愛用していたマグネターのUDP900が「MKⅡ」に進化したと聞いて、これは導入しなければと思った。かなり大がかりなマイナーチェンジが与えられたからだ。オーディオ部分のてこ入れを中核に、様々な部分に手を入れたという。その新UDP900 MKⅡが我が家に来て4ヵ月、満足して使っていたところに、編集子からそろそろ導入記を書けとの指令。この機会に、徹底的に分析してみようと思い立った。以前に使っていたオリジナルのUDP900と比較し、どこが「MKⅡ」であり、どのように変わったのか、進歩したのかを調べてみよう。
画像1: 感動を我が手に!「麻倉怜士×マグネターUDP900 MKⅡ」音質向上が際立つ。これは小変更に非ず

ユニバーサルプレーヤー
マグネターUDP900 MKⅡ
オープン価格(実勢価格59万5,000円前後)

●型式 : ユニバーサルディスクプレーヤー
●再生メディア : CD、SACD、DVDビデオ、DVDオーディオ、BD、ブルーレイ3D、UHDブルーレイ、ほか
●接続端子 : アナログ2ch音声出力2系統(RCA、XLR)、アナログ7.1ch音声出力1系統(RCA)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、HDMI出力2系統(映像/音声対応×1、音声専用×1)、USB端子3系統(Type A×2、Type B)、LAN1系統
●寸法/質量 : W445×H133×D321mm/約15.4kg

 

Profile
20年以上に渡り、様々なオーディオ、オーディオビジュアル機器の研究開発ならびにOEM生産を携わってきた大手企業が、2021年に設立した自社ブランドがマグネター。日本では2024年春に、UDP900とUDP800の2モデルで上陸。UHDブルーレイやBD、DVDビデオなどのビデオディスクの再生を担うだけでなく、SACDやDVDオーディオ、BDオーディオなどの貴重なサラウンド系ディスクを高品位な状態で行なう「本格ユニバーサルプレーヤー」として高い人気を博してきた。UDP900 MKⅡは、弟機UDP800 MKⅡとともに、2025年秋にその第二世代機としてリリース。「MKⅡ」という印字以外の外観は同一だが、7.1ch端子用DACチップに、2ch端子用と同じESSテクノロジーのES9038 PROの採用や、ドライブメカニズムの静音化など、細部に渡るチューニングが施された(編集部)

 

 

従来機と外観はほぼ同じ。だが内部の変更は大きい

 フロントパネルは右下に小さな「MKⅡ」のエンブレムが加わったが、それ以外は全く同じ。しかし、設計変更はかなり多いのである。

①DAC:オリジナルモデルでは、2ch出力が「ES9038PRO」、7.1ch出力が「ES9028PRO」と分化していたが、UDP900 MKⅡはどちらもハイエンドの「ES9038PRO」に統一。

②HDMI回路のTMDS伝送部分に時間軸補正(リタイミング)を与えたジッター対策。

③ドライブメカニズム。ソニー製の「481AAAレーザードライブ」自体は前作と同じ。ケーシングを再塗装し、ドライブを覆う金属製カバー内側に吸音材を装着。

④内部配線を高純度銅線にアップグレード、基板接続用コネクターを日本圧着端子製造製やAmphenol製に変更。接続品質、安定性、信頼性の向上に資している。

 では、UDP900 MKⅡの真の実力はどれほどのものか。私のリスニングルームにて、オリジナルのUDP900と仔細に渡って、CDでアナログ2chステレオ音質、BDでHDMI接続によるサラウンド音質、そしてUHDブルーレイの画質について検証する。

画像2: 感動を我が手に!「麻倉怜士×マグネターUDP900 MKⅡ」音質向上が際立つ。これは小変更に非ず

今回はオリジナルモデルUDP900(上)も用意し、UDP900 MKⅡ(下)のパフォーマンスが、オリジナル機からいかに向上したのかを入念に比較した。なお、本写真は2台重ねて撮影したが、取材は重ねずに1台ずつ実施している

 

 

音が“見える”アナログ2ch接続!CDとSACDで情報量が格段に増加

 CD「手紙でも書こう/ポール・マッカートニー」を再生、アナログRCAの2チャンネル端子から出力した。プリアンプはオクターブJubilee Pre、パワーアンプはザイカ845PP、スピーカーはJBLのK2S9500だ。オリジナル機UDP900を改めて聴くと、十分なクォリティであることがまず確認できた。冒頭のブラシワークの繊細さ、アコースティックベースの低音力、ポールのヴォーカル音像の確かさ、ダイアナ・クラールのピアノのブリリアントさ……など、必要にして過不足ない音調ではないか。

 と今、述べたが、UDP900 MKⅡで再生すると驚いた。さらにさらにディテイルの細やかな部分(おかしな言い方かもしれないが)まで、非常に丁寧に、綿密に再生するではないか。冒頭のブラシは、その1本1本が見えるほどの細かさ。ベースも低域の面積が大きく、音階感が正確に再現され、倍音情報も多い。ヴォーカルはフォーカスがびしっと合い、輪郭のエッジ感も先鋭に、グラデーションが稠密だ。具体的には「Letter♪〜」の語尾の感情を込めて消えゆく様が、たいへん丁寧だ。ポールの優しさ、繊細さがより際立って聴けた。ダイアナ・クラールのピアノのアクセントの輝きも光彩を増した。まとめると、この楽曲を堪能する情報が格段に増えた。

 ここからはUDP900 MKⅡだけを聴く。「ワルキューレの騎行」。ショルテイ指揮ウィーン・フィルの歴史的名演のSACDだ。ポイントは3つ。第1が音の情報量の多さ。クリアーさとともに強靱な力感、伸びの強さが痛感され、弦の突き上げ感、金管の重奏による堂々たる咆吼が生々しく聴けた。音場情報も多い。奥行も深く、プロデューサーのジョン・カルショーが意図した舞台上の動きを正確に再現。ワルキューレたちが舞台の奥から手前に出て来る動きが明瞭に“見えた”。

 第2が音色の美しさ。ウィーン・フィルが特別な響きをもっていた時代の馥郁たる香りが堪能できた。録音会場のゾフィエンザールの響きの麗しさは、微小信号まで正確に再現できるプレーヤー(=UDP900 MKⅡ)の表現力故だ。

 第3がSACDのキャラクターだ。音場の深さ、濃密な空気感、そしてグロッシーな質感は、まさにSACDという特別なディスク固有の美質であり、UDP900 MKⅡはそれを丁寧に聴かせてくれた。

画像3: 感動を我が手に!「麻倉怜士×マグネターUDP900 MKⅡ」音質向上が際立つ。これは小変更に非ず

アナログ音声出力の確認は、2ch出力用アンバランス端子を用いて行なった。本格ディスクプレーヤーとしてのパフォーマンスを入念に確認した格好だ

 

 

HDMI接続のサラウンド作品で明確な音質進化を体感した

 では映像ディスクをHDMI接続にて再生しよう。音声はマランツのセパレートAVセンターAV 10+AMP 10にHDMI入力。スピーカーはK2S9500を中心にした5.1.6システム。

 まずBD『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ/ノラ・ジョーンズ』から代表作「ドント・ノー・ホワイ」。UDP900ではライヴとしての雰囲気感、ノラ・ジョーンズのしっかりとした歌い、くっきりとしたピアノ音など、基本的なクォリティは高いが、微視的にいえば全体的にフラットな調子で、もっと細やかな音楽的な抑揚も欲しいと感じた。

 UDP900 MKⅡはどうか。驚いたのは、会場ノイズが実に明瞭なこと。ざわめきやグラスが触れる音などのアンビエントノイズの空気感、実体感が豊潤だ。これらの微小信号のふるまいで、プレーヤー再生におけるS/Nの高さが、実感できた。彼女の歌声は凝縮感が高く、音場内のまさに、その一点から、聴き手の心に突き刺さる、ハイエモーションな歌が発せられる様子が明確だ。音の芯に塊感があり、音像は鮮烈でエッジが鋭い。彼女が言葉と節回しに込めた感情表現力は、UDP900 MKⅡの特筆すべきところだ。たとえば、「♪ When I saw the break of day」の“saw”や、「♪ But You'll be on my mind forever」の“on”のサステインには、万感が籠もる。ピアノ低域の質感がより細やかになり、アコースティックベースの音階移動でのうごめきのような表情づけも明白だ。

 映画音響も聴こう。UHDブルーレイ『アリー/スター誕生』からチャプター7、ライヴ会場でのアリーの歌手デビューシーンのチャプター7「シャロウ」。

 UDP900は、レディー・ガガのヴォーカルの伸びや鮮明さ、レンジ感、サラウンド的な拡がり感、ライヴ的な空気感など過不足ないクォリティと聴いたが、いや、UDP900 MKⅡで再生し入念に比較すると、実は不足がかなりあったことが分かる。

 まず冒頭のギターが実に生々しい。磨かれた音色で、品格感も高い。そして何より、レディー・ガガの声の質感。音の粒子が細かく、しかも、飛翔が勢いを増し、ハイスピードで飛び出す。写真的な言い方をすれば、フォーカスの合い方、シャープさが違うのである。UDP900に比べて、ヴォーカル音像の輪郭が合焦し、決然としたシャープネスが聴けた。彼女らしいエネルギーの横溢感も、UDP900 MKⅡは見事に再現。曲想がクライマックスを迎えた時、音場の天井が高くなり、余裕たっぷりにレディー・ガガの強唱を、整然と端正に再現してくれた。「上質なフォルテ」という言い方が正鵠を射ているだろう。

画像4: 感動を我が手に!「麻倉怜士×マグネターUDP900 MKⅡ」音質向上が際立つ。これは小変更に非ず

BD、UHDブルーレイの音声と映像のパフォーマンスは、2系統を備えているHDMI端子から映像と音声を分離出力した状態でチェックした。HDMIケーブルはいずれもエイム製フラットタイプの18Gbps伝送タイプを用いている

 

 

UHDブルーレイ再生で実感した画質進化ゆえのリアリティ向上

 画質はどうか。冒頭で述べたように今回のMKⅡ化は、音質的な観点が主体であるが、実は画質も仔細に観察すると、着実に進歩している。ビコム『宮古島〜癒しのビーチ〜』の4K/60p、HDR10映像では、コンテンツ的な画質力は、オリジナルUDP900でも十分に認識された。チャプター4の東平安名崎灯台を遠くに臨む情景。岩群、青空と白い雲、白波と蒼い海……という映像的オブジェのディテイルが克明だ。

 UDP900 MKⅡでは、暗部/明部のダイナミックレンジ表現はほぼ同じだが、その間の中間調のグラデーションが細やかになるなど、映像的なリソースが増え、細部の粒子感がすべらかに見える。UDP900でも感じた、各オブジェの実在感はより鮮明に、と同時にそれらが有機的に関連し、トータルとして映像のリアリティを高めているのだ。音でたとえると、良く出来た録音の「音像と音場の関係」に似る。画面全体の空気感がクリアーなのに、個々のオブジェがより繊細、丁寧な描写が得られているのだ。

 65mmオリジナルネガから8Kスキャン、4KでデジタルレストアしたUHDブルーレイ『ベン・ハー』では、この作品が持つ、たいへんゴージャスな情報性と、色と質感の絢爛なる合わせ技を堪能した。鉄鎧の鋭い反射、鮮明な赤の幟(のぼり)、金色の壮麗さが、濃厚なフィルム感をまとい、こってりと粘性が高い描写はまさにテクニカラーならではの豪奢さ。精細感の高さ、ハイコントラスト感も刮目だ。まさに大スペクタクルな大画質。UDP900 MKⅡはハイリニアリティに、ディスクに収蔵されている情報を再生した。

画像5: 感動を我が手に!「麻倉怜士×マグネターUDP900 MKⅡ」音質向上が際立つ。これは小変更に非ず

音声は、マランツのAVセンターAV 10+AMP 10から、フロントL/Rは、Jubilee Preのユニティゲイン入出力経由でザイカの845PPパワーアンプ→JBLのK2S9500、フロントL/R以外は、AMP 10を使って、JBL製センタースピーカーC5000と800 ArrayならびにリンのCLASSIK UNIKへと連携。サブウーファーは、JBLのHB5000を使う。プロジェクターとスクリーンはJVCのDLA-Z1とオーエス製ピュアマットⅢシネマ(148インチ/16:9)だ

 

 UDP900からUDP900 MKⅡは、形式的にはマイナーチェンジに思えるが、仔細に比較すると得られたクォリティ的には、ビッグチェンジであることが分かった。完成度が格段に上がったというべきであろう。特に音質の進化が際立った。

 

>本記事の掲載は『HiVi 2026年夏号』

 

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