全国各地で様々なスタイルで、リン製品を使いながら、オーディオ再生、オーディオビジュアル再生を楽しまれている方々を紹介していく連載企画「リン・サラウンド訪問記」。第10回となる今回は、岐阜県にお住まいのHさん宅を訪ねた。(取材・構成/HiVi編集部・辻)

 Hさんは1971年生まれの52歳。2階建てのご自宅の1階には、135インチスクリーンにリンのSELEKT Edition Hubを中心にしたシアターシステム、2階のプライベートスペースでリン製品を核にした本格オーディオ/オーディオビジュアル再生を楽しまれている。今回の取材は、2階スペースに設置された、通称「LINNルーム」にフォーカスを絞って紹介したい。

 挨拶もそこそこにさっそく2階のスペースに案内していただく。木目と間接照明を活かした美しい設えの空間に、まず目に飛び込んでくるのが、悠然と鎮座するKLIMAX EXAKT 350スピーカー。空間を制するような堂々とした体躯ではあるが、艶やかなグロス仕上げは木目基調の部屋によく馴染んでいる。

 入口の右側には、リンのエレクトロニクス製品が雰囲気たっぷりに造り付けの家具の上にセットされている。ネットワークプレーヤーであり、スピーカーシステムを鳴らすEXAKT(イグザクト)システムの司令塔ヘッドユニットとしての役割も担うKLIMAX SYSTEM HUB/1と、昨年に発表されたリンの創業50周年記念限定のアナログレコードプレーヤーSONDEK LP12-50の本体と、その電源RADIKALである。KLIMAX EXAKT 350は、後継モデルが登場しているが、いずれも英国のリンのフラッグシップグレードの製品で、文字通りの逸品ぞろいである。

 こうした<マスターピース>をどうして選ばれたのであろうか、記者の興味は自然にそこに向くが、まずはHさん自身についてのお話しをうかがってみた。

 「学生のころから音楽や映画は好きで、JBLの4312シリーズのスピーカーと国産メーカーのCDプレーヤーとプリメインアンプを組み合わせて、ハードロックを中心に音楽を楽しんでいました。ですが、オーディオにどっぷりとハマっていたわけではありません。

 20年くらい前だったと思いますが、亡くった父と一緒にNEXTさんのショールームに出かけたんです。父も映画と音楽が結構好きで、1階に少しいいオーディオシステムを入れようかと思って。それがNEXTさんとの出会いです。比較的シンプルな5.1chサラウンドシステムを1階に組んでもらいました」

 1階へのシステムを導入後、そのスペースの仕上がりの良さと丁寧な仕事ぶりからNEXTへの信頼につながり、いまに至る関係を築いた格好だ。それ以後機器を替えると音楽のありようが変わり、表現力が高まることを実感し、オーディオの面白さに開眼したそうだ。

 

主な使用機器

● ディスプレイ:ソニーXRJ-65A90J 
● ヘッドユニット:リンKLIMAX SYSTEM HUB/1
● デジタルクロスオーバー+パワーアンプ:リンAKURATE EXAKTBOX-I
● アナログプレーヤー:リンSONDEK LP12-50 White(URIKA2仕様)
● スピーカーシステム:リンKLIMAX EXAKT 350(L/R、ORGANIK仕様)、CUSTOM 2K 106C(LS/RS)

リンのアンプ内蔵スピーカーシステムKLIMAX EXAKT 350。20Hzの超低域から、可聴帯域を大幅に超える35kHzまでの超ワイドレンジ再生と、本体上部の「3K ARRAY」により、点音源再生の高度な両立を目指す。3000Wもの大出力のパワーアンプと、リンの最高峰DAC「ORGANIC」との合わせ技で、リアルかつナチュラルな音楽再生を追求した「マスターピース」だ

 

スピーカーへの配線は、給電用電源ケーブルとEXAKT LINK用のLANケーブルのみ。リスニングポジションから視覚ノイズにならないように、造り付け家具の切り欠き位置を工夫して配線が巧みに隠蔽されている。経験豊富なインストーラーであるNEXTのワザが光る

 

画像3: リンの〈マスターピース〉、音を磨き上げた逸品への想い
【リン・サラウンド体験記】

KLIMAX EXAKT 350は、アンスズのインシュレーターDarkz T2sを介してセット。「正直半信半疑でしたが、確かに音が大きく向上して、一度聴いたら、もう外せなくなって……」とはHさんの弁

 

 

カタリスト仕様KLIMAX EXAKT 350導入

 この2階のスペースではHさんは、リンのMAJIK DSM/3というアンプと海外製スピーカーを組み合わせていたが、低音の表現力について不満を抱かれてNEXTを訪れたのが約5年前のこと。その時に、店頭にいた勝野陽介さんとHさんが運命的な出逢いを果たす。

 Hさんが抱いた不満に対して、勝野さんが提案したのがリンEXAKTというロスレスデジタル伝送システムの導入だ。EXAKTとは、プレーヤー/アンプから各種信号処理を高精度なデジタル信号のままスピーカーまで送り込み、「音楽家とリスナーをダイレクトに結びつける」というリン独自の伝送方式。当時お使いだった再生システムから抜本的に発想をかえた仕組みだが、Hさんの趣味嗜好、音楽的な好みから意匠デザインへのセンスなどを踏まえて、リンの5ウェイ仕様のトールボーイスピーカーEXAKT AKUBARIKと、それを活かすヘッドユニットAKURATE SYSTEM HUBを提案された。

 NEXTでの試聴のみならず、「EXAKT」というコンセプトの理解と共感も相まって、Hさんは、このEXKATシステムの導入を決めたのであるが、事件は起きた。NEXTに支払いと納品の打ち合わせに赴いたときに、当時のリンの最上級スピーカーだったKLIMAX EXKAT 350のチェリー仕上げの個体と運命の出会いを果たしたのだ。

 「一目惚れというか、完全にグラついて……。なんだかわからなくなったんです。でも、正気を保とう、さすがに即決はしないぞと、一度自宅に戻って冷静になろうと思いましたが、やはりこれだ。清水の舞台から飛び降りるしかないと、翌日、勝野さんに電話で購入しますって注文したんです」と嬉しそうに語る。
 「音は聴いていたんですが、自宅で鳴らしてみて、目の前に音が出てくるように感じられて本当にびっくりしました。ドンってくる。解像度が凄く高いし、音のグレード感というか、スケール感がまったく違う。勝野さんを信じて良かったと(笑)」

画像4: リンの〈マスターピース〉、音を磨き上げた逸品への想い
【リン・サラウンド体験記】

造り付けのラックは、NEXT勝野さんプロデュースのオリジナル品。天面の手前/横面にスリットが入っているが、LP12のスリット入りプリンス(木枠)をモチーフにしたもの。LP12やKLIMAXなどと、デザイン・マッチングが最高だ
 

 

オーガニック仕様KLIMAX EXAKT 350導入

 まだ話は終わらない。きっかけはふたつ。ひとつは清水の舞台から飛び降りるかの如く導入したKLIMAX EXKAT 350に最新DAC技術「オーガニックDAC」仕様が登場し、アップグレードを検討し始めたこと、そして仕上げへの思いだ。

 「チェリー仕上げのKLIMAX EXAKT 350を購入したんですが、本心では艶ありグロス仕上げのほうが部屋に合うかなと思っていたんです。DACのグレードも上がって音も良くなっているし、あ、これって運命かもしれないと導入をエイって決めました」

 と、またまた清水の舞台から飛び降りたHさんは、見事にいい音にハマっていく様を、実に楽しそうに語る。

 成果として新しくなったKLIAMX EXAKT 350の音を「さらにスピーカーから鳴る音が<大きく>なりました。体感で1.5倍!」とにこやかにHさんは表現してくださった。

画像5: リンの〈マスターピース〉、音を磨き上げた逸品への想い
【リン・サラウンド体験記】

サラウンドスピーカーはリンの埋め込み型タイプCUSTOM 2K 106Cで、KLIMAX EXAKT 350と組み合わせて4.0chシステムを構築。サラウンドもAKURATE EXAKTBOX-I(写真下)で、3ウェイマルチアンプ駆動で鳴らしている

 

 

50周年記念アナログプレーヤー LP12-50導入

 ところで、Hさんの2階スペースで記者がもっとも注目した製品は、LP12-50である。本機は本誌前号でもご紹介した通り、リン創業50周年記念モデルとして全世界250台限定で誕生した特別な製品。デザイン協力を元アップルのジョナサン・アイブが担当しているが、本質的には50年に渡って生産し続けられているリン創業の製品であるトラディショナルなLP12に最新テクノロジーを盛り込んだモダーンなアナログプレーヤーだ。Hさんに導入の経緯をうかがおう。

 「僕は実は完全にCD世代。アナログレコードは自分では1枚も持っていなかったし、興味もまったくありませんでした。2年くらい前かな、お店のイベントでジャズ・ヴォーカリスト・ビル・ヘンダーソンの「Send In The Clowns」というライヴのEPレコードを聴かせてもらったんです、とにかく臨場感が凄い。コーヒーカップだと思うんですがカチャカチャという音のリアリティが非常に耳に残ったんです。雰囲気がそのまま録れていて、そのまま再生されている、そんな様子で。あっ、これってデジタルでは感じられない音だと、衝撃でした。そこからアナログレコード再生をしてみたいと憧れていたんです」

 オーガニック仕様のKLIMAX EXAKT 350の導入が決まった際には、ヘッドユニットAKURATE DSMをKLIMAX SYSTEM HUBにリプレイスし、さらに勝野さんプロデュースで家具工房・DOUGU制作の造り付けのラックの導入、65インチ有機ELテレビの壁掛け設置、隠蔽配線工事など、2階のLINNルーム全体の再構築が行なわれた。

 それらに加えて人生初のアナログプレーヤーとしてLP12をHさんは購入したわけだが、数あるLP12のバリエーションの中で、特別な存在かつ超高価なLP12-50をなぜ選ばれたのであろうか。

 「LP12は、MAJIK LP12というエントリーモデルを買っても徐々にグレードアップしていけますよと説明はありましたが、結局これだ、という製品に遠回りしてたどり着くのなら、デザインを含めて決定版にエイって最初から導入してしまえと、またまた清水の舞台から飛び降りました(笑)。限定品だから、欲しいと思ったときは買えない可能性もあるし……」

 LP12-50はナチュラルとホワイトのフィニッシュが用意されているが、Hさんはホワイトをお使いになっている。

 「ラックを含めたトータルコーディネイトの一環でホワイトにすべきと勝野さんが決めてくれました(笑)。実際にインストールされてみたらぴったりで、この選択は大正解。勝野さんに感謝というか。で、レコードの音がこれまた凄いんです」

リンの創業モデルSONDEK LP12アナログプレーヤー誕生50年を記念して、2023年末に全世界250台限定でリリースされたSONDEK LP12-50。ホワイトカラーが美しい。写真右は電源部のRADIKAL。フォノイコライザーアンプはデジタル仕様となるURIKA2で、本体内部に組み込まれている

 

 

夢は広がる

 Hさんは映画や音楽ライヴは主に1階のシアタールームでご家族と楽しんでいるとのことで、2階のスペースでは、レコードとネットワークオーディオ再生がメイン、オーディオビジュアル再生はネット動画や放送を中心にしているそう。

 一通りの完成を果たしたHさんだが、KLIMAX EXAKT 350導入後に発表されたリンの最新フラッグシップスピーカー360 EXAKTにも興味津々だ。記者にも「360ってどうですか?」と質問するくらいだから、いつしかHさんのシステムにまた変化が訪れるかもしれない。リンの<マスターピース>に対するHさんの興味は尽きない。

画像7: リンの〈マスターピース〉、音を磨き上げた逸品への想い
【リン・サラウンド体験記】

Hさんのシステムの心臓部である「KLIMAX SYSTEM HUB/1」。ハイレゾ音楽配信サービスTIDALやLP12-50からのアナログレコード再生が主な再生ソースだが、Apple TV 4Kやソニー製BDレコーダーなども併用、サラウンド再生も楽しまれている

 

 

本記事の掲載は『HiVi 2024年夏号』

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