アコースティックエナジーやボストンアコースティックなどで数々の小型スピーカーの名機を設計してきた英国人エンジニア、フィル・ジョーンズがR&Dを統率するエアパルス。近年は優れた家庭用アクティブスピーカーを次々に発表して声価を高めているが、今般大ヒット作A80の弟モデルとなるA60が登場した。ペア8万円台という価格ながら、その音は本格的で聴き応え十分。詳細は後述するが、このすばらしい音をこの価格で実現できるスピーカーメーカーは、エアパルス以外どこにも存在しないと思う。

Active Speaker System
AIRPULSE A60
オープン価格 (実勢価格8万8,000円前後)
●型式 : アンプ内蔵スピーカーシステム
●使用ユニット : 平面型トゥイーター、90mmコーン型ウーファー
●アンプ出力 : 10W×2(トゥイーター用)+30W×2(ウーファー用)
●接続端子 : デジタル音声入力2系統(光、USB Type C)、アナログ音声入力1系統(3.5mmミニフォーン)、サブウーファー出力1系統(RCA)
●寸法/質量 : W126×H223×D216mm/5.4kg(2本合計)
ホームページはこちら>
本機は90mmアルミニウムコーン・ウーファーと新開発のフラットダイヤフラム・トゥイーターを2基のクラスDモジュールでバイアンプ駆動するアクティブ型。入力はUSB Type C、光、同軸、BluetoothにRCAアンバランスと3.5mmミニフォーン端子を装備し、サブウーファー出力を用意している。駆動アンプはマスター機に内蔵され、スレーブ機とは専用スピーカーケーブルでつなぐ仕様だ。
フラットダイヤフラム・トゥイーターとは平面振動板にボイスコイルがプリントされたもので、A80等で採用されたリボン型の構造に極めて近いと思われる。駆動力がダイレクトに振動板に作用するため出力遅延がなく、優れた過渡応答を実現する。磁気回路には単位面積あたりの磁力が極めて強いネオジウムが採用されている。
90mmアルミニウムコーン・ウーファーにはフェライト・マグネットが採用され、30mmボイスコイルでロングストローク駆動する仕様。ユニットは堅固なアルミニウム・ダイキャスト・シャーシにマウントされている。
本機に採用されたクラスDモジュールはA80と同じテキサス・インスツルメンツ(TI)製のTAS5754。高効率スイッチング電源によって駆動される。加えて同じTI製のDSPを2基用いてクロスオーバー回路とスピーカー補正回路、ダイナミックレンジ管理機能を担当させている。
キャビネットは15mm厚MDFで、内部には波状の吸音フォーム材が配置され、定在波や共振ノイズを低減しているという。リアに配置されたバスレフポートは楕円形で、エアノイズを効果的に抑える工夫が採られている。内部配線材はトランスペアレント製。

高域ユニットは、ネオジムマグネットを搭載したエアパルスとしては初めてとなる平面ダイヤフラムを採用。振動板前面にはダイヤフラム保護用パンチングメタルと、砲弾型イコライザー(フェイジングプラグ)をマウントして、指向性を制御している。本体内蔵のテキサス・インスツルメンツ製10Wフルデジタルアンプにてブリッジ接続モードでダイレクト駆動される
USB端子がタイプBからタイプCに、アナログ音声入力がRCAアンバランス2系統から、RCAアンバランス1系統+3.5mmミニフォーン1系統になったほかは、好評のロングセラーモデルA80と同じ接続用コネクターを装備する。接続端子の装備はR(右)チャンネル固定で、L(左)チャンネルの個体へは付属のスピーカーケーブルで繋ぐ仕組み。左右の個体入れ替えはできない
明瞭度が極めて高くクリアーな再現。低音の響きも重要で力感も豊か
本機をアコースティックリヴァイブ製のスチール製スタンドに載せて、本機とiPhone16e、MacBook Airとを交互にUSB Type Cケーブルで接続、Qobuzアプリでまず20代の頃によく聴いた「ラーセン=フェイトン・バンド」を再生してみた。低音の量感はサイズ相応だが、明瞭度が極めて高く、音楽をクリアーに切れ味よく再現する。バジー・フェイトンのきらびやかなギター・ソロは聴き味がよく、非力なドーム・トゥイーターとは異なり音色がまぶしくなりすぎない。磁気回路にネオジウム・マグネットを採用したフラットダイヤフラム・トゥイーターの美点だろう。
矢野顕子の弾き語りアルバム『SUPER FOLK SONG』は、センターにファントム定位するヴォーカル音像がぴしりと安定し、眼前でアッコちゃんが歌っているかのようなイリュージョンを惹起する。90mmという小口径ウーファー採用機ながら、ピアノの低音の響きは重厚で、その力感の豊かさに驚かされた。帯域バランスが真っ当なのだろう。
パーヴォ・ヤルヴィ指揮エストニア祝祭管弦楽団の『アルヴォ・ペルト:クレド』では、オーケストラと合唱の細部を精密に描写しながら3次元的な音場表現で音楽を立体的に楽しませ、本機の位相特性の良さを実感させた。トゥッティで音楽が混濁しないのもすばらしい。
結論
予想以上の高い実力を発揮。デスクトップ使用も含めて大推薦
エアパルスのアクティブスピーカーはどれも出来が良いが、最廉価モデルの本機の実力の高さは予想以上。ワンルーム・マンションでこれからスピーカーオーディオを始めようという方に太鼓判を押してお勧めしたい。デスクトップ使用にも最適だろう。
試聴に使った機器
●スマートフォン : アップルiPhone16e
●パーソナルコンピューター : アップルMacBook Ai
試聴に使ったソフト
●Qobuzストリーミング : 「今夜はきまぐれ/ラーセン=フェイトン・バンド」(44.1kHz/16ビット)、「塀の上で/矢野顕子」(44.1kHz/16ビット)、「アルヴォ・ペルト:La Sindone/パーヴォ・ヤルヴィ、エストニア祝祭管弦楽団」(48kHz/24ビット)
>本記事の掲載は『HiVi 2026年春号』


