BRAVIA OLED」「BRAVIA OLED」としつこくやりました。

麻倉 OLEDは各社ともやっているので、「BRAVIA OLED」というのが重要なのですね。しかもしつこく(笑)。

上杉 はい、テレビやウェブなどで徹底的にしつこく展開しました。初期投資は大きくかけています。TV CFは一気に、大きなマスに認知度を広げるには有効ですね。戦略モデルを立ち上げる時は、垂直立ち上げということで製品を指定し、ソニー・ヨーロッパの一大プロジェクトとして展開しました。

麻倉 地域的な違いとして、日本と欧州が有機ELテレビに好意的だと言われていますが、それは感じていますか?

上杉 アメリカや中国などは、有機ELテレビもあるけれど、同じ価格で買えるならより大きな画面サイズの液晶テレビを選ぶ方も多いようです。しかし、日本や欧州では部屋の大きさの問題もありますから、画面が少し小さくても高品質なものを好まれるようです。また欧州の皆さんは、テレビ本体だけでなくリモコンのテイストまで気にするという傾向もあります。

麻倉 欧州のユーザーが好むリモコンのテイストとはどんなものなのでしょうか。

上杉 スタイリッシュな、あまりごちゃごちゃしていないものと言われています。シンプルなデザインといいますか。日本の場合は、使いやすさをより重視していると思います。

 今年の欧州の新製品は、「やっとソニーがリモコンを変えた」と好評です。本体がアルミ製で、質感がいいことが評価されています。そういった細かな点に気づいてくれるお客様が欧州には多いのです。特に上位モデルを買われるお客様はその傾向が強いですね。

画像: 有機ELテレビは壁掛けが似合う

有機ELテレビは壁掛けが似合う

麻倉 ヨーロッパでは、画質はどのように評価されていますか。

上杉 今年の欧州の新製品で、弊社の次世代高画質プロセッサーX1 Ultimateを搭載したモデルについては、より高精細でコントラストもしっかり出るという点を評価していただいています。実際に主要なお店の方々に見ていただいた際も、「今年はいいね」という反応でした。「没入感」が開発コンセプトになっていますので、「画音一体」を追究しています。

 またデザイン面でもミニマルにこだわっています。今回の「AG9」シリーズ(欧州の型番)もそうですが、エッジを極限まで小さくして、ぎりぎりまで映像を表示するという狙いです。「アコースティックサーフェスオーディオ プラス」を搭載していますので、あたかも絵の中から音が出てくるように感じていただけるはずです。

麻倉 さて、欧州では既に8Kテレビも販売されていますが、そもそも欧州には8K放送はありませんし、ネットコンテンツといっても限られています。そんな中で8Kを導入したのには、どんな意図があったのでしょう。これは実験的な導入なのでしょうか?

上杉 今年の6月から正式な製品として発売しています。ただ、発売から3ヵ月ですし、85インチでも16,000ユーロと高価な製品なので、もう少し時間がかかるかなと考えています。

 4Kを導入した時と同じように、テレビが出てくれば、徐々にコンテンツはついてくるという判断です。それまでの間は、4Kコンテンツもアップコンして8Kで見ていただけるとより綺麗ですよ、と訴求しています。今回の弊社のブースでもその点を展示しています。弊社のプロセッサーなら、アップコンバートについても高品位に処理できます。YouTubeをご覧いただいても、かなり綺麗に楽しんでいただけます。

麻倉 8Kは導入したばかりで台数的にはまだ少ないでしょうが、来年、再来年は8Kの台数シェアは増えていくとお考えでしょうか?

上杉 他社さんで8Kを増やしているところもありますが、弊社の場合はもう少し様子を見る必要があるかな、と考えています。

 「他社」とはおそらくサムスンエレクトロニクスであろう。プレスカンファレンスでも、ブースでも8K一色であった。ソニーブースにも85型と98型の8Kディスプレイが展示されていたが、あくまでもラインナップの一員という感じであった。しかし、2K時代に4Kテレビが導入され、成功したというひそみにならえば、今後は大いに期待できよう。

画像: これが話題のクールなリモコン

これが話題のクールなリモコン

画像: インタビューに協力いただいた、ソニー・ヨーロッパの上杉孝仁バイス・プレジデント

インタビューに協力いただいた、ソニー・ヨーロッパの上杉孝仁バイス・プレジデント

画像: サムスンエレクトロニクスのブースは8Kの大宣伝

サムスンエレクトロニクスのブースは8Kの大宣伝

This article is a sponsored article by
''.