この6月、ぼくはエバーソロのネットワークオーディオプレーヤー「DMP-A10」を購入し、我が家に迎え入れた。それまではルーミンのネットワークトランスポート「U2」を使っていたのだが、DMP-A10を輸入元から拝借、その音を聴いて感激し、買い替えを決意したのである。

 昨秋我が国で正式スタートした高音質音楽ストリーミングサービスQobuzのアカウントを取得して以来、ぼくの部屋のネットワークプレーヤーの稼働率は俄然上がった。Qobuzはその音の良さに加え、充実したプレイリストや検索のしやすさなど魅力にあふれたサービスで、その面白さにぼくは夢中になり、少しでも良い音で音楽ファイル再生に取り組もうと考えてDMP-A10を迎え入れたのだ。

ストリーミング再生はもちろん、SSDを追加すれば高音質ミュージックサーバーとしても活躍。

画像: 山本浩司さんが、“その音に感激し” エバーソロ「DMP-A10」を導入。音楽ファイル再生をもっといい音で聴くための、もう一段上の高音質再生法にも取り組んでみた

ミュージックストリーマー/プリアンプ:エバーソロ DMP-A10 ¥825,000(税込)

●内部メモリー:4GDDR4+64GeMMC
●DACチップ:ES9039 PRO
●オーディオプロセッサー:XMOS XU316
●オペアンプチップ:OPA1612
●SSD:M.2NVME 3.0 2280サポート(最大4Tバイト2枚まで。SSDは同梱されていません)
●接続端子:HDMI(ARC)、デジタル入力✕4(同軸✕2、光✕2)、USB Type-B、デジタル出力✕2(同軸、光)、USB Type-A、アナログ入力✕3(XLR、RCA✕2)、アナログ出力✕2(XLR、RCA)、サブウーファー出力✕2、USB3.0✕2、SFP、RJ-45(10/100/1000Mbps)
●対応ハイレゾ信号:最大DSD512、PCM 768kHz/32ビット
●対応ミュージックサービス:Tidal、Qobuz、Highresaudio、AmazonMusic、Deezer、Radio Paradise、TuneIn Radio、Apple Music、KKBOX、WebDAV、UPnP
●ストリーミング:Roon Ready、Squeezelite、DLNA、TidalConnect、他
●寸法/質量:W430×H117×D310mm/12.5kg

画像: DMP-A10の底面にはSSD用の拡張スロットが2基準備されている。それぞれ最大4Tバイト、合計8Tバイトの装着が可能。ここに取り付けたSSDから再生する音は一度聴いてみる価値があります

DMP-A10の底面にはSSD用の拡張スロットが2基準備されている。それぞれ最大4Tバイト、合計8Tバイトの装着が可能。ここに取り付けたSSDから再生する音は一度聴いてみる価値があります

 実を言うと、ネットワーク周辺のノイズ対策としてエディスクリエーションの光絶縁ツール「FIBER BOX2」やアコースティックリヴァイブの4分割LANケーブル「LAN-QUADRANT-TripleC-WB」などを導入して以来、ルーミンU2の音に大きな不満を抱くことはなかった。しかしDMP-A10は、音の緻密さや力感、スケール感においてU2を上回る魅力を有していることがわかったのである。

 DMP-A10は、エバーソロのネットワークプレーヤーの最上位モデル。それにふさわしい充実したリニア電源回路やアルミ・ダイキャスト製シャーシなど、高音質を目指して贅を尽くした設計手法が採られている。フロントパネルには6.5インチのLCDタッチスクリーンが設けられていて、各種表示切替えが可能。また注目したいのは、同社製プレーヤーで初めてネットワーク接続用SFPポートを搭載し、モジュラーを介して光接続が可能になったことである(我が家の場合は光絶縁ツールを用いているので、今のところこのポートを使う予定はないけれど)。

 本機はXLRバランスとRCAアンバランスのアナログ出力を有していて、その音もたいへんすばらしいが、現状ぼくは本機のUSB出力を、10MHzクロックを供給するソウルノート「X-3」をつないだ、同じくソウルノートのSACD/CDプレーヤー&USB DAC「S3 Ver.2」と接続している。そのほうが音場の広大さやローレベルの精妙な表現で上回ることが実感できたからだ。

ネットワークの接続環境にも充分配慮した山本さんのオーディールームで
DMP-A10のパフォーマンスを最大に引き出す!

画像: 山本邸に新たに加わったエバーソロ「DMP-A10」。Qobuzなどのストリーミングサービスとミュージックサーバー&内蔵SSDからのファイル再生を行うプレーヤーとして活躍している

山本邸に新たに加わったエバーソロ「DMP-A10」。Qobuzなどのストリーミングサービスとミュージックサーバー&内蔵SSDからのファイル再生を行うプレーヤーとして活躍している

画像: 「DMP-A10」のUSB出力をソウルノートのSACD/CDプレーヤー&USB DACの「S3 Ver.2」に入力してD/A変換を行い、アナログXLR出力をオクターブのプリアンプ「Jubilee Pre」に送っている

「DMP-A10」のUSB出力をソウルノートのSACD/CDプレーヤー&USB DACの「S3 Ver.2」に入力してD/A変換を行い、アナログXLR出力をオクターブのプリアンプ「Jubilee Pre」に送っている

取材時の山本邸のオーディオシステム
●ネットワークプレーヤー:エバーソロ DMP-A10
●SACD/CDプレーヤー&USB DAC:ソウルノート S-3 Ver.2
●クロックジェネレーター:ソウルノート X-3
●プリアンプ:オクターブ Jubilee Pre
●パワーアンプ:オクターブ MRE220
●スピーカーシステム:JBL K2 S9900
●ミュージックサーバー:デラ N1A/2
●ネットワークスイッチ:デラ S100
●光絶縁ツール:エディスクリエーション FIBER BOX2

 それからDMP-A10に限らないが、同社製ネットワークプレーヤー(他にはDSP-A8、DSP-A6等がある)の専用操作アプリの大きな特長として、音楽ストリーミングサービスに幅広く対応していることが挙げられる。Qobuzの他、Apple Music、Amazon Music、TIDAL、Deezer、Sound Cloudなど、その数はハイファイ用プレーヤーとして最多クラスではないかと思われる。とくにApple Music、Amazon Musicの両方に対応していることに注目される方は多いことだろう。

 ぼくの部屋では、DMP-A10を用いて主にQobuz、TIDALのストリーミング音源、それからDELAのサーバー「N1A/2」に収めた音楽ファイルを聴いている。先述の通り、ストリーミングサービスもNASの音源も、力感と繊細さを高次元で両立した見事なサウンドが楽しめているが、DMP-A10にはもう一段上の高音質再生法があることがわかった。

 それは内蔵SSDを用いた音楽ファイル再生だ。本機にはSSD用スロットがふたつ用意されていて、そこに格納したSSD音楽ファイル再生の音質が群を抜いてすばらしいのである。

 それに気づかせてくれたのは、エバーソロの輸入元であるブライトーンとステレオサウンドの協業による興味深い試みだ。ステレオサウンド社がBD-ROMで販売している11.2MHz/1ビットDSDファイルをSSDに収録し、それをバンドルして販売するというサービスである。

シンプルな信号経路のメリットがある! DMP-A10の内蔵SSDを活用します

画像: エバーソロでは、「DMP-A10」はもちろん、弟モデルの「DMP-A8」「DMP-A6 Master Edition Gen2」「DMP-A6 Gen2」に拡張用SSDスロットを準備している。ここに取り付けたSSDへのデータコピーは、PCを使ってネットワーク経由でも操作可能。今回はブライトーンの福林羊一さんに手伝ってもらい、その環境も整えた

エバーソロでは、「DMP-A10」はもちろん、弟モデルの「DMP-A8」「DMP-A6 Master Edition Gen2」「DMP-A6 Gen2」に拡張用SSDスロットを準備している。ここに取り付けたSSDへのデータコピーは、PCを使ってネットワーク経由でも操作可能。今回はブライトーンの福林羊一さんに手伝ってもらい、その環境も整えた

画像: ブライトーンでは現在、ステレオサウンドが製作したDSD11.2MHz音源を格納したSSDをバンドルした製品を販売している。3/5/14タイトルの3種類から選択可能で、詳しいタイトルや価格は以下のサイトから確認ください

ブライトーンでは現在、ステレオサウンドが製作したDSD11.2MHz音源を格納したSSDをバンドルした製品を販売している。3/5/14タイトルの3種類から選択可能で、詳しいタイトルや価格は以下のサイトから確認ください

 この11.2MHz DSDファイルは、デッカやマーキュリー、RCAビクターなどの名門レーベルが所蔵するクラシック音楽の名作群で、全部で14タイトル販売されている。これらはすべて1950年代後半から1970年代に発表されたアナログ録音黄金期の作品で、ステレオ録音の魅力とは何かを考えるときに様々な示唆を与えてくれる宝の山と言っていい。ぼくもほぼすべてのBD-ROMを入手し、ローカルサーバーのDELA N1A/2にコピーして折に触れ聴いてきた。

 今回のSSDバンドルサービスでは3タイトルと5タイトル、そして全14タイトルの3つのセットの中から選ぶことができる。3タイトルは『ストラヴィンスキー:バレエ<春の祭典>』『ドヴォルザーク:交響曲第9番<新世界より>』『ストラヴィンスキー:バレエ<ペトルーシュカ』。5タイトルはこの3つに『ロイヤル・バレエ・ガラ』と『バッハ:無伴奏チェロ組曲』が加わるというラインナップだ。

 これらの名作が収められた1TバイトのSSDを入手、DMP-A10のスロットに組み込んでその音を聴いてみた。DELA N1A/2に収めた音楽ファイルと比べながらである。スイッチングハブにLANケーブルでつながったネットワークプレーヤーと外部のNASを相互通信しながら再生するケースに比べて、プレーヤー内部にビルトインしたSSDにダイレクト・アクセスして読み出すほうが、通信プロトコルや外来ノイズの影響を受けないので音質面で有利なのではと予想していたが、まさにその通りだったのである。

画像: 山本邸ではストリーミングサービスの音質改善にも充分に配慮している。写真左が光絶縁ツールのエディスクリエーション「FIBER BOX2」で、これを通すことで外部ネットワークから混入するノイズをカットしている

山本邸ではストリーミングサービスの音質改善にも充分に配慮している。写真左が光絶縁ツールのエディスクリエーション「FIBER BOX2」で、これを通すことで外部ネットワークから混入するノイズをカットしている

 全14タイトルの中で、ぼくがいちばんよく聴いているのが『ロイヤル・バレエ・ガラ』(RCAビクター)。エルネスト・アンセルメ指揮コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団が演奏した8編のバレエ音楽を抜粋したオムニバス作品で、ステレオ録音最初期の1959年にロンドンのキングズウェイ・ホールで、ケネス・ウィルキンソンによって録音されている。

 指向性マイク3本を搭載した「デッカ・ツリー」の両脇に無指向性マイクを1本ずつ配置したシンプルなマイキングで収録されたこの作品は、キングズウェイ・ホールの豊かな響きを十全に捉えながら、眼前に出現する各楽器を克明に浮かび上がらせる。ステレオ録音は最初期にすでに完成し、現代録音は今なおその高みに到達できていないのではないかと疑念を抱かせる名録音と言っていいだろう。

 もちろんDELA N1A/2に収めた11.2MHz DSDファイルで聴いても、この録音のすばらしさをリアルに実感できるが、DMP-A10のSSD再生は、再生音のベールを1枚はがしたかのような鮮明なサウンドを訴求するのだ。とくに充分な奥行を伴ったサウンドステージに出現するコントラバス奏者のピチカートの響きがいっそう豊かに、ホールの波動のような低音域のうねりがリアルに感じられることにドギモを抜かれた。これは凄い!

画像: お気に入りハイレゾ音源の音を確認する山本さん

お気に入りハイレゾ音源の音を確認する山本さん

 そんなわけで、このクラシック音楽の11.2MHz DSDファイルだけでなく、DELA N1A/2に収めていたジャズやロック、ポップスの愛聴ファイルをDMP-A10にビルトインしたSSDにコピーして楽しんでいるが、どの音楽もよりいっそう安定感に富んだ見事なサウンドが聴けるようになり、酷暑の中、ぼくは爽快な気分を味わっている。DMP-A10のみならずエバーソロのネットワークプレーヤーを入手した方は、ぜひ積極的に内蔵SSD再生に取り組んでいただきたいと思う。

(撮影:土屋宏)

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