「あ〜あ、こんな仕事引き受けなければよかった……」。今回の取材を終えてため息とともにぼくの口から出てきたのはこんなセリフだった。

 うすうす気づいてはいたんだ、ここをなんとかすればもっと音が良くなることは……。ん? ここって何? 当然の疑問ですよね。はい、PLC接続です。

画像: 光LANケーブルを確認する山本さん。ケーブル自体は太さ5mmほどということで、これなら壁沿いに這わせることができるかも、と真剣に導入を検討されていました

光LANケーブルを確認する山本さん。ケーブル自体は太さ5mmほどということで、これなら壁沿いに這わせることができるかも、と真剣に導入を検討されていました

 前回の記事で記したように、ぼくは2008年春にリンの「KLIMAX DS」を購入してネットワークオーディオを始めた。まずネットワーク環境をどう整えるかに頭を悩ませたのだが、最初にぼくのリスニングルームにどうやって通信回線を導くべきかを決めなければならなかった。ぼくの家はリスニングルームから数メートル離れた書斎にモデムとルーターがあり、そこから通信回線をリスニングルームに引き込むのにPLC接続するのが良いだろうと当時は判断したわけだ。

 PLC(Power Line Communications)というのはそのアダプターをコンセントに挿して電力線を通信回線として利用する接続法。電力線を利用できるのであれば、新たな通線工事も必要ないわけで。PLCは2008年当時注目されていたが、今ではほとんど話題にのぼることはなくなった。

 当初は何の疑問も抱いていなかったのだが、徐々に「電力線を利用する手法はさすがにノイズ面でどうなんだろ?」という疑問を抱くようになった。そこでリスニングルームのルーター中継器の後ろにオーディオ専用ネットワークスイッチDELA「S100」とエディスクリエーションの光絶縁ツール「FIBER BOX2」を配置してノイズ対策を図り、それはそれで大きな成果を得ていた。このふたつのイクイップメンツの導入で音楽ストリーミングサービスの音が俄然良くなったのである。

画像: 現在の山本邸のネットワーク接続図。モデムが執筆室(書斎)に設置されているので、そこから直線距離で5〜6m離れたオーディオルームまでどうやってネットワークを引き込むかを検討、2008年当時に注目をあつめていたPLC接続を選んだとのこと

現在の山本邸のネットワーク接続図。モデムが執筆室(書斎)に設置されているので、そこから直線距離で5〜6m離れたオーディオルームまでどうやってネットワークを引き込むかを検討、2008年当時に注目をあつめていたPLC接続を選んだとのこと

 いっぽうここ数年、光LAN接続が注目されるようになり、「あ、そうか、書斎のルーターからリスニングルームのネットワークスイッチまで光LAN接続を行なえば、ノイズ面で有利になり、PLC接続に比べて大きな音質改善効果が得られるんじゃ?」とぼくは考えていたのである。

 そんな気持ちを知ってか知らずか、SOtM(韓国)の輸入元ブライトーンの福林羊一さんから「光LAN接続可能な同社製ネットワークスイッチsNH-10Gを試してみませんか」との提案が。書斎からリスニングルームまでの光LAN接続、試してみない手はない、しかしめちゃくちゃ音が良くなったらどうしようと一抹の不安(?)を抱きながら実験を行なうことにした。

 当日の接続法は別掲の図の通り。モデム/ルーターのある書斎にsNH-10Gを置いて、RJ45端子に入力された(金属製)LANの信号を光変換、10mの光LANケーブルを用いてリスニングルームに引き込み、もう1台のsNH-10Gで光LANから金属導体LANに変換し、ぼくが常用しているNASのDELA「N1A/2」にRJ45接続、USB DAC接続機能を持つ(すなわちネットワークトランスポートとして使える)SOtMのミュージックサーバー「sMS-2000」(後述)とLAN接続して音楽ストリーミングサービスQobuzの音源を聴くという実験だ(光LANネットワーク接続図1)。

オーディオ専用ネットワークスイッチ:SOtM sNH-10GPS
¥572,000(税込、銀線仕様)、¥550,000(税込、銅線仕様)

●製品構成:sNH-10G、電源ユニット、特製Yケーブル
●接続端子:RJ-45✕8、SFP✕2、10MHz マスタークロック入力●寸法/質量:本体=W296×H50×D211mm/2kg、電源ユニット=W106×H48×D230mm/2kg

画像1: SOtM「sNH-10G」を使った光LAN接続でネットワーク環境をグレードアップしたら、驚きの効果が! 「sMS-2000」が聴かせる“華やかできらびやかなサウンド”も絶品
画像: 執筆室に設置したsNH-10G。モデムの出力をルーター機能付きのハブに入れ、そこからsNH-10Gに金属線のRJ45ケーブルで入力、長さ10mの光LANケーブルでオーディオルームに引き込んだ

執筆室に設置したsNH-10G。モデムの出力をルーター機能付きのハブに入れ、そこからsNH-10Gに金属線のRJ45ケーブルで入力、長さ10mの光LANケーブルでオーディオルームに引き込んだ

sNH-10Gのラインナップ
標準モデル¥264,000(税込)、リクロックモデル¥286,000(税込)、リクロック/マスタークロック入力モデル¥308,000(税込)

スペシャルエディション 銀線仕様¥54,450(税込)追加、銅線仕様¥48,400(税込)追加
※リクロック仕様でない場合は電磁波シールド追加とコンデンサー交換のみの対応

画像2: SOtM「sNH-10G」を使った光LAN接続でネットワーク環境をグレードアップしたら、驚きの効果が! 「sMS-2000」が聴かせる“華やかできらびやかなサウンド”も絶品

 はい、予想通りでした、というか予想以上に音がめちゃくちゃ良くなりました。音楽専用ネットワークスイッチS100と光絶縁ツールのエディスクリエーションFIBER BOX2を導入した効果をあっさりと上回る高音質が得られたのである。情報量、音数が明らかに増え、音像が立体的に展開され、よりニュアンスの豊かなサウンドに変貌したのだ。

 パーヴォ・ヤルヴィ指揮 エストニア祝祭交響楽団が演奏したアルヴォ・ペルトの「CREDO」をQobuzで聴いてみたのだが、合唱と弦が見事に溶け合って立体的に広がり、眼前に巨大な壁となって屹立するそのスケールの大きさにことばを失った次第だ。

 次に光LAN接続可能なSFP端子を持つぼくの愛用ネットワークプレーヤー、エバーソロ「DMP-A10」と、リスニングルームに置いたsNH-10Gをダイレクトに光LAN接続したケースを試してみたところ(光LANネットワーク接続図2)。接続図1とほぼ同様の音質向上効果が得られた。やはり情報量が増え、音楽がいっそうクリアーに聞こえるのだ。

 考えてみれば、ぼくが使っているネットワークスイッチのS100にもSFP端子があるので、sNH-10Gを1台導入すれば、光LAN接続の効能を得ることができる。書斎からリスニングルームまで光ファイバーケーブルを、生活動線を妨げないように通線する工事の必要があるけれど……。今年の課題にしたいと思う。

エバーソロ「DMP-A10」の光LAN端子を活用した、フル光LAN接続の音も試す

画像: 山本さんが愛用中のネットワークプレーヤー、エバーソロ「DMP-A10」は光LAN端子を搭載しており、sNH-10Gと光LANケーブルで接続できる。これを活かして、モデル以降の経路をすべて光LAN接続した場合の音も確認してみた

山本さんが愛用中のネットワークプレーヤー、エバーソロ「DMP-A10」は光LAN端子を搭載しており、sNH-10Gと光LANケーブルで接続できる。これを活かして、モデル以降の経路をすべて光LAN接続した場合の音も確認してみた

画像3: SOtM「sNH-10G」を使った光LAN接続でネットワーク環境をグレードアップしたら、驚きの効果が! 「sMS-2000」が聴かせる“華やかできらびやかなサウンド”も絶品

 さて、先ほどさらっと述べたけれど、今回の取材ではSOtMのミュージックサーバーsMS-2000の実力についてもチェックした。試聴したのは、外部マスタークロック、LAN/USBカード用電源ユニット、DC Yケーブル、クロックケーブルを同梱し、電源ユニットに銀線を用いた最高級ヴァージョン「sMS-2000PSMC」だ。

 本機には4TバイトのSSDストレージが内蔵されているので、ぼくの愛聴ハイレゾファイルをそのSSDにコピー、まずその音質を確認してみた(ソウルノートのUSB DAC/SACDプレーヤー『S-3 Ver2』とUSB接続)。

 通信プロトコルや通信時に外来ノイズの影響を受けないSSDダイレクト再生のメリットなのだろう、この音は文句なしにすばらしかった。男性ジャズ・ヴォーカル、ジェイミソン・ロスの歌声は安定感があり、深々と響く。ピアノの美しさも格別、トランジェントがきわめて良いので、タッチの明晰さがありありとわかる。ドラマーのブラッシュワークも顕微鏡でのぞいたかのようにディテイルがくっきりと浮かび上がる印象だ。

ミュージックプレーヤー&サーバー:SOtM sMS-2000PSMC
¥2,970,000(銀線仕様電源ユニット、税込)、¥2,948,000(銅線仕様電源ユニット、税込)
※マスタークロック、LAN/USBカード用電源ユニット、DC Yケーブル、クロックケーブル付
※DC Yケーブルとクロックケーブルは長さ1.5m。マスタークロック入力はデフォルトが50Ωで、注文時に75Ωも指定可能

画像4: SOtM「sNH-10G」を使った光LAN接続でネットワーク環境をグレードアップしたら、驚きの効果が! 「sMS-2000」が聴かせる“華やかできらびやかなサウンド”も絶品

●接続端子:LAN端子✕2(1系統は拡張LANボード)、USB Type-A端子✕7(1系統は拡張USBボード)、ディスプレイポート、HDMI、BNCマスタークロック入力(10MHz)
●内蔵ストレージ:4TバイトM.2 SSD(M.2 SSD1台追加可能)
●オーディオプレーヤー:Roon Ready、DLNA audiorenderer、OpenHomesupport、MinimServer(NAS機能)、HQplayerEmbedded、Diretta、他
●寸法/質量(本体):W445×H115×D394mm/10kg

画像: sMS-2000は4TバイトのSSDを内蔵したミュージックサーバーで、汎用の音楽再生アプリを使ってタブレット等からも操作可能。お気に入りのUSB DACと組み合わせることで高音質再生が楽しめる。写真右側にはSOtMが開発した高音質LAN/USBボードも装備されている

sMS-2000は4TバイトのSSDを内蔵したミュージックサーバーで、汎用の音楽再生アプリを使ってタブレット等からも操作可能。お気に入りのUSB DACと組み合わせることで高音質再生が楽しめる。写真右側にはSOtMが開発した高音質LAN/USBボードも装備されている

 ステレオサウンドが販売している11.2MHz DSDファイルの『ロイヤル・バレエ・ガラ』から「花のワルツ」を再生してみた。この音源はステレオ録音初期の1959年にロンドンのキングスウェイ・ホールでアナログ録音された作品で、それを11.2MHz DSDにフラットトランスファーしたものだ。

 ステレオフォニックな音場の広がりが得られるオーケストラ・サウンドは息をのむほどだが、このSSDダイレクト再生の音は圧巻の一言。ぼくが愛用しているDMP-A10も内蔵SSDダイレクト再生が可能なのだが、それを上回るスケールの大きなサウンドが聴けたのである。

 ところで、本機sMS-2000には音質を吟味したというハイエンドオーディオ仕様の拡張LANポートが用意されており、当初はその拡張ポートにLAN接続してみた。しかしロックしたりロックしなかったりという症状が発生したので、通常のLANポートに接続して試聴したのだが、それでも先述したようなすばらしい音を聴くことができたことを申し添えておきたい。

 常用しているミュージックサーバーNA1/2の音楽ファイルをsMS-2000で再生してみたが、この音も我が家のDMP-A10の再生音も上回る見事なものだった。ひじょうにきめ細かく音像を彫琢する印象で、音楽に独特な華やかさが加わるのである。「華やかできらびやかなサウンド」というのが、sMS-2000の音質面の大きな特長と言っていいだろう。ぼくの好きなエネルギーバランスとはやや異なるが、この音が多くのオーディオファイルを納得させる魅力を持っていることは間違いない。

画像5: SOtM「sNH-10G」を使った光LAN接続でネットワーク環境をグレードアップしたら、驚きの効果が! 「sMS-2000」が聴かせる“華やかできらびやかなサウンド”も絶品

 最後にsMS-2000に10MHzクロックを供給するsCLK-OCX10をつないだ効果について言及しておこう。

 良質な外部クロックを加えると、サウンドステージがぐんと広がり、音像定位がいっそう安定する効果が得られることは過去経験済みだが、sCLK-OCX10の効果はそれだけではなかった。Qobuzで聴く渡辺貞夫のアルトサックス(アルバム『PEACE』)に艶々とした色気が加わり、アルヴォ・ペルトの『CREDO』で聴けるエストニア祝祭交響楽団の弦5部の音色がいっそう美しく響くようになったのである。

 ネットワークオーディオを知悉したSOtMの実力の高さを改めて思い知らされた今回の試聴実験。じつに実り多いものだったし、現在の我が家のネットワークオーディオ環境の問題点を浮き彫りにする機会にもなった。さて、どうするかな……。

画像: 拡張LAN/USBボードには別途電源を供給する必要があるので、そのための電源ユニットも付属している(写真右)。さらに今回はsMS-2000PSMCに同梱されているクロックジェネレーターのsCLK-OCX10を使って本体に外部クロックを供給した(写真中央、左)

拡張LAN/USBボードには別途電源を供給する必要があるので、そのための電源ユニットも付属している(写真右)。さらに今回はsMS-2000PSMCに同梱されているクロックジェネレーターのsCLK-OCX10を使って本体に外部クロックを供給した(写真中央、左)

(撮影:嶋津彰夫)

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