アナログ機器にこだわった望み得る最高仕様のLP! ジャズ・スタンダードの名曲に彩られた第4弾

 ジャズのビッグバンドは、ハーモニーの分厚さやアンサンブルのダイナミックなエネルギー感などがあって、聴く側からすれば大いに興奮させられるものだが、演奏の機会(舞台)や楽団人員の確保など、数多くの難しさを内包しているといえよう。今日、それらを記録した作品の大半はコンピューターでだいぶ補完されているようにも思う。

 しかし、やはり生身の人間が大勢で発するハーモニーや音色の多彩さ、合奏のパワーは、人工的な処理がどれだけ発達したとしても叶わないのではないだろうか。

 トロンボニストの角田健一率いる「角田健一ビッグバンド」は、積極的に演奏活動を行なっている今日稀有なグループで、ステレオサウンドから高音質コンテンツを多数リリースしている。しかもその製作には、レコーディング/マスタリング・エンジニアの先鋭集団「ミキサーズラボ」が関わり、高音質が担保されているのだから堪らない。とりわけ本邦録音業界の至宝、ビッグボスたる内沼映二氏がチーフエンジニアとして携わっている点が見逃せない。ここでは、これまでステレオサウンドから販売されたハイブリッドSACDや重量盤LPを採り上げて、この類い稀なるシリーズを俯瞰しつつ、最新作『MIXER'S LAB SOUND SERIES Vol.4』の魅力を紐解いてみたい。

『MIXER’S LAB SOUND SERIES Vol.4』
33 1/3回転 180g重量盤LP 2枚組(限定生産)

(ステレオサウンド SSAR-101〜102)¥11,000 税込

DISC 1
[SIDE A]
1.A列車でいこう 2024/Take the 'A' Train 2024
2.チェロキー/Cherokee
[SIDE B]
1.シボネー/Siboney
2.エル・クンバンチェロ/El Cumbanchero
3.小さな花/Petite Fleur

DISC 2
[SIDE C]
1.シング・シング・シング 2024/Sing,Sing,Sing 2024
2.スターダスト/Stardust

[SIDE D]
1.スイングしなけりゃ意味ないね/It Don't Mean a Thing(If It Ain't Got That Swing)
2.愛さずにはいられない/I Can‘t Stop Loving you
3.真珠の首飾り/A String Of Pearls

●制作:株式会社ミキサーズラボ
●販売・共同企画:株式会社ステレオサウンド
購入はこちら

 最初にリリースされたのが、2010年発売の2枚のハイブリッドSACD『BIG BAND STAGE』と『BIG BAND SOUND』だ。名機と称されるマイクロフォンを多数用い、当時の最新デジタル録音機材を活用しながら、他方ではアナログ録音の最高峰であるスチューダーA820を使ったハーフインチ76cm/secでの収録も敢行。人気アルトサックス奏者MALTAをゲストに招き、ビッグバンドジャズ黄金期のスタンダード曲の数々を現代にリアルに蘇らせた。

 『MIXER'S LAB SOUND SERIES』のVo.1およびVol.2のLPは、この2枚のSACDと同じ演奏だが、内沼氏自身によって再度ミックスダウンが行なわれ、384kHz/32ビットのデジタルマスターから製作されたメタルマスターから、スタンパー等を経ることなく、直接180gにプレスしたダイレクトプレスされている。また、通常のカッティング手法であればLP1枚に収まるところを、音質的にやや不利となる内周部でのカッティングを避けるべく、敢えて2枚組としたことも、オーディオファイルを意識した高音質を狙ったためだ。

 SACDハイブリッド盤の『BIG BAND SCALE』や『BIG BAND SPECIAL』は、スタンダード曲ばかりでなく、映画やテレビシリーズのテーマ曲などを収めたバラエティに富んだ内容になっている。『MIXER'S LAB SOUND SERIES』のVol.3は、『BIG BAND SPECIAL』から曲順を若干変更して収録したものである。

 そしてミキサーズラボ創立45周年を記念して製作されたのが、『BIG BAND SOUND』シリーズ第5弾の『BIG BAND SUPREME』である。本盤の目玉は、スウィングからラテンまでの往年の名曲10曲をチョイス。「A列車でいこう」と「シング・シング・シング」の2曲は新たなアレンジで収録され、なおかつ「シング・シング・シング」ではフィリピン出身の歌手チャリートによる歌入りバージョンとして、装いも新たになった。全編新録音で、ノイマン製の真空管式ヴィンテージマイクM49CとU67が多数使用されていることも話題のひとつだ。ビクター青山スタジオ「FLAIR」内の広大な301スタジオで録音されたマスターを、西麻布のミキサーズラボにてSSL製アナログコンソールを介して内沼氏がミキシングしている。

 そして、今回ここで大きく採り上げる『MIXER'S LAB SOUND SERIES Vol.4』は、前述の『BIG BAND SUPREME』の重量盤での2枚組LP化である。

 これまでのシリーズとの最大の違いは、使われたマスターがデジタル音源ではなく、ミキサーズラボ所蔵のテープレコーダー/スチューダーA80を使った、ハーフインチ76cm/secマスターからのダイレクトカッティングという点。アナログオーディオファンにとっては望み得る最高の仕様といえるのだが、製作面での苦労は図り知れず(紙数の関係で詳細は割愛するが)、タイムコードの先行読取りなど、特殊な機材の準備も要したという。カッティングに当たったのは、ミキサーズラボ所属のカッティング・エンジニア北村勝敏氏。リミッターを使わずに、慎重に音溝の幅とピッチが調整された。

 そうした恩恵もあってか、本2枚組LPのサウンドは、すこぶる胸のすくような鮮烈で煌びやかなもの。片面10分前後の短い収録時間も高音質につながっているのは明らかで、楽器のディテイル描写と強弱のニュアンス再現が素晴らしい。

 A-2「チェロキー」の曲半ばのドラムソロは、滅法ダイナミック! 演奏のスピード感も相まって、ユニゾンを奏でるブラスアンサンブルの実にカッコいいこと!

 ラテンナンバーのB-1「シボネー」は、パーカッションやドラム等の打楽器が大活躍。そのカラフルかつ鮮やかなリズムが推進力となってブラスセクションを強烈にプッシュする。
 C-1「シング・シング・シング 2024」では、リズムセクションの力強いスウィング感に乗せられてチャリートがダイナミックに歌い上げる。その艶っぽさが堪らない。
 ブラスアンサンブルの中央から浮かび上がるミュート・トランペットの響きが素敵なD-2「愛さずにはいられない」での、全員一丸となったハーモニーも圧巻の一言だ。
 SACDの滑らかなサウンドもいいが、この180g重量盤LPの骨太なサウンドもまた、凄味がある。限定プレスゆえ、再プレスは望み薄。売り切れる前に、是非!

This article is a sponsored article by
''.