ジョージ・クルーニーとの掛け合いが映える『チケット・トゥ・パラダイス』が公開!
ジュリア・ロバーツ&ジョージ・クルーニー共演の『チケット・トゥ・パラダイス』。2016年に公開されたジョディー・フォスター監督作『マネーモンスター』以来6年ぶりのタッグだけど、新作の設定は「犬猿の仲の元夫婦が、娘の電撃結婚を食い止めようと手を組むロマンチック・コメディ」。となれば『オーシャンズ11&12』(01、04年)で演じた“ワケあり夫婦、再び!”といったほうがわかりも早い。
数々のロマコメ(ロマンティック・コメディ)で技を磨いてきた2人だけに、丁々発止の小競り合いも息ピッタリ。現在ジョージ61歳、ジュリア55歳。面白くて、軽やかで、おまけに交わす視線に艶がある。さすが長年ハリウッドに君臨するスーパースターのオーラは、テッパンだ。
とりわけ、ジュリアの最大チャーム・ポイントである太陽のように明るいガハハ笑いと、エレガントな美しさは健在。これならジョージ扮する元夫の視線も、パイロットの年下恋人がベタ惚れするのも、当然の成り行き。説得力がある。
饒舌なジュリアがブラッド・ピットを圧倒的にリード!
ジュリアへのインタビューは、1回だけ。『ザ・メキシカン』(01年)の日本公開に先駆けて、ロサンゼルスの高級ホテル、ハリウッド・ウィルシャー・ホテル(現ビバリーウィルシャー ア・フォーシーズンズ・ホテル)で行われた。この超高級ホテルは、出世作『プリティ・ウーマン』(90年)の舞台となったゲンのいいホテル。しかも、インタビューは共演者のブラッド・ピットとツーショットで、まさに世紀の美男美女が降臨だ。
この原稿を書く前に、当時の掲載記事をチェックしてみた。それを読んで、時期が微妙だったことを思い出す。ブラッドは前年にジェニファー・アニストンと結婚したばかりで新婚ムードだけど、そのテの質問にげんなり。ジュリアは、『エリン・ブロコビッチ』(00年)でアカデミー賞主演女優賞にノミネート中で、かなりナーバス。それでも、「ハリウッドは狭いから、駆け出しの頃からブラッドとは仲の良い友だち。初めての共演といっても、気心が知れてるからやりやすかったわ」と、聡明にして饒舌なジュリアがインタビューの口火を切って、そのままブラッドをリードする。
『ザ・メキシカン』では伝説の拳銃“メキシカン”に翻弄される恋人たちを演じているのだが、話がふたりの大げんかのシーンに及ぶと、ジュリアの勢いは止まらない。一部再録。
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――アドリブが入っていましたか?
ブラッド「アドリブねぇ……」
ジュリア「あら、入っていたじゃない?」
ブラッド「ちょっとはあったけど、脚本に書かれた台詞が良かったから……」
ジュリア「ええ、歯切れがよくて、独特のリズムがあったわね。私たちはそのリズムを保ちたくて、ものすごい速さのやり取りをしたわよねぇ。私は南部出身なので、世界中の誰よりも速くしゃべれるの」
ブラッド「どういうこと? 僕も南部出身だけどゆっくりしゃべるよ」
ジュリア「いえ、違うわ。もしも、あなたがそこに座ってものすごく早くしゃべったら、なんだか間抜けのように見えるから、やらないだけよ(笑)」
ブラッド「そんなぁ。それじゃ、僕がカッコつけてるみたいじゃないか」
ジュリア「そうよ、そうなのよ(笑)」
――ケンカをしたら、どちらが勝ちます?
ジュリア「そりゃ、口の達者な私に、決まってるじゃない(笑)」
ブラッド「うん、僕は負ける。僕はいつだった女性に負けてばかりだから(笑)」
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……ってな具合で、息ピッタリ。3歳年下のジュリアが圧倒的にリードしているのも、微笑ましいばかりだった。
じつは、当時のジュリアは大物スターにも関わらず来日したことがなく、“日本嫌い?”の噂もあったのだが、その懸念も払拭された。ただし、かつて『フラットライナーズ』(90年)で共演したキーファー・サザーランドとの結婚式を3日前にドタキャンして、ジェイソン・パトリックとアイルランドに“逃避行”。世界中のメディアに追いかけ回されたのをきっかけに、<マスコミ嫌い>になったらしいが。
もっとも、アイルランドから帰国後には、カントリー歌手のライル・ラヴェットと電撃結婚&離婚。その後も多くのスターと浮名を流している。要は、お仕事はしっかりやるけど、プライベートはGoing my wayの強い女性なのだ。
もちろん、あれだけ感性豊かな演技を披露できるのだから、繊細さも持ち合わせている。それが垣間見えたのが、「『エリン・ブロコビッチ』を引き受けたとき、オスカー候補になるほど成功すると思いましたか?」という質問への反応だった。
「そんな話は、いましたくないの! なんだか、声が大きくなっちゃったわね。ごめんなさい(苦笑)。でも、あなたが悪いのよ。ノミネートされたことは嬉しいし、幸せよ。でも、そんなことが予想できるわけ、ないじゃない。だから、そういう質問には驚かされるわ」
はい、おっしゃるとおり! ザワつくことを覚悟で投げた、編集部マスト質問でした。知っての通り、その後にめでたくアカデミー賞主演女優賞を受賞。『プリティ・ウーマン』で“シンデレラ・ガール”と称された10年後、ジュリアはみごとに“ハリウッド・クィーン”となったのだ。
数々の浮名を流したのち、運命の相手と巡り合う
ちなみに、『ザ・メキシカン』のMetacriticでの評価は、100点満点中平均43点。いわば凡作だけど、ジュリアにとっては忘れられない記念作。この作品がきっかけで、2人目の夫ダニー(ダニエル)・モダーと恋に落ちたのだから。
当時も騒動勃発だったなぁ。アカデミー賞授賞式でジュリアを優しくエスコートした恋人、ベンジャミン・ブラットとの婚約が噂されていたはずが、直後にダニーとの関係がバレた。しかも当時の彼には妻がいて、いわば不倫の恋。メディアは“略奪愛”と騒ぎ、ダニーの妻も涙目でコメントしていたっけ……。
結局、彼の離婚が成立した後の2002年に再婚。04年には双子のフィンくんとヘーゼルちゃん、07年に次男のヘイリーくんを出産。なんと、今年、結婚20周年のお祝いをしたと、テレビのインタビューで嬉しそうに語っていた。紆余曲折を経て掴んだ幸せ、心から、おめでとう! を言いたい。
『チケット・トゥ・パラダイス』
11月3日(祝・木)より全国ロードショー
監督:オル・パーカー
出演:ジュリア・ロバーツ/ジョージ・クルーニー/ケイトリン・デヴァー/
マキシム・プティエ/ビリー・ロード/リュカ・ブラヴォー
原題:Ticket to Paradise
2022年/アメリカ/104分
配給:東宝東和
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