今年(2026年)も、東京国際フォーラムにてオーディオの祭典「OTOTEN 2026」が6月19日から21日までの3日間で開催された。その会期中の6月20日・21日に、パナソニック株式会社のブースにおいて「筒美京平 書き下ろし未発表曲アルバム『TOKYO SUITE』 現代に甦る16chアナログマルチ録音/驚異のアナログサウンド・レコード」と題して、試聴会が催されたので、その時の様子をお伝えしよう。

 試聴会では、『TOKYO SUITE』のサウンドプロデューサー兼レコーディングエンジニアであるミキサーズラボの高田英男氏と、アルバムのレコ―ディングが行なわれたキング関口台スタジオのテクニカル・エンジニア&スタジオマネージャー高橋邦明氏が登壇。全工程をオール・アナログで貫いたLPレコード制作のエピソードや楽曲の聴きどころについて語られた。

筒美京平が遺した未発表曲を収録する『TOKYO SUITE』

画像: 『TOKYO SUITE』のアナログレコード(写真右)との再生に使用されたスピーカー テクニクス「SB-R1」(写真左)

『TOKYO SUITE』のアナログレコード(写真右)との再生に使用されたスピーカー テクニクス「SB-R1」(写真左)

 『TOKYO SUITE』は、日本のポピュラーミュージック界を代表する作曲家・筒美京平が、学生時代からのバンド仲間だったサックス奏者・苫米地義久(TOMA)のために書き下ろした未発表曲5曲を軸に、参加ミュージシャンによる新曲3曲と、NOKKOへの提供曲として知られるヒット曲『人魚』のカバーを加えた全9曲構成のジャズアルバムだ。

▼オーディオ評論家 小原由夫氏による楽曲解説はこちら

試聴会で使用されたオーディオシステム

 オーディオシステムは、ターンテーブル(「SL-1000R」/テクニクス)、カートリッジ(「PP-2000」/フェーズメーション)、プリメインアンプ(「SU-R1000」/テクニクス)、スピーカー(「SB-R1」/テクニクス)という内容。

画像: テクニクスの試聴オーディオシステム ※カートリッジはフェーズメーション「PP-2000」(機材協力:協同電子エンジニアリング)

テクニクスの試聴オーディオシステム ※カートリッジはフェーズメーション「PP-2000」(機材協力:協同電子エンジニアリング)

筒美京平による貴重なピアノソロ演奏を再生

 試聴会の冒頭では、「J-POPを代表する作曲家と知られる筒美京平さんですが、バンド仲間から『筒美京平さんは基本的にジャズ人間だった』と評されるほど、ジャズを深く愛していました。『TOKYO SUITE』は、筒美京平が愛したジャズの世界を、バンド仲間で長年親交のあった苫米地氏を中心とした参加ミュージシャンの手によって、一つの作品として結実させたアルバムでもあります」と、筒美京平の知られざる一面が高田氏から明かされた。

 このエピソードを象徴する音源として、当時23才だった筒美氏が日本グラモフォンの洋楽担当時代、表参道にあったポリドール・スタジオでピアノ演奏した「Georgia On My Mind」が再生された。一般には流通していない貴重な音源だけに、会場を訪れた参加者にとっては、作曲家・筒美京平の新たな一面を垣間見ることができる貴重な体験となったことだろう。

画像: de『TOKYO SUITE』サウンドプロデューサー/レコーディングエンジニアの高田英男氏

de『TOKYO SUITE』サウンドプロデューサー/レコーディングエンジニアの高田英男氏

全工程をアナログで貫いたこだわりのLPレコード制作

 『TOKYO SUITE』LPレコード制作の最大の特徴は、16chアナログマルチ録音からミックスダウン、さらにラッカー盤のカッティングに至るまで、全制作工程をオール・アナログで貫いたところにあると高田氏は語った。「今回、16chのアナログマルチ録音にこだわった理由は、素直な音色、豊かな中低域、音の艶、そして生演奏のリアリティを追求するためでした。また、音楽を楽しみながらオーディオシステムの性能を確認するための、リファレンスレコードとしてもご活用いただける音源を目指して制作しました」と。

画像: 高田氏(左)とキング関口台スタジオの高橋氏(右)。テーブルに置かれているのは16chアナログマルチ録音で使用されたものと同様の2インチ・アナログテープ。高橋氏が左手に持つのは、ミックスダウンに使われたものと同様のハーフインチアナログテープ

高田氏(左)とキング関口台スタジオの高橋氏(右)。テーブルに置かれているのは16chアナログマルチ録音で使用されたものと同様の2インチ・アナログテープ。高橋氏が左手に持つのは、ミックスダウンに使われたものと同様のハーフインチアナログテープ

 さらに、キング関口台スタジオの制作現場の動画を一部上映し、技術的な側面にも踏み込んで、LPレコード制作の工程や、音質を追求するために工夫したことについて詳しく解説した。

▼『TOKYO SUITE』の制作についてより詳しく知りたい方は、高田氏が語る「アナログにこだわった『TOKYO SUITE』LPレコード制作の舞台裏」のYouTube動画をご覧ください

画像: 筒美京平の未発表ジャズ曲をLPレコード化|アナログにこだわったレコード制作の舞台裏『TOKYO SUITE(Tsutsumi Kyohei Presents for TOMA)』 www.youtube.com

筒美京平の未発表ジャズ曲をLPレコード化|アナログにこだわったレコード制作の舞台裏『TOKYO SUITE(Tsutsumi Kyohei Presents for TOMA)』

www.youtube.com

楽曲ごとに追求された理想のサウンド

 試聴会の後半では、『TOKYO SUITE』を再生しながら、各楽曲の録音手法や聴きどころについて紹介された。

画像: 楽曲ごとに追求された理想のサウンド

試聴会で再生された楽曲と高田氏による各曲の試聴ポイント

「Tokyo Confidential」作曲:筒美京平
<試聴ポイント>
 深く重厚なベースサウンドを核にしながら、タム(ドラムのタムタム)のドライでリアルな音色と、奥行きのあるピアノサウンドを対比させた楽曲。ピアノとベースのユニゾンやタムのソロパートは、サウンドチェック用途としても活用してほしい。

「Metropolitan Heartbeat」作曲:筒美京平
<試聴ポイント>
 静謐なピアノの響きと自然音を思わせるパーカッション、繊細なベースのピアニッシモサウンドから始まる楽曲。スネアドラムによるブラシ演奏のビートを軸に、ピアノソロからサックスソロへと展開していく流れがライブ感を生み出し、オーディオ的にも聴き所が満載。

「One Night in Kasumicho」作曲:苫米地義久
<試聴ポイント>
 サックスとピアノによる繊細なコール&レスポンスが聴きどころ。サックスの音色の存在感を高めた一方、ピアノには豊かな響きを与え、奥行き感のある音場を構築している。

「Tokyo.exe」作曲:筒美京平
<試聴ポイント>
 アルバムを象徴する1曲として紹介された楽曲。楽曲に漂う哀愁をサウンド面でも表現することを追求し、各楽器が持つ音の深さを素直な音色で描き出している。

オーディオファンにも音楽ファンにも届けたい一枚

 最後に高田氏は、「アルバム制作の全工程をオール・アナログで貫くということは、時間も手間もかかる。しかし、筒美京平が愛したジャズの世界を作品として完成させた、非常に貴重なセッションになった」と、『TOKYO SUITE』の制作を振り返った。

 この魅力溢れる『TOKYO SUITE』を、オーディオファン並びに音楽ファンに是非体験してほしい。

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