ネットワーク環境でUSBを使ったデジタルファイル再生を楽しんでいるオーディオファイルに、音質向上アイテムとして注目いただきたいのがSOtM(ソム)社から発売中の「tX-USBultra」である。ソムはtX-USBultraをUSBリジェネレーターと呼び、機能的にはUSB出力のソース機器とUSB DACの間に本機を入れて、入力されたデジタル信号のクロックを再生成(リクロック)するという製品。

 具体的には、USB出力のソース機器(ネットワークトランスポートや、DELAあるいはfidataのようなトランスポート機能を有するNAS、そしてPCなど)からUSB出力されたデジタル信号をtX-USBultraで受けて、内部のノイズ対策を施した高精度クロックモジュール「sCLK-EX」でクロックを再生成するというものである。

USBリジェネレーター SOtM tX-USBultra

画像: tX-USBultraはスタンダード、スペシャルエディションとも外観は同じなので、底面のマーキングで仕様を確認する。

tX-USBultraはスタンダード、スペシャルエディションとも外観は同じなので、底面のマーキングで仕様を確認する。

<スタンダード仕様>
マスタークロック入力機能付 ¥198,000(税込)
ノーマルモデル ¥165,000(税込)
<スペシャルエディション仕様>
SE-S(銀線仕様) ¥44,000追加(税込)
SE-C(銅線仕様) ¥38,500追加(税込)

●接続端子:USB入力(Type-B)×1、USB出力(Type-A)×2、クロック入力(BNC)×1
●特長:USB出力電源オン/オフスイッチ、内部リファレンスクロック「sCLK-EX12」ボード、他
●寸法/質量:W106×H48×D227mm/1.5kg

画像: SOtMのUSBリジェネレーター「tX-USBultra」、3モデルを一斉試聴! それぞれがもたらす音の変化が魅力的で、ハイレゾ再生の新しい楽しみを体験できた

USB Type-A出力の上にある赤いボタンがUSB給電のオン/オフスイッチで、これを「OFF」側にすると給電がカットされる仕組みだ。なお組み合わせるDACによって以下のような違いがあるので、愛用のDACに応じて使い分けていただきたい。
(1)バスパワーOFFでも動作するDAC = 給電スイッチをOFFにセット
(2)最初の接続時に給電が必要なDAC = 給電スイッチONでDACとの接続を確立し、一度音が出たらその後はOFFにして使う
(3)バスパワーOFFでは動作しないDAC = 給電スイッチONで使う

 試聴は筆者リスニングルームで行った。今回の試聴では既発売のtX-USBultraに加えて、新たに登場するスペシャルエディション2モデルも用意して、それぞれどのような音質の変化や向上があるのか聴き比べる。さらに外部電源「sPS-500」(近日発売予定)を追加した時の音の変化や、10MHzの外部クロックジェネレーター「sCLK-OCX10」を追加した時の音の変化も確認する予定だ。

 筆者のリスニングルームにおける現在のデジタルファイル再生系は、接続図をご覧いただきたいが、ネットワークプレーヤーのルーミン「X1」をトランスポートとして使い、SACD/CDプレーヤーのソウルノート「S-3Ver.2」のDAC部にUSB接続している。したがって、今回tX-USBultraはルーミンX1とソウルノートS-3の間に入れて使用する事になる。NASはデラ「N10」で、ハブもデラの「S100」。ソウルノートS-3には同社の10MHzクロックジェネレーター「X-3」を接続している。

画像: 取材時の主なシステム接続図。スタンダードモデル、スペシャルエディションの合計3モデルを順番につなぎ替えて音を確認している

取材時の主なシステム接続図。スタンダードモデル、スペシャルエディションの合計3モデルを順番につなぎ替えて音を確認している

画像: 和田さんは普段、ネットワークプレーヤー、ルーミン「X1」のデジタル出力をソウルノートのSACD/CDプレーヤー「S-3」の外部USB入力につないでハイレゾ等を再生している。今回はX1とS-3の間にtX-USBultraをつないで、音質がどう変化するかを確認した

和田さんは普段、ネットワークプレーヤー、ルーミン「X1」のデジタル出力をソウルノートのSACD/CDプレーヤー「S-3」の外部USB入力につないでハイレゾ等を再生している。今回はX1とS-3の間にtX-USBultraをつないで、音質がどう変化するかを確認した

 まずはスタンダード仕様のtX-USBultraから。試聴曲はすべて現状システムで一度聴いたあとでtX-USBultraを加え、再度じっくり聴いた印象である。

 山本剛『Misty for Direct Cutting』(176.4kHz/24ビット)は、ダイレクト・カッティング45回転LPの制作時に、同時に別ラインで録音されたもののハイレゾヴァージョン。山本剛らしいガッツがあってピアノのサイズまでわかるスケール感豊かな音だが、tX-USBultraを加えると余韻をたっぷり伴った響きの豊かさが加わりいっそうリアル。

 ジャクソン・ブラウン『Downhill From Everywhere』(96kHz/24ビット)から「A Human Touch」は、女性歌手とのデュエットだが、ジャクソン・ブラウンの歌声と女性の歌声がともに温度感とウェット感を増して、ドライに傾かない瑞々しさとなる。

画像: 今回は和田さんのご自宅リスニングルームにお邪魔して、愛用システムにtX-USBultraを追加したらどうなるかを体験していただいた

今回は和田さんのご自宅リスニングルームにお邪魔して、愛用システムにtX-USBultraを追加したらどうなるかを体験していただいた

 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス弦楽4重奏団『ベートーヴェン:弦楽4重奏曲、ラズモフスキー全曲』(192kHz/24ビット)も、本来の鮮明な録音にチェロのボディ感やソノリティがさらに増した印象だ。教会音楽の『Hodie』はCDリッピング音源だが、本来がきわめて優秀な録音。それがtX-USBultraを加えることで大聖堂の高さ方向の表現(空間感)もいっそう増して、パイプオルガンの超低域の伸びも脅威的となった。

 ここで本機のリアパネルにある赤いスイッチで、USBケーブル内の給電(バスパワー)ラインをカット。これによりS/Nの向上が期待できるが、そのとおり見透しがいっそうよくなってバックグラウンドもさらに静かになった(DACによっては音の出ない場合もあるとのこと。詳細はコラムを参照)。

 次は新登場、tX-USBultraのスペシャルエディションを聴く。スペシャルエディション(SE)は、電磁波シールドeABS-200の追加と、Evoxコンデンサーへの交換が共通した点だが、さらに内部配線材を7NUPOCC銅線とした「SE-C」と、7NUPOCC銀線とした「SE-S」の2モデルが用意される。

マスタークロック SOtM sCLK-OCX10 ¥550,000(税込)
電源ユニット SOtM sPS-500(価格未定、近日発売)

画像: 写真左が電源ユニットのsPS-500で、右がマスタークロックsCLK-OCX10。tX-USBultraにはACアダプターが付属しており、独自のクロックも内蔵しているが、これらを組み合わせることでさらなる音質改善が実現できた

写真左が電源ユニットのsPS-500で、右がマスタークロックsCLK-OCX10。tX-USBultraにはACアダプターが付属しており、独自のクロックも内蔵しているが、これらを組み合わせることでさらなる音質改善が実現できた

画像: sCLK-OCX10(写真右)は最大4台の製品に10MHzのクロック信号を出力可能。今回はSOtMのBNCケーブルを使ってtX-USBultra(写真左)にクロックを供給した

sCLK-OCX10(写真右)は最大4台の製品に10MHzのクロック信号を出力可能。今回はSOtMのBNCケーブルを使ってtX-USBultra(写真左)にクロックを供給した

 tX-USBultra SE-C(銅線仕様)で聴いた山本剛は、ピアノの弦の震えがよりいっそう見えるようになり、ジャクソン・ブラウンは力強さが、それも歌に込められた内面的な力強さ、説得力が増した。ベートーヴェンは4重奏が弱音からフォルテまでよりエモーショナルな表情を見せ、Hodieはレギュラーモデルよりも音がより明瞭な印象となった。総じてどの曲も音に力強さが増した印象となるのが、tX-USBultra SE-Cの特徴である。

 tX-USBultra SE-S(銀線仕様)機では、山本剛のピアノの音色が濡れたように美しく変化し、男性的な力強さが消えるわけではないが、デリカシーに富んだ表現は聴き手を惹きこむ魅力が充分。ジャクソン・ブラウンも2人の歌声から情感が溢れ出す。ベートーヴェンは躍動感ある演奏であり録音だが、さらに入っている情報はすべてそのまま出し切るようなリアルさとなる。

 銀線といってイメージするシルキーさや繊細さだけでない、ダイレクトな音の魅力も失わない点がいい。HodieはtX-USBultra SE-Cに比べてさらに精細で情報量もこの上なしだが、音に眩しさがまったくなく、きわめてスムーズ。パイプオルガンの超低域が空気を震わせる、その空気の震えまでが見えるような透明感と超低音の伸びである。

画像: 左からsCLK-OCX10、tX-USBultra SE-S、sPS-500。単体の試聴で一番印象のよかった銀線仕様にこれらを組み合わせることで、“アナログそのもの”のようなサウンドが体験できた。後のラックに見えるルーミンX1は最近導入されたばかり!

左からsCLK-OCX10、tX-USBultra SE-S、sPS-500。単体の試聴で一番印象のよかった銀線仕様にこれらを組み合わせることで、“アナログそのもの”のようなサウンドが体験できた。後のラックに見えるルーミンX1は最近導入されたばかり!

 次にtX-USBultra SE-Sを残して、外部電源sPS-500を追加する。これは一聴して劇的に変化という感じではなかったが、Hodieはしなやかさを失わずに低域の力感がさらにアップ、山本剛ではベースのランニングがやはり力強くなったことが聴き取れた。

 この状態で、最後に高純度の10MHzクロック信号を生成するマスタークロックジェネレーターsCLK-OCX10を追加。山本剛は、一聴した瞬間その生々しい音にギョッとさせられた。後方で控えめな演奏に徹するドラマーのブラシのリアリティまでが凄い。ピアノやベースの音にも生命感がみなぎる。

 ジャクソン・ブラウンも肩の力を抜いた自然体の歌声で、なおかつ実体感が増している。間奏のラップスティールの音の歪み具合もsCLK-OCX10の追加で、歪んだ音までが生々しくかつ心地よい。ベートーヴェンは鮮明な録音だが、文字通り鮮度が高く明瞭な音。Hodieでは聴く者の魂が大聖堂の屋根のさらに上方まで吸い上げられそうな安らぎの感覚に包まれる。

 ソースにはこういった気配やニュアンスまでがたっぷりと含まれていることを、このsCLK-OCX10は教えてくれた。この音はアナログそのものと言いたい、肌触りよく生理的にもきわめて心地よい音である。

画像: 和田さんの愛用スピーカー、YGアコースティクスの「Hailey 2.2」

和田さんの愛用スピーカー、YGアコースティクスの「Hailey 2.2」

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