USB(Universal Serial Bus)はもともとパソコンと、プリンターなどその周辺機器との接続用インターフェイスだったが、普及につれて高度なオーディオ出力が可能になる汎用規格として定着。パソコン内の音楽再生ソフトで読み込んだデジタルファイルをデータとしてUSB伝送にて受け取れるUSB対応D/Aコンバーター(USB DAC)が登場し、パソコンを使ったデジタルファイル再生の高音質化に寄与した。その後もUSBはポータブルオーディオ機器の接続端子などとしても使われるようになり、現在では数多くのオーディオ機器がUSB端子を備えている。

 しかし、USBはもともとパソコンとその周辺機器間伝送用のインターフェイスであり、5Vの給電機能も持つため、その電源ラインからノイズが混入する問題なども内包してきた。この問題を解決したのが、SOtMのtX-USBultra。電源線からのノイズ混入をカットするだけでなく、外部マスタークロックの入力にも対応し、大幅な音質改善を目指した「USBリジェネレーター」である。

 今回は、電源強化版であるtX-USBultraPSを試聴した。従来はACアダプター仕様だったが、同社のフォノイコライザーやネットワークスイッチなどでも使われた強化電源ユニットを組み合わせた製品。これに合わせて本体も12V仕様のスペシャルエディションとなる。外部マスタークロック入力対応などは同様だ。銀線仕様と銅線仕様があるが、試聴では銀線仕様を使っている。
  

ダイナミックな躍動感が見事。「静けさ」も際立ってくる

 まずは①エバーソロDMP-A8をネットワークトランスポートとして用いてそのUSB出力を、デノンのSACDプレーヤーDCD-SX1 LIMITEDのUSB Type B端子にダイレクトに入力して再生。ついで②DMP-A8とDCD-SX1 LIMITEDの間にtX-USBultraPSを組み込んで比較してみた。アンプとスピーカーはHiVi視聴室のリファレンスであるデノンPMA-SX1 LIMITEDとモニターオーディオPL300Ⅱだ。

 ①と②のtX-USBultraPSを組み込んだ状態での差は歴然。クルレンツィス指揮ムジカ・エテルナの「チャイコフスキー:交響曲第6番『悲愴』」を聴くと、音量を抑えた序盤はボリュウム位置を間違えたかと思うくらいの「静けさ」が感じられた。S/Nの向上は明らかで、静かになったと感じる一方で、ホールの音のかすかな響きや微小なざわつきはより明瞭に描き出す。

 ①の状態でも、オーケストラの個々の音はしっかりと出ていたが、②ではステージの見晴らしはぐっと広がった。各楽器の粒立ちが良くなり、特に弦楽器の音色が鮮やかになる。クルレンツィスらしい鮮烈な音のキレが出てくる。そして、音楽全体のうねりというか勢いも豊かになる。このダイナミックな躍動感は見事だ。

 ローレン・オルレッドによる『FINAL FANTASY Ⅶ REBIRTH』の「No Promises to Keep」はピアノの音色も澄んだ音で、伸びのある声でありながら、抑揚や情感がより豊かに。ゲームの感動的な一場面が甦る情熱的な歌唱だ。

 

画像1: SOtM USBリジェネレーター『tX-USBultraPS』単なるノイズ改善効果を大きく超えた音質向上あり

接続端子はUSB入力1系統、USB出力2系統、クロック入力、給電コネクターのみとシンプル。10MHzクロック入力端子は50Ωが通常仕様だが、75Ω仕様も注文時に選択できる

 

画像2: SOtM USBリジェネレーター『tX-USBultraPS』単なるノイズ改善効果を大きく超えた音質向上あり

USB Type B端子に外部機器からの信号を入力、本機内部でクロックを叩き直すとともに、電源ラインからの信号をカット。クリーンな状態で、USB Type A端子からD/Aコンバーターにデジタル信号を送り出す。「PS」仕様になり、本機に給電する電源がACアダプターだった通常仕様から大きく強化された

 

音楽ストリーミングでの大きな効果が体感できた

 DMP-A8でAmazon Musicを使った音楽配信サービスでの音の変化も試した。ビリー・アイリッシュの新作『Hit Me Hard and Soft』から「CHIHIRO」を聴いたが、こちらはS/Nの向上がさらにはっきりとわかり、歌声に伴なう彼女の息づかいなども明瞭になった、生々しい歌唱になる。歌声のニュアンスも豊かになるし、伴奏のベースやドラムがはっきりとして、音の広がりや包囲感もより自然に展開していく。

 Amazon Musicのみならず、音楽ストリーミングサービスでの再生では、ネットワーク機器に由来するであろう様々な要因で、S/Nの劣化を感じやすく、ハイレゾ音源であってもローカル環境でのデジタルファイル再生に比べると、音が鈍ったように感じることが多々ある。USB DACを使う場合には、そのすべてとは言わないが、tX-USBultraPSを介在させることで、かなりの問題が解決できるに違いない。今回は試さなかったが、パソコンやスマホの音源を、USB経由で再生するようなケースでも大きな改善が期待できよう。

 tX-USBultraPSの効果をまとめると、なによりS/Nが良くなるだけでなく、音楽としてのダイナミックレンジが拡大し、より力強く、音楽の躍動感が高まる点が好ましい。単なるUSB伝送におけるノイズ改善効果を超えた音質的な向上が得られるともいってよい。

 しかも、マスタークロック入力に対応するなど、伸び代もまだある。tX-USBultraPSは、USB接続を必要とするネットワーク再生機器をお使いの方に、ぜひ注目いただきたいアイテムだ。

 

画像3: SOtM USBリジェネレーター『tX-USBultraPS』単なるノイズ改善効果を大きく超えた音質向上あり

USB Regenerator
tX-USBultraPS
¥462,000 (銀線仕様)税込

●型式 : USBリジェネレーター
●接続端子 : USB Type B端子(入力)1系統、USB Type A端子(出力)2系統、10MHzクロック入力1系統(BNC)、ほか
●寸法/質量 : 本体・W106×H48×D227mm/1.5kg、電源・W106×H48×D230mm/2kg
●ラインナップ : 銅線仕様(¥440,000 税込)あり
●問合せ先 : (株)ブライトーン TEL. 050(6877)6043

 

 

>本記事の掲載は『HiVi 2025年冬号』

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