映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第87回をお送りします。今回取り上げるのは、MCUのフェーズ4の終幕を飾る『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』。その壮大な世界観をぜひ、大スクリーンでご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)
【PICK UP MOVIE】
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』
11月11日(金) 映画館にて公開
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のフェーズ4(第4期)は幕を閉じた。いちおうその題名をメモっておこう。
『ワンダヴィジョン』(2021年1月15日、ディズニープラスで配信。以下同)
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021年3月19日配信)
『ロキ』(2021年6月9日配信)
『ブラック・ウィドウ』(2021年7月9日公開)
『ホワット・イフ...?』(2021年8月11日配信)
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021年9月3日公開)
『エターナルズ』(2021年11月5日公開)
『ホークアイ』(2021年11月24日配信)
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年12月17日公開)
『ムーンナイト』(2022年3月30日配信)
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年5月6日公開)
『ミズ・マーベル』(2022年6月8日配信)
『ソー:ラブ&サンダー』(2022年7月8日公開)
『アイ・アム・グルート』(2022年8月10日配信)
『シー・ハルク:ザ・アトーニー』(2022年8月18日配信)
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022年11月11日公開)
の計16本。これ以外に特別篇として、ホラー・ドラマの『ウェアウルフ・バイ・ナイト』(2022年10月7日配信)と、この10月にDCスタジオの共同会長に就任したジェームズ・ガンがマーベルに残した『ガーディアン・オブ・ギャラクシー/ホリデー・スペシャル』(2022年11月25日配信)がある。
フェーズ5は来年2月17日公開予定の『アントマン&ワスプ:クアントマニア(原題)』からスタートすることになるという。
フェーズ4はコロナの流行で公開の順番が入れ替わったりして、正直スムーズに進んだとは言えないラインアップだった。作品にも凸凹があるし、マルチバースと呼ばれるコミック由来の異なる次元の重なりもまだどう進むかわからないし。
それも含めてフェーズ4は種まきの時期だったのだろう。そう考えると『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で、ひとつの句読点を打つのも納得する。
物語は2025年の春公開予定の集団戦ドラマ『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ(原題)』に向けて盛り上がってゆくのだろう。
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は、母性と女性にまつわる物語だ。主人公だったティ・チャラ王=ブラックパンサー=チャドウィック・ボーズマンが前作を最後に病に倒れて、他界してしまったから。
そのため、残されたラモンダ女王(アンジェラ・バセット)、ティ・チャラの妹シュリ(レティーシャ・ライト)、元親衛隊員のナキア(ルピタ・ニョンゴ)、ドーラ・親衛隊ミラージュの隊長オコエ(ダナイ・グリラ)らの悲しみと迷いが全篇を覆っている。MITに学ぶ天才少女、リリ・ウィリアムズ(アイアンハート)も女性なのだ(彼女のアーマーがかわいいよ)。
もちろんマーティン・フリーマン扮する元CIA捜査官のエヴェレット・ロスも『ブラックパンサー』につづいて顔を見せるし、だいたいメインのお話は海底王国の王とワカンダ国の大戦争なんだが、やはり通奏低音としてティ・チャラの不在が流れている。
それをもう少し削って外界での大冒険を見せてよ、と言いたくなるところもあるけれど、これは好みの問題かもしれない。ラストシーンにはこころにせまる詩情があるのだ。
リアーナが歌う主題歌がとってもいい。黒人、ブラックピープルの肌艶がとても美しく撮られている。なるべく映写状態のいい劇場で楽しむべき一本だろう。
映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』
11月11日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷、グランドシネマサンシャイン池袋、新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー公開
監督:ライアン・クーグラー
出演:レティーシャ・ライト、ダナイ・グリラ、アンジェラ・バセット、ルピタ・ニョンゴ、マーティン・フリーマン、ウィンストン・デューク、テノッチ・ウエルタ、ドミニク・ソーン
音楽:ルドウィグ・ゴランソン
主題歌:リアーナ「LIFE ME UP」
原題:BLACK PANTHER WAKANDA FOREVER
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
2022年/アメリカ/シネマスコープ/161分
(C)Marvel Studios 2022
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