リン製品を使ったサラウンド再生をどう楽しんでいるのか。趣味人たちの姿を通じて、オーディオそしてオーディオビジュアルの新しいライフスタイルのあり様を探る本連載。今回は、東京・秋葉原にある大手オーディオ販売店、ダイナミックオーディオさんから、非常に特徴的かつ素敵なホームシアターを組まれた方がいらっしゃるとお聞きして、東京都心にありながら、繁華街の喧騒から少し離れた、閑静な住宅街にある瀟洒な邸宅内に設えたホームシアターを訪ねた。  東京都 Nさん

取材・構成/本誌・辻

 ホームシアタースペースのシステム提案とインストールを担当されたダイナミックオーディオの柴田さん曰く、「映画や音楽はもちろん、非常にスポーツにこだわるオーナーのNさんは、ホームシアターにゴルフシミュレーターのシステムを組み込んでいます。しかもホームシアターに隣接して本格的なフィットネスジムも設置しているんです」とのこと。

 仕事がら様々なホームシアターを訪問する機会はあるが、ゴルフシミュレーターを組み込み、フィットネスジムを隣接させたシアターというのは初めての経験。海外のホームシアター愛好者の中で、そのような豪華なシステムを設えているケースがあることは知っていたが、日本の、しかも都心にあるとは……。興味津々の思いで取材に向かった。

ゴルフシミュレーターとホームシアターの両立を実現

 小雨がアスファルトを濡らす10月末、取材陣はNさん宅に向かった。

 「お忙しいところ、また足元の悪い中、お越しくださってありがとうございます」と良く通る声のNさんがお出迎え。挨拶もそこそこ、ホームシアターにご案内してくださった。30畳程度のスペースの5分の3ほどが、ゴルフシミュレーター用のスペースと思われる人工芝のエリアで、その手前がホームシアター用スペースとなっている。

 ゴルフシミュレーターは、「トラックマン」というデンマークのメーカーが作る弾道計測器を用いたシステム。レーダーとカメラを併用することで、クラブの軌跡とボールの軌道を同時かつ瞬時に計測、非常に多彩な情報がわかりやすく表示してくれるという。

画像1: 【リン・サラウンド体験記】音楽と映画鑑賞、そしてスポーツ観戦。大画面とサラウンドの幅広い魅力に脱帽

シアター用スクリーンの奥に、ゴルフシュミレーターのエリアが現れる。人工芝の濃い部分から、シュミレーター用スクリーンに向かって実際のゴルフボールを打つ。天井にセットされたトラッキングマシーンでボールとクラブの軌道を計測、画面上にその軌道とその詳細(速度や回転数、スピンの回転軸など)が視覚的に表示される仕組み。非常に多くのプロも練習に使っている高性能システムだ

 

 「ホームシアターの奥にはウェイトトレーニング用や有酸素運動用の機材を設置して、フィットネスジムとして使っています」とNさん。仕事がら都心で暮らす必要はあるものの、お住いのエリアの近隣には、ゴルフの練習場やフィットネスクラブがなく、ご自身のペースで、気兼ねなくカラダを動かしたい、という気持ちが常々あったそうだ。

 「この家をリフォームすることになって、映画や音楽を楽しめるスペース、いわゆるホームシアターを作る、ということは決めていました。ちょうどコロナ禍のタイミングで、思い切りカラダを動かすのが不便な時期を過ごしたこともあって、それなりの設備を備えたフィットネスジムやゴルフシミュレーターもうまく組み込めたらいいなと思って、そんな希望を設計事務所の方に伝えたんです。機材のことは正直あまり詳しくないので、ジムやゴルフシミュレーター、そしてオーディオビジュアルなどの機器のチョイスやインストールは、プロの目利きの人たちに相談して、自分の希望と設置スペースとの塩梅、そして予算も含めていいバランスがとれるようにしてアレンジしてもらいました」(Nさん)

 現在45歳のNさんは、映画は、クエンティン・タランティーノ監督作品や、トム・ハンクス、レオナルド・ディカプリオ主演作品がお好きとのこと。音楽については、邦楽が大好物で、その中で最近は特にback numberがお気に入りなのだとか。

 「せっかくホームシアターを作るのですから、映画館の映像と音響に負けないくらいの迫力がほしかったのですが、でもスピーカーはなるべくスリムでインテリアにフットするようなものを、それを鳴らすアンプもシンプルな機材構成で、しかも僕以外の家族も操作できるくらい簡単な機器だとありがたいとちょっと贅沢な希望があったんです」(Nさん)

 そんな要望を設計事務所経由で受けたダイナミックオーディオの柴田さんは、オーディオビジュアルシステムの核となるスピーカーシステムには、スリムなトールボーイ型モデルを軸にプランニングを行なうことにしたそう。

 具体的に話が進んだ昨年春ごろには、実際に東京・秋葉原にあるダイナミックオーディオの店舗にNさんをお呼びして、様々なスピーカーシステムを用いた試聴を実施。音はもちろん、外観デザインもイメージが合うということで、ピエガの22cmダブルウーファー+同口径のパッシブウーファー搭載の本格モデルCoax 811をNさんはチョイスされた。

 サラウンドスピーカーは、音の繋がりとデザイン的な調和を踏まえて、同じピエガのPremium 701を選択、サブウーファーもピエガで、22cmダブルウーファー搭載のPS 101を組み合わせた。ゴルフシミュレーターを設置する都合もあるため、センタースピーカーやオーバーヘッドスピーカーを使わない、シンプルな4.1chでのサラウンドシステムを構築した格好だ。

スイス・ピエガは新開発のリボントゥイーターを搭載した、Coax Gen2シリーズを展開、高い評価を得ている。その最高峰モデルCoax 811をフロントL/Rに用いている。本機は大口径の同軸リボン型ユニットC212+を採用した大型モデルで、質量は63kgと重量級だ

 

サラウンドスピーカーはフロントと同じピエガのPreimum 701を、サブウーファーもピエガ製PS 101を使用。サラウンドシステムはセンタースピーカーレスの4.1ch構成と非常にシンプル。天井スピーカーも組み込んでいない状態だが、リッチなサラウンド音場がリスニングエリアを包み込む。

 

 

リンSELEKT DSMに内蔵するDACグレードは聴き比べて決定

 アンプに関しては「音質はもちろんのこと、快適な操作性、ワンボディでサラウンド再生ができるというご希望から、すぐにリンのSELEKT DSMシリーズを提案することに決めました」(柴田さん)とのことだった。

 ところで、リンのSELEKT DSMは、その製品名の通り、ユーザーの用途に合わせて、様々なモジュールを選択できることが大きな特徴である。柴田さんはサラウンドシステム駆動用のパワーアンプを内蔵する仕様を組み込む前提で、音質を決定付けるDACグレードの違いをNさんに実際に体験してもらった。SELEKT DSMのDAC回路はSTANDARD、KATALYST(カタリスト)、ORGANIK(オーガニック)の3グレードが用意されているが、入念な聴き比べの結果、最高峰のORGANIKに決定した。

 「価格を考えるとKATALYSTはもちろん、STANDARDでも十分に素晴らしいDAC性能だと思いましたが、どうせ買うなら後悔しないように、多少無理をしても一生モンの製品を選ぼうと思いました。ここで鳴らす音はたまらなくよくて、ORGANIK DACを選んで正解でしたね」(Nさん)

 その結果、Nさんは、リンの最新・最高のDACセクションであるステレオ仕様のORGANIK DACモジュール×3+ステレオパワーアンプモジュール×2+ORGANIK DAC仕様のハイブリッド・アウト・モジュール(モノーラルアンプ+サブウーファー出力回路)+HDMI拡張モジュール+サラウンドプロセッシングモジュールを搭載した、ハイグレードなAVセンターというべき仕様を導入されたのである。

画像4: 【リン・サラウンド体験記】音楽と映画鑑賞、そしてスポーツ観戦。大画面とサラウンドの幅広い魅力に脱帽

ピエガCoax 811とPreimum 701の4つのスピーカーシステムと、PS 101サブウーファーを1台で駆動する、リンのハイグレードコンポーネント「SELEKT DSM」。ベースシャーシを2グレードから選んだうえで、ユーザーが必要とする仕様のモジュールを組み込む「選択型コンポーネント」だ。Nさんは、4.1chスピーカーの再生が可能なステレオアンプモジュール2つを内蔵させ、その前段のD/Aコンバーターモジュールにはリンの最高峰ORGNIKをチョイスした

画像5: 【リン・サラウンド体験記】音楽と映画鑑賞、そしてスポーツ観戦。大画面とサラウンドの幅広い魅力に脱帽

ホームシアターエリアに、フィットネスエリア用アンプとして使うリンのSELEKT DSM-SAもセッティングしている。STANDARDグレードのDACモジュールと、アンプモジュールを組み込んだシンプルな仕様となって

 

主な使用機器

ホームシアタースペース
●4Kプロジェクター : ソニーVPL-XW7000
●スクリーン : スチュワートStudioTek 130G3(170インチ/16:9)
●ネットワーク端末 : アップルApple TV 4K
●スピーカーシステム : ピエガCoax 811(L/R)、Preimum 701(LS/RS)、PS 101(LFE)
●ネットワークプレーヤー+アンプ : リンSELEKT DSM-EOA+3.1 OAパッケージ(ステレオ仕様ORGANIK DACモジュール×3+ステレオアンプモジュール×2+ORGANIK DAC仕様のハイブリッド・アウト・モジュール+HDMI拡張モジュール+サラウンドプロセッシングモジュール)

フィットネススペース用
●ネットワークプレーヤー+アンプ : リンSELEKT DSM-SA(STANDARD DACモジュール+ステレオアンプモジュール仕様)
●スピーカーシステム : JBL Stage 280C×2ペア

 

 

高い解像度と迫力を両立したリン×ピエガの4.1chサラウンド

 わずかな時間であったが、Nさんのホームシアターのパフォーマンスを体験させていただいた。ソース機器はApple TV 4Kで、Apple TVでデジタル購入された『F1®/エフワン』。冒頭のデイトナ耐久レースでのポルシェ911GT3Rがオーバルを疾走する場面でのエキゾーストノートから、F1マシンの甲高い咆哮、タイヤスキール音、縁石を乗り越える際の野太い音など、リアル世界のレーシングカーのサウンドを効果的に活かした娯楽作品だ。Nさんシアターでは、そのサウンドエフェクトの俊敏さが際立つ。低音も想像以上に充実しており、ピエガの繊細かつ切れ味の鋭い中高域と、躍動感たっぷりの弾む低音がホームシアターを埋め尽くす。ORGANIK DACを搭載しているとはいえ、たった1台のSELEKT DSMが極めて高い解像度と迫力を両立した駆動力を発揮している点にも驚いた。

 映像は、ソニーの4KレーザープロジェクターVPL-XW7000とスチュワートStudioTek 130 G3の170インチの16:9スクリーンという巨大画面を約4mの距離で鑑賞している状態で、最新ホームシアターらしい明るく高解像度で、しかも色鮮やか。リン+ピエガのコンビネーションによる音響パフォーマンスは、繊細さをおろそかにしない「大きな表現」が美点だと思ったが、それに負けない魅力的な映像であった。

画像6: 【リン・サラウンド体験記】音楽と映画鑑賞、そしてスポーツ観戦。大画面とサラウンドの幅広い魅力に脱帽

プロジェクターはソニー製4KレーザーモデルVPL-XW7000。光出力3,200ルーメンのレーザー光源Z-Phosphorと独自の反射型液晶パネルSXRDを用いて、明るく鮮明な映像が持ち味のモデルだ

 

 

大迫力のスポーツ観戦もホームシアターの醍醐味だ

 Nさんは念願だったゴルフシミュレーターとウェイトトレーニングの設備をこのスペースに導入した結果、思う存分にフィジカルトレーニングに励んでいるとのことだが、「ちょっと驚いたのは、ホームシアターで観るスポーツ中継が想像以上に相性が良かったこと。ちょうどいま、ドジャースのポストシーズンの戦いの最中ですが、その中継をAmazon Prime Videoでネット配信しているでしょう。それをここで観ると、ものすごい迫力があるんです。スポーツ中継は、リビングルームにあるテレビで見ればいいと思っていましたが、ホームシアターでのスポーツ中継は段違いの感動があるんですね。ボクシングの井上尚弥選手のネット中継もここで見てとても興奮しました。いまはApple TV 4Kだけを使っていますが、近々、テレビ放送もホームシアターで見られるように、レコーダーも入れようかと思っています。来年にはオリンピックやワールドカップサッカーもありますからね。家族、そして友人たちとの観戦がとても楽しみです」(Nさん)

 気のおけない友人たちとの大画面&サラウンド音響でスポーツ観戦を楽しむ。映画や音楽再生だけにとどまらないホームシアターの醍醐味をNさんは見出したようだ。

 

ホームシアター奥には、様々なウェイトトレーニング器具が並んだフィットネススペースが広がる。写真はそのほんの一部で、天井にはJBLの埋め込みスピーカーStage 280Cが4本セットされ、フィットネス中に音楽が楽しめるカタチだ

 

 

>本記事の掲載は『HiVi 2026年冬号』

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