デノンから、フルサイズのネットワークオーディオプレーヤー「DNP-2000NE」(¥275,000、税込)が発表された。発売は6月中旬の予定。

 DNP-2000NEは、ネットワークオーディオのプラットフォームとしてHEOSを搭載、PCやNASなどのミュージックサーバーや様々な音楽ストリーミングサービス、インターネットラジオ、Bluetooth、USBメモリーなどのデジタル音源を手軽に、高音質に再生できる。またUSB Type-B、同軸/光デジタル入力も備えておりDAC(D/Aコンバーター)としても使用可能だ。ハイレゾ信号は、最大384kHz/32ビットのPCMと11.2MHzまでのDSDに対応する。

画像: 背面には、USB Type-BやLAN端子に加え、ARC対応HDMI入力も備える。2系統設けられたRCAアナログ音声端子のうち、固定出力側には削り出しコネクターが奢られている

背面には、USB Type-BやLAN端子に加え、ARC対応HDMI入力も備える。2系統設けられたRCAアナログ音声端子のうち、固定出力側には削り出しコネクターが奢られている

 また、デノンのHi-Fiオーディオコンポーネントとして初めてARC対応HDMI端子を搭載している。つまり、ARC対応テレビとHDMIケーブル1本で接続するだけでテレビ放送や動画アプリ、BDレコーダーなどの音声をDNP-2000NEで楽しめることになる。HDMIは最大192kHz/24ビットのリニアPCM(2ch)信号を受付可能という。もちろんHDMI CECにも対応済で、電源連動や入力ソースの自動切り替え、テレビのリモコンでのボリュウム調整が可能だ。

 ただし、DNP-2000NEはネットワークプレーヤーなので、テレビの音声を再生するにはアンプと組み合わせる必要がある。DNP-2000NEにはIRコントロール端子も装備されているので、対応のデノン製プリメインアンプなどと組み合わせることで、アンプの電源や入力ソース、音量も連携させることができる。

 なお、DNP-2000NEは固定/可変の音声出力を装備しており、固定出力には通常のプリメインアンプを、可変出力にはパワーアンプやパワーアンプダイレクト入力を備えるプリメインアンプなどに接続すればいい。ちなみにパワーアンプと組み合わせた場合はDNP-2000NEでボリュウム調整を行うが、今回はそのためにデジタルボリュウム回路も搭載されている。

画像: プレミアムシルバー仕上げ。グラファイトシルバー仕上げとは、表示部の色味も異なっている

プレミアムシルバー仕上げ。グラファイトシルバー仕上げとは、表示部の色味も異なっている

 さてDNP-2000NEでは、本体カラーに通常のプレミアムシルバーに加えて、グラファイトシルバーもラインナップされている。グラファイトシルバーはデノンの創業110周年記念モデルで採用された仕上げで、今回は特別にDNP-2000NEに施されたものという。

 というのも、110周年記念モデルの中にはネットワークプレーヤーは含まれていなかった。ワールドワイドでは音楽の聴き方がディスクメディアからネットワーク経由やストリーミングに移行している状況もあるので、プリメインアンプの「PMA-A110」を愛用しているユーザーに向けて、DNP-2000NEを組み合わせてもらいたいという思いも込めているのだろう。入門機や複合機では飽き足りない人に向けた“ちょうどいい”ハイパフォーマンスモデルという位置づけだ。

 D/A変換回路は、110周年記念モデルのSACD/CDプレーヤー「DCD-A110」と同等の回路構成が搭載された。独自のアナログ波形再現技術の最新・最上位バージョンである「Ultra AL32 Processing」と、4基の差動出力型DACを使用したQuad-DAC構成もDCD-A110からそのまま継承している。

画像: Ultra AL32 Processingを含むデジタル処理部(左)。DACチップはESSのES9018K2Mを4基搭載する

Ultra AL32 Processingを含むデジタル処理部(左)。DACチップはESSのES9018K2Mを4基搭載する

 そのUltra AL32 Processingは、入力されたPCMデジタル信号に対して、前世代の2倍にあたる最大1.536MHzへのアップサンプリングと32 ビットへの拡張処理を行っている。これにより、デジタル録音時に失われたデータを高い精度で復元することで、歪みのない繊細な描写、正確な音の定位、豊かな低域など原音に忠実な再生を実現するわけだ。なおDSD信号が入力された場合はUltra AL32 Processingは動作しない。

 DAC回路では上記の通りQuad-DAC構成を採用し、DACチップはESSの「ES9018K2M」を左右チャンネルにそれぞれ2基(4ch)ずつ、合計4基8chぶんを使用している。Ultra AL32 Processingによりアップサンプリングされた1.536MHzの信号を768kHzに分割し、2基の差動電流出力型DACに入力。片チャンネルあたり4chのDACを用いる並列構成により4倍の電流出力を得、6dBに及ぶS/Nの向上とよりエネルギッシュなサウンドを実現している。

 これらのDAC回路の近くにふたつの超低位相雑音クロック発振器(44.1kHz系/48kHz系)を配置し、ここからネットワークモジュールやUltra AL32Processingの処理を行うFPGAにマスタークロックを供給することで、ジッターを徹底的に抑制した。

画像: DNP-2000NEの内部コンストラクション。写真中央下側にアナログ/デジタル用のふたつのトランスが搭載されている

DNP-2000NEの内部コンストラクション。写真中央下側にアナログ/デジタル用のふたつのトランスが搭載されている

 D/Aコンバーターの出力を受けるI/V変換回路もDCD-A110と同様のフルディスクリート構成とし、サウンドマスターによる徹底的なサウンドチューニングが施された。その結果、アナログオーディオ回路内のコンデンサーや抵抗、トランジスターなどのパーツは、最上位SACD/CDプレーヤー「DCD-SX1 LIMITED EDITION」に迫るほどの高音質パーツに変更され、「Vivid & Spacious」なデノンサウンドを実現したという。

 PCやテレビなどのソース機器から音声信号と共に流入するノイズ成分および、自身のデジタルオーディオ回路から発生する高周波ノイズのアナログオーディオ回路への流入を排除するアイソレーション回路も搭載している。このデジタル・アイソレーターによってデジタル回路とアナログ回路の電気的な結合が遮断され、ノイズを含まないクリーンな音声信号のみが伝送される回路構成となっているそうだ。

 回路面での特長としては、アナログ回路基板とデジタル回路基板を電気的に絶縁したアイソレーションデザインとすることで、デジタル回路からのノイズを排除している。電源回路もアナログ/デジタルそれぞれにトランスを設けるという徹底ぶりだ。

画像: 写真左側がシンメトリーにデザインされた音声基板。パターンの長さなども揃えることで、L/Rで音声の均一性を向上させている

写真左側がシンメトリーにデザインされた音声基板。パターンの長さなども揃えることで、L/Rで音声の均一性を向上させている

 DAC基板も同様のコンセプトで設計されており、L/R完全対称とすることで左右の音質の均質化を図っている。開発者いわく、“回路が美しくなければ音は良くない”ということで、その発想を徹底しているわけだ。

 ハイエンドモデル譲りの高音質パーツ&専用カスタムパーツも投入されている。DCD-SX1 LIMITED EDITIONやDCD-A110などの上級機専用だったPPSC-Xコンデンサーをアナログオーディオ出力回路に投入、音質担当エンジニアとサウンドマスターが部品メーカーの協力の下で作り上げてきた独自のカスタムパーツを多数採用している。また、カーボン被膜抵抗やメルフ抵抗、導電性高分子コンデンサーなどの高品位パーツを随所に用いることで、デノンサウンドを実現した。

 これらの高音質パーツを多数採用したことでより入念なノイズ対策も必要になった。デジタルオーディオ回路では電源ラインから流入するノイズを除去するデカップリングコンデンサーを追加し、さらに内部配線用のFFC(フレキシブル・フラットケーブル)への銅テープの追加、ワイヤーの長さや引き回しの最適化、銅メッキ仕様ネジの使用など、徹底したノイズ対策が行われている。

画像: LANやUSB Type-B、HDMI入力を備えたデジタル入力基板は、音声基板の上側に取り付けられている。

LANやUSB Type-B、HDMI入力を備えたデジタル入力基板は、音声基板の上側に取り付けられている。

 デジタル信号への対応は、ネットワーク(LAN)経由では最大192kHz/24ビットのPCM信号と5.6 MHzまでのDSD信号が、USB Type-B端子からは最大384kHz/32ビットのPCM信号と11.2 MHzまでのDSD信号の再生が可能だ。DSDの伝送方式はASIOドライバーによるネイティブ再生とDoP(DSD over PCM Frames)に対応する。またその際にDNP-2000NEの超低位相雑音クロック発振器によって生成されるマスタークロックで制御を行うアシンクロナスモードにも対応している。

 厳選された高性能オペアンプやオーディオグレードのコンデンサー、メルフ抵抗などの高品位なパーツを使用したヘッドフォンアンプも内蔵、ハインピーダンスヘッドフォンでも最適な音量が得られるように3段階のゲイン切り替え機能も搭載した。

 新製品発表会で、DNP-2000NEの音を聴くことができた。組み合わせるアンプは110周年記念モデル「PMA-A110」で、スピーカーはB&Wを使っている。

 まずNASに格納した44.1kHz/16ビット音源を再生すると、力強くかつ伸びやかな音が飛び出してきた。女性ヴォーカルやクラシックなどどれもS/Nが高く、クリーンな音場で再現されている。Ultra AL32 Processingの恩恵か、女声がとてもなめらかで、楽器の細かな情報も聞き取れる。ヴォーカルとバンドの立ち位置もわかるなど、奥行情報を持った音像として描き出されていた。

画像: デノン試聴室でDNP-2000NEのサウンドを体験

デノン試聴室でDNP-2000NEのサウンドを体験

 96kHz/24ビット音源になると音の粒がさらに細かくなり、空間がより密になってくる。弦を指でこするかすかな音まで再現されているのがよくわかる。

 マックブックをつないだUSB DAC再生(再生アプリはAudirvanaを使用)では、2ch再生とは思えないほどの包囲感を楽しめた。ヴォーカルはきちんとセンターに定位しつつ、効果音として付加された雷鳴や雨音は試聴位置左右にまで広がってくる。しかもそれらが混濁しないできちんと描き分けられているのも凄い。

 DNP-2000NEは、ハイレゾの魅力を充分再現するだけの表現力を備えつつ、同時にテレビ音声やストリーミングも高品位に楽しめる、今の時代に最適な “デジタルミュージックハブ” に仕上がっている。オーディオルームからリビングまで、幅広い活躍を期待したい。

「DNP-2000NE」の主なスペック

●接続端子:HDMI(ARC)、USB-A入力(フロント)、USB Type-B、光デジタル入力×2、同軸デジタル入力、アンバランス出力×2(ボリュウム固定/可変)、ヘッドフォン出力、光デジタル出力、同軸デジタル出力、Network、IRコントロール出力
●再生周波数特性:2Hz〜50kHz(-3 dB)、2Hz〜20kHz(±1dB)
●S/N:120dB(可聴帯域)、118dB(可聴帯域)
●ダイナミックレンジ:112dB(可聴帯域)、118dB(可聴帯域)
●ヘッドフォン出力:150mW/32ΩS(ゲイン高)、150mW/32ΩS(ゲイン高)
●Bluetooth対応コーデック:SBC
●消費電力:38W(待機時0.2W、ネットワーク制御オフ)
●寸法/質量:W434×H170×D421mm(アンテナを立てた場合)/9.7kg

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