驚異の名録音作品を、最上の状態で聴く。再生機内蔵SSD再生の圧倒的な高音質に驚嘆

今年6月に我が家に迎え入れたエバーソロのネットワークオーディオプレーヤーDMP-A10。126ページでお伝えしたように、ぼくは本機の音の良さに満足し、QobuzなどのストリーミングサービスやデラのミュージックサーバーN1A/2に収めた音楽ファイルをいっそう熱心に聴くようになった。

そしてつい最近、エバーソロの輸入元であるブライトーンとステレオサウンド社が協業する興味深いサービスが始まった。それは、2017年にBD-ROMで発売が始まったステレオサウンド社の11.2MHz/DSDオリジナルソフトの音楽データを収録したSSDを、BD-ROMとバンドルするというもの。DMP-A10だけでなく、SSDスロットが用意されたDMP-A8、DMP-A6などでもこのサービスを利用できる。

1950年代後半から1970年代にかけて、アナログ録音黄金期のデッカやマーキュリー、RCAビクターなど名門レーベルのクラシック音楽の名作をアナログマスターから11.2MHz/DSDにフラットトランスファーしたこれら作品群は、ステレオ録音の魅力とは何かを考えるうえでとても重要な宝の山だ。発売以来ぼくもほぼすべてを入手、BD-ROMからデラのミュージックサーバーN1A/2にコピーし、折に触れ聴いている。

今回のSSDでの頒布は、3タイトル(税込52,470円)、5タイトル(同80,190円)、全14タイトル(同207,900円)の3パターンがある(エバーソロ製品にバンドルした場合、単独の販売もあり)。3タイトルは『ストラヴィンスキー:バレエ<春の祭典>』『ドヴォルザーク:交響曲第9番<新世界より>』『ストラヴィンスキー:バレエ<ペトルーシュカ>』。5タイトルは上記3本に『ロイヤル・バレエ・ガラ』と『バッハ:無伴奏チェロ組曲』が加わるというラインナップだ。

LANケーブルでスイッチングハブにつながったミュージックサーバーとネットワークプレーヤーで相互通信しながら音源を再生するよりも、プレーヤー内部にビルトインしたSSDにダイレクトにアクセスして音楽データを読み出すほうが、通信プロトコルや外来ノイズの影響を受けないので音質面で有利なのでは? と予想していたが、今回のケースで実際に聴き比べてみるとまさにその通りだった。

Stereo Sound REFERENCE RECORD
BD-ROM+SSDストレージ『11.2MHz BD-ROM+SSDストレージバンドセット』

画像: Stereo Sound REFERENCE RECORD BD-ROM+SSDストレージ『11.2MHz BD-ROM+SSDストレージバンドセット』

『ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」/ショルティ指揮シカゴ交響楽団』★☆
『ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」/ケルテス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団』★☆
『ストラヴィンスキー:バレエ「ペトルーシュカ」/アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団』★☆
『ロイヤル・バレエ・ガラ/アンセルメ指揮コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団』☆
『J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)/ヤーノシュ・シュタルケル(チェロ)』☆
『ホルスト:組曲「惑星」/メータ指揮ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団』
『ベルリオーズ:幻想交響曲/パレー指揮デトロイト交響楽団』
『ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番/バイロン・ジャニス(ピアノ)、ドラティ指揮ロンドン交響楽団』
『アルベニス:スペイン組曲(ブルゴス編)/ブルゴス指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団』
『マーラー:交響曲第3番/メータ指揮ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団』
『ストラヴィンスキー:バレエ「火の鳥」/ドラティ指揮ロンドン交響楽団』
『プロコフィエフ:≪3つのオレンジへの恋≫組曲 スキタイ組曲/ドラティ指揮ロンドン交響楽団』
『ブラームス:ヴァイオリン協奏曲/ヨーゼフ・シゲティ(ヴァイオリン)、メンゲス指揮ロンドン交響楽団』
『モーツァルト:交響曲第25番&第29番/ブリテン指揮イギリス室内管弦楽団』

Eversolo本体価格にBD-ROM+SSDストレージを追加したバンドル価格
①全14タイトルセット ¥207,900 税込
②5タイトルセット ¥80,190 税込(☆の5作)
③3タイトルセット ¥52,470 税込(★の3作)

11.2MHz DSD収録のBD-ROM+SSDストレージの単体販売の場合
④全14タイトルセット ¥231,000 税込
⑤5タイトルセット ¥89,100 税込(☆の5作)
⑥3タイトルセット ¥58,300 税込(★の3作)

※本パッケージは、ステレオサウンド社から発売されている11.2MHz DSDファイル収録BD-ROMと、その音源を1TバイトM.2 SSDストレージにバックアップしたバンドルセット品です。Eversolo本体にセットするバンドル(①〜③)と、BD-ROM+SSDストレージ単体(④〜⑥)の2種類があります。それぞれの3タイトルセット、5タイトルセット、14タイトルセットの3パターン6製品の用意あり

全14タイトルの中でもとくに音質が優れていて、ぼくが好んで聴いているのは『ロイヤル・バレエ・ガラ』(RCAビクター/デッカ制作)。ステレオ録音初期の1959年1月に英国ロンドンのキングスウェイ・ホールで収録された作品で、指揮はエルネスト・アンセルメ、演奏はコヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団だ。収められた楽曲は、チャイコフスキーの三大バレエ曲など8演目の抜粋版である。プロデューサーはマイケル・ウィリアムソン、エンジニアは名手ケネス・ウィルキンソン。

当時のキングスウェイ・ホールは(音を聴くかぎり)豊かな響きを持つすばらしいホールだが、その音響空間の中にそれぞれの楽器がクリアーに浮かび上がり、そのトランスペアレンシーは信じがたいほどで、1950年代後半、ステレオ録音はすでに高みに達していたのではないかと思える。この作品以上に優秀なオーケストラの現代録音があったら教えてもらいたいなどと思ってしまうほどの音の良さなのである。

この11.2MHz/DSD音源は、N1A/2に収録したデータを再生した場合でももちろん録音の凄さは理解できるが、DMP-A10にビルトインしたSSDダイレクト再生は、そのはるか上をいくすばらしいサウンドを聴かせてくれた。いちばん違うと思えるのは、立体的な音場表現。幅と高さと奥行を伴なった豊かなホールプレゼンスをリアルに実感させながら、手前に弦楽器群、後方に木管楽器、金管楽器、そしてその奥に打楽器というオーケストラの配置を目に見えるかのように克明に再現されるのである。それから「おっ!」と思わせたのはコントラバスのピチカートの聴かせ方で、N1A/2経由の再生に比べて余韻がより長く感じられ、しかもソコにコントラバス奏者がいるという生々しいイリュージョンを惹起するのだ。

ヤーノシュ・シュタルケルが弾く『バッハ:無伴奏チェロ組曲』(マーキュリー)もSSDダイレクト再生の優位性を実感させてくれた作品。1963年と1965年にニューヨークのファイン・スタジオで収録されており、レコーディング・エンジニアはロバート・エベレンツ。嶋護さんの『クラシック名録音106究極ガイド』(ステレオサウンド刊)によると、ファイン・スタジオはホテルのボールルームで、シャンデリアや装飾のついた柱と漆喰の壁に囲まれたライブな空間だったという。マイクロフォンは3本で、ソロ楽器の収録ゆえ両脇のマイクは中にしぼったサイドマイクとして用いられたそうだ。

SSDダイレクト再生で聴くこの無伴奏チェロは、ファイン・スタジオの空間特性、天井の高さや奥行までがわかると錯覚させる驚くべきプレゼンスの再現性を有する。シュタルケルのチェロの音像は盤石の安定感で、豊かな音響空間の中にピタリと屹立する。音色の美しさもデラN1A/2サーバーからの再生を上回る印象だ。

イシュトヴァン・ケルテス指揮ウィーン・フィルの『ドヴォルザーク:交響曲第9番<新世界より>』(デッカ)もぼくの愛聴曲。1961年3月ゾフィエンザールでの収録で、録音エンジニアはジェームズ・ブラウンだ。録音は「デッカ・ツリー」に補助マイクを使ったセッティングが採られていてオーケストラ音楽を聴く楽しさが満喫できる。SSDダイレクト再生で聴くと、豊かな響きの中に各楽器がクリアーに「視える」リアルなサウンドステージが出現する。ミュージックサーバーからの再生ではここまでの解像感は得られない。歌舞伎の見得を思わせるケレン味たっぷりの躍動感に満ちた演奏の面白さもより生々しく伝わってくる。

ネットワークオーディオ再生は、ネットワーク周辺のノイズ対策を様々施すことで着実に高音質化の階段を上ることができるが、その軛(くびき)から逃れられる内蔵SSDダイレクト再生には大きな可能性があるのは間違いない。DMP-A10にはSSDをビルトインできるスロットが2つあるので、空スロットにSSDをもう1つ入れて、ここにはクラシック音楽以外の自分の愛聴ハイレゾファイルを収めようかななどと考え始めているところだ。

画像: ↑エバーソロのネットワークプレーヤーDMP-A10の底面にはM2 SSDスロットが2つあり、その1つに11.2MHz音源を収めたSSDを装着。再生機に直結するダイレクト感たっぷりの高音質は格別だ

↑エバーソロのネットワークプレーヤーDMP-A10の底面にはM2 SSDスロットが2つあり、その1つに11.2MHz音源を収めたSSDを装着。再生機に直結するダイレクト感たっぷりの高音質は格別だ

 
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