1月末、パナソニックから録画用BDディスクの生産 “完了” が発表された。同社の録画用BD-RとBD-REの合計36モデルについて、全製品の生産を完了し、後継商品は予定されていないという。エアチェックファンの中にはパナソニック製録画用BDディスクの愛用者も多く、これからどのディスクを使ったらいいのかという “悲鳴” も多く上がっている。そこで今回は、ビデオテープ時代からエアチェック生活を続けている麻倉さんに、最新の録画用BDディスクをチェックしてもらった。(StereoSound ONLINE編集部)

画像: 試聴に使った録画用ディスク。レコーダーのHDDに保存したNHK BS4Kのダビング10コンテンツを、各ディスクに4KDRモードのままで録画している

試聴に使った録画用ディスク。レコーダーのHDDに保存したNHK BS4Kのダビング10コンテンツを、各ディスクに4KDRモードのままで録画している

 今回のパナソニックの発表は本当にショックでした。同社のBDディスクは国内生産だったこともあり、熱心なエアチェックファンから高い信頼を集めていましたからね。実際に今回のことを受けてBDディスクはほとんどが台湾製になってしまいました。とはいえ台湾メーカーも近年は品質管理にかなり力を入れており、品質はかなり向上しています。

 そもそもエアチェックファンが録画用BDディスクを選ぶ場合には、再生した時の画質・音質にどれくらいの違いがあるかが重要です。今回は、編集部が現在発売されているBDディスク5種類を集め、同一コンテンツを記録してくれましたので、それを私のシアタールームで確認しました。

 実際に絵と音を見てみると、どれも録画用ディスクとしてのクォリティはかなり高くなっていることが確認できました。ただし、クォリティといっても、基本的なクォリティと趣味の製品としてのクォリティというものがあります。

 基本的なクォリティ、きちんと録画できているか、画質・音質はキープしているか、フォーマットが要求していることを満たしているかといったことについては、5枚ともまったく問題ありませんでした。

お気に入りを保存するならどれがお薦め?
量販店で売られていた録画用BDディスクを5種類購入しました

 今回は、編集部が都内の量販店で購入してきた録画用BDディスクに、NHK BS4Kの放送番組を記録し、その絵と音を麻倉さんに視聴してもらった。選んだBDディスクは一層式25Gバイトで、BD-Rが4社、BD-REが1社。主に10〜11枚のパックを購入している。それぞれの1枚あたりの購入価格(2月中旬)と対応記録速度は以下の通り。

●BD-R 25Gバイト(いずれも台湾製)
マクセル BRV25WPE.10SBC ¥128/1枚(1−4倍速)
ビクター VBR130RPX10J1 ¥139.7/1枚(1−6倍速)
バーベイタム BVR130RP1V1-B ¥180/1枚(1−6倍速)
ソニー 10BNR1VJPS6 ¥195/1枚(1−6倍速)

●BD-RE 25バイト(日本製・宮城県多賀城)
ソニー 11BNE1VSPS2 ¥183/1枚(1−2倍速)

 一方で趣味性となると、違いが出てきます。放送された番組がそのままのクォリティで録画できるのは当然ですが、実はそこに個々のBDディスクによる方向性があって、その方向性と録画するコンテンツと自分の好みが分かってくると、このディスクを選ぼうといった使い分けができる、それを確信しました。

 最初に申し上げておきますが、今回の5枚のBDディスクをチェックした限りでは、映像には大きな違いはありませんでした。その意味で、映像についてはどのディスクを選んでも充分満足できるでしょう。一方で音にはかなり違いがあり、趣味でのディスク選びでは音質に注目するのがポイントになりそうです。

 ではここから、今回試聴した5種類のBDディスクのインプレッションを紹介したいと思います。なお今回はNHK BS4Kから、『上原ひろみ』のハイテンションな音楽と映像、『ベルリン・フィル』の演奏と豪華な映像、ハリウッドのひとつの頂点とも言える映画『オズの魔法使』、8K撮影されたルーブル美術館から『モナ・リザ』という幅広いジャンルの作品を録画しています(詳細はコラムを参照)。

画像1: パナソニックの録画用BDディスク生産 “完了” で悩んでいるエアチェックファンに贈る! お宝番組を残すべきディスクはどれだ:麻倉怜士のいいもの研究所 レポート90

 まず1枚目はマクセルのBD-R「BRV25WPE.10SBC」です。なお今回のディスクはすべて編集部が量販店で購入したもので、マクセルは10枚セットで¥1,280だったそうです。

 このディスクは、絵も音も標準的というか、バランス指向と感じました。このジャンルに向いているとか、この音が素晴らしいといったことよりも、あらゆる側面に対してバランスがいいまとまりを見せてくれます。

 『上原ひろみ』もピアノのキレがよく、キータッチも力強い。彼女の演奏の特徴である即興性、躍動感、ハイテンションも充分に堪能することができました。8Kで撮影された映像も鑑賞に堪えるもので、映し出される自然の風景や滝の立体感まできちんと出ていました。

 『ベルリン・フィル』では4Kらしい精細感が堪能でき、音ではアンサンブルの綺麗さ、特にヴァイオリンのグロッシーさも感じられました。『オズの魔法使』のテクニカラーならではの豊かな色彩感がしっかり記録され、『モナ・リザ』も調和の取れた画質・音質で、8K撮影の精密さを伝えています。

 まとめると、あらゆるコンテンツを受け止め、バランスのいい描写性で見せる、聴かせるところが、このディスクの最大の特徴だなと思いました。

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 次のビクター「VBR130RPX10J1」は10枚組で¥1,397です。このディスクは、趣味性で個性を発揮していますね。

 『上原ひろみ』は、ピアノの音にリバーブがついていますが、その響きがとても深く、伸びがいい。そもそも上原ひろみさんは本当にテクニシャンで、一音一音がものすごく強いのです。強くて、なおかつキータッチが速い。ビクターのBDディスクで録画すると、音のエネルギー感や躍動感、そして緻密感がとても印象に残りました。

 『ベルリン・フィル』の「チャイコフスキー:組曲第3番ト長調作品55」はとてもカラフルで、躍動感のある楽曲です。その生き生きとした音楽の躍動感、力強さがよく再現されていたと思います。またこの作品はベルリン・フィルハーモニーホールのホワイエで演奏されていますが、こんなところでも、さすがペトレンコとベルリン・フィルは素晴らしい演奏を聴かせてくれる、このBDディスクはそこまでちゃんと再現していたと思います。

 『オズの魔法使』では、ドロシーがオズの国にやってきて、画面がセピアからフルカラーに変化するシーンを見ましたが、画質では色の鮮やかさ、音質ではサラウンドで再現されるコーラスの声、浸透性がよく再現されていました。『モナ・リザ』では、ナレーションの女性の声の感情がしっかり伝わってきました。映像もハイコントラストでヌケがいい。

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 3枚目のバーベイタム「BVR130RP1V1-B」は10枚組で¥1,800とのことです。

 『上原ひろみ』では、全般的にクォリティが高く、バランスがいい画質・音質です。マクセルのBDディスクに近い印象ですが、音の質感や力感、映像の色彩感はより印象的です。『ベルリン・フィル』も音のノリがいい。この曲は途中でティンパニが活躍するのですが、そこのキレがとてもよかったですね。

 『オズの魔法使』では、ドロシーの声の明瞭度も高いし、コーラスが回り込む部分もはっきり、くっきりしています。『モナ・リザ』は、もう少し映像の明瞭度、くっきり感があるとなお良いと思いました。コンテンツとの相性かもしれませんが、細部の明瞭度はさらに観たいですね

 次はソニーの録画用BDディスクです。ソニーでは、BD-Rは台湾で、BD-REは宮城県多賀城で製造しているそうで、BD-REのパッケージには「日本製」と謳われています。そこで今回はBD-RとBD-REを準備してもらい、このふたつの違いも確認しました。

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 BD-Rの「10BNR1VJPS6」は10枚組で¥1,950と、今回視聴した中では一番高価なBDディスクになりました。一方のBD-RE「11BNE1VSPS2」は11枚組¥2,013で、一枚あたり¥183と存外お得です。

 この2枚は、物理的なワイドレンジ感とか音がハイスピードであること、映像の情報量も多く、色が沢山あるといった基本的な要素も備えているし、質感がちゃんと乗ってくるのがポイントになります。

 まずBD-Rでは力強さが印象的です。『上原ひろみ』はひじょうにヌケが良い映像で、白と黒の対比も見事。曲中に花の映像が出てきますが、その精細さ、細かな美の再現性が素晴らしいですね。『ベルリン・フィル』も切れ味がよく、カラフルで色彩感があって、伸びの鋭さもあって、音の魅力に溢れていました。

 『オズの魔法使』もとてもよかったですよ。映像のコントラストが明瞭で、花のテカリ感、反射感も自然に描かれます。また各キャラクターのセリフのニュアンスや、コーラスのカラフルさも素晴らしかった。

 『モナ・リザ』はHDRらしいヌケのよさが印象に残りました。このコンテンツでは絵の具のクラック(ひび割れ)がどこまで緻密に再現されるかも重要ですが、その描写もよかったと思います。ナレーションも、声のクリアーさ、読み手の感情まで再現されていて、作品にのめり込ませてくれます。

画像5: パナソニックの録画用BDディスク生産 “完了” で悩んでいるエアチェックファンに贈る! お宝番組を残すべきディスクはどれだ:麻倉怜士のいいもの研究所 レポート90

 BD-REでは、ひと味違う魅力がありました。それは階調感で、これは絵も音も共通です。

 『上原ひろみ』は8K撮影で、情報量がとても多い番組です。光の情報量はもちろん、ディテイルや色の情報量も多い。そこまでリッチな素材だとハイコントラストに見えがちですが、BD-REで録画したら単にハイコントラストというだけではなく、階調情報がちゃんと埋まっていたのです。

 音も同様で、単にはっきり、くっきり再現するのではなく、自然でありながら、上原さんのテクニックがきちんと出てくる。音の立ち上がり、立ち下がりといった時間軸方向の再現性が高いことも分かります。また音の強弱の再現が分かりやすい。上原さんの演奏では低音がダイナミックに蠢くのですが、その迫力もしっかり再現できていました。

 『ベルリン・フィル』も、階調がなめらかで繊細さもあるし、音が重なる時の強さ、剛性感がよく出てきます。低音感も、ホワイエで演奏しているとは思えないほどの迫力でした。映像も細かい部分まで、色のりがよかったですね。

 『オズの魔法使』も素晴らしかった。映像では色塗りがくっきりして、お花の表面の再現性も際立ちます。ドロシーのセリフに感情がこもっているのもいいですね。悲しい時には素直に悲しみ、驚いた時にはすごくびっくりするという、いかにもドロシーらしいヴィヴットなキャラクター性が感じられました。

 『モナ・リザ』は、映像の階調感、クラックの再現はもちろんですが、特にナレーションの声がよかったですね。ナレーターの女性がセリフに込めた感情がダイレクトに伝わってきて、とても説得力がありました。

画像: 最近の録画用ディスクはホワイトレーベルで、自分でジャケットを書き込む(プリンターで印刷する)ものがほとんどだ。左上のバーベイタムは中央の印刷できないエリアが少し大きかった。その下はビクターのディスクで、こちらはもともと薄く色づけされているのが特長とのこと(5色のバリエーションがあり)

最近の録画用ディスクはホワイトレーベルで、自分でジャケットを書き込む(プリンターで印刷する)ものがほとんどだ。左上のバーベイタムは中央の印刷できないエリアが少し大きかった。その下はビクターのディスクで、こちらはもともと薄く色づけされているのが特長とのこと(5色のバリエーションがあり)

 まとめますと、今回チェックした5枚のBDディスクは、どれも充分以上のクォリティを持っていました。特にわが家の140インチスクリーンに投写した場合でも、これだけのクォリティで再現してくれるのはたいへん立派です。

 では今回の5枚のディスクを使い分ける意味はあるか? これについては“ある”と断言します。

 そもそもHDDに録画したコンテンツをわざわざディスクに残そうというのだから、お気に入りの番組に決まっています。その時に、音楽作品だったら音のいいディスクがいいよとか、ドラマだったらこれがお薦めといった具合に録画用ディスクが選べると、もっと面白いですよね。

 ではなぜ録画するかというと、これはコンテンツに対するコントロール力を誰が持つかということにつながります。今は映像再生でもサブスクリプションサービスが全盛ですが、そこでは今あるコンテンツがいつ見られなくなるかわからない。つまり、人気のない作品はいつの間にかなくなっているかもしれないのです。

 となると絶対見たい作品はディスクに保存して、未来永劫残しておくことが重要です。しかもフィジカルメディアに残して、手に取れる形にするということは、最大の醍醐味です。だからこそ私はVHS、ベータの時代からすべての録画素材を保存しています(笑)。この楽しみは捨てがたい!

アナタが残したいジャンルはどれ?NHK BS4Kから気になる番組を録画してみました

 録画用BDディスクの視聴に相応しい番組ということで、今回はNHK BS4Kから、PR映像や音楽作品、映画、ドキュメンタリーといった4種類のコンテンツを選んでいる。さらにフォーマットについても、映像はSDRとHDR、音声は2chと5.1chと、それぞれの差が分かりやすいような番組をチョイスした。なお録画機はパナソニック「DMR-ZR1」をメインとし、『オズの魔法使』のみ「DMR-4W300」を使っている。録画モードはすべて4KDRだ。

画像6: パナソニックの録画用BDディスク生産 “完了” で悩んでいるエアチェックファンに贈る! お宝番組を残すべきディスクはどれだ:麻倉怜士のいいもの研究所 レポート90

●今回の視聴番組
『4KPR 新しい世界へ〜上原ひろみVer.』(5.1ch/HDR、2023年2月8日放送)
『ベルリン・フィル ヨーロッパコンサート2021』から「チャイコフスキー:組曲第3番ト長調作品55」(5.1ch/SDR、2023年1月4日放送)
『オズの魔法使』(5.1ch/SDR、2021年5月10日放送)
『ルーブル美術館 美の殿堂の500年(1)「レオナルド・ダ・ヴィンチ」』(22.2ch/5.1ch/HDR、2023年2月13日放送)

<試聴時の主なシステム>
●UHS DBプレーヤー:パナソニックDP-UB9000
●プロジェクター:ビクターDLA-Z1
●AVアンプ:マランツAV8805A

 今回のBDディスクは、音楽ものならソニー、アクション映画だったらバーベイタムとビクターで、ドキュメンタリーはマクセルといった使い分けがお薦めです。自分が残したいジャンルはどれかを考えて、うまく使い分けてしましょう。

 なおBD-Rは4〜6倍速ですが、BD-REは2倍速なので、保存時間には違いが出てきます。大量の番組をディスクに残したいという方は、そのあたりにも注意した方がいいでしょう。

 最後に今回の件を受けて、パナソニックにディーガを今後どうしていくのか質問してみました。すると、レコーダーについてはこれまで同様に製品を発売していきますとの返事がありましたし、実際、2月21日に2Kモデルの新製品も発表されました。

 ディーガこそエアチェックファン御用達といって間違いないのですから、「DMR-ZR1」のようなフラッグシップモデルも含めて、しっかりした製品を作り続けてくれることを期待します。さらに言うならばDMR-ZR1のクォリティを持った、アナログ出力搭載のUHD BDプレーヤーがぜひ欲しいです!

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