スマートホンは、いまや世代、性別、地域の垣根を越えて広く浸透し、コミュニケーションツールとしてのみならず、日々の生活に欠かせないキーデバイスになっています。その傑出した能力は、当然ながら音楽再生の分野でも遺憾なく発揮されています。
ここでは、5月に小社から発行したムック「かんたん、わかりやすい スマホで始めるオーディオ&ネット動画再生読本」の中から、スマホを音楽の再生機として、ハイレゾ音源の醍醐味を体験するための知識、ノウハウ、システムづくりのあり方などを紹介した記事を、順次掲載していきます(全36回を予定)。
今回は、「スマホをオーディオ機器のリモコンにしよう!Spotify Connectとネットワーク再生」というテーマのなかで、ネットワーク再生の種類をご紹介します。
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ここではネットワークを使ったオーディオ再生で使われている3つの方法を紹介していく。
「家庭内ネットワーク」を音楽再生に使う点は共通するが、動作原理や必要な機器、使い勝手などが異なっている。複数、あるいは3つすべての方式に対応している製品も存在している。
❶DLNA、UPnP
ネットワーク再生は、基本的にDLNA(デジタル・リビング・ネットワーク・アライアンス)もしくはそれを元にしたUPnP(ユニバーサル・プラグ・アンド・プレイ)規格に沿った家庭内ネットワークデータ再生の仕組みを、音楽再生に利用したものだ。オーディオ再生に限っていえば、使い勝手の点でやや課題と指摘されるケースもある。
❷OpenHome
OpenHome(オープンホーム)とは、DLNA/UPnP規格をベースに英国リンが独自開発したネットワークオーディオ関係のソフトウェアを元に、他社でも利用できるようにオープンなプラットフォームとして展開させたフォーマット。ユーザー目線に立って、使いやすさを重視した仕組みだ。
❸Roon
「DLNA」「UPnP」「OpenHome」対応機器、あるいは「HEOS」とはまったく異なる発想で作られたのが、Roon(ルーン)と呼ばれるネットワークオーディオ再生手法だ。下図の通り、「アプリ」「コア」「オーディオデバイス」の3要素からなる再生方法で、大きく3つの特徴が挙げられる。①音質の追求、②音楽ライブラリーの画期的活用、③オーディオ機器での採用が増えている。①は、RAAT(Roon Advanced Audio Transport)という独自の伝送方式を採用し高音質を追求。②ではアーティスト、楽曲などの詳細情報を独自に紐づけて再生できる。③は、DLNAやUPnP、OpenHomeなどの方法でネットワークオーディオに対応しようとすると、初期開発ならびに継続的なサポートなどの点で、事業規模が小さいオーディオメーカーにとっては、開発負担はひじょうに大きいのが現実だ。その点、Roonであれば、「Roon対応=Roon Ready」さえすれば、それ以外のソフト対応はほぼ不要となる。そうした点から特に国外メーカーでのRoon対応機器が増えている。ただし有料サービス(月額12.99ドル、年額119.98ドル、永年契約699,99ドル)であること、パソコンで動作させることが多い「コア」を用意する必要があること、初期設定等がやや分かりづらいこと、対応音楽ストリーミングサービスが日本では運営されていないTIDAL、Qobuzだけであること、など現時点では少々マニアックな存在といえそうだ。