スマートホンは、いまや世代、性別、地域の垣根を越えて広く浸透し、コミュニケーションツールとしてのみならず、日々の生活に欠かせないキーデバイスになっています。その傑出した能力は、当然ながら音楽再生の分野でも遺憾なく発揮されています。

ここでは、5月に小社から発行したムック「かんたん、わかりやすい スマホで始めるオーディオ&ネット動画再生読本」の中から、スマホを音楽の再生機として、ハイレゾ音源の醍醐味を体験するための知識、ノウハウ、システムづくりのあり方などを紹介した記事を、順次掲載していきます(全36回を予定)。

今回は、スマホをオーディオ機器のリモコンにしようというテーマのなかで、Spotify Connectとネットワーク再生をご紹介します。

 

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 日頃から使い慣れたスマホに専用アプリをインストールし、それをリモコン代わりに自宅のオーディオ機器を操作して、音楽を楽しむ。スマホ自体は音源を再生する必要がないため、ハイレゾ再生だとしても、当然、ケーブルを接続する必要はなく、再生中に電話やメールに使用しても音楽再生にはまったく問題がない。  

 オーディオファンにとってはまさに理想的とも言える音楽再生の方法だが、現段階でこうした使いこなしが可能なシステムは、Spotify Connectとネットワーク再生に事実上限定される。  

 前者はロッシー圧縮のストリーミングサービスながら、ユーザー数は随一。このため一体型のスピーカーから、AVアンプ、カーオーディオ、さらにはハイエンドメーカーが手がける高級システムと、対応のオーディオ機器も多い。

 後者についてはオーディオマニア向けの高級機が中心になるが、最近はAVアンプやプリメインアンプでも同機能をサポートしたモデルが登場し、人気を集めている。ストリーミングサービスのような音源の制約はほとんどないが、最終的な再生フォーマットはオーディオ機器自体の再生能力やミュージックサーバー(NAS)の制約を受けることになる。もちろんネットワーク再生でもストリーミングサービスに対応している製品もあるが、Apple MusicやAmazon Musicなど日本でロスレスやハイレゾに対応しているサービスをサポートしているモデルは少ない。

 Spotify Connectとネットワーク再生。音源がインターネットサーバーだけにあるのか、家庭内のサーバーにあるのか、という違いはあるが、膨大な楽曲が管理され、快適に再生できるという操作性のイメージはよく似ている。

 

Spotify Connectとネットワーク再生の違いとは

画像: Spotify Connectとは、スマホなどにインストールしたSpotifyアプリから、Spotify Connect対応機器を選び、操作する機能のこと。特徴としては、①快適な操作性、②高音質が挙げられる。①は、Spotifyアプリからは、再生指示を出すだけなので、いったいん指示してしまえば、アプリを停止しても再生は止まらない(AirPlayだとアプリ経由での再生になるので、再生が止まる)。また再生指示の同期も自動的に行なわれるのも使いやすいポイントだ。また②は、Spotify Connect対応機器が直接Spotifyの音楽サービスに接続するため、ロッシー圧縮ながらも高音質が期待できる。Spotify ConnectはSpotifyの有料サービスのみで動作する

Spotify Connectとは、スマホなどにインストールしたSpotifyアプリから、Spotify Connect対応機器を選び、操作する機能のこと。特徴としては、①快適な操作性、②高音質が挙げられる。①は、Spotifyアプリからは、再生指示を出すだけなので、いったいん指示してしまえば、アプリを停止しても再生は止まらない(AirPlayだとアプリ経由での再生になるので、再生が止まる)。また再生指示の同期も自動的に行なわれるのも使いやすいポイントだ。また②は、Spotify Connect対応機器が直接Spotifyの音楽サービスに接続するため、ロッシー圧縮ながらも高音質が期待できる。Spotify ConnectはSpotifyの有料サービスのみで動作する

♡マークの左、緑色になっている箇所が再生指示を出している「Spotify Connect対応機器」を示す

画像: ネットワーク再生の再生イメージ。スマホのような「コントローラー」を使って、データを格納した「サーバー」内の楽曲データを、再生を受け持つ「レンダラー」に再生指示を出す、というのが大まかな考え方だ。家庭内とインターネットサーバーという違いはあるが、Spotify Connectでの再生と操作イメージは共通する。ただし、DLNAやUPnP規格そのままでは操作性が悪く、それを元にして独自機能として開発された「OpenHome」「HEOS」、あるいはまったくの新手法である「Roon」などさまざまな方法が提案されている

ネットワーク再生の再生イメージ。スマホのような「コントローラー」を使って、データを格納した「サーバー」内の楽曲データを、再生を受け持つ「レンダラー」に再生指示を出す、というのが大まかな考え方だ。家庭内とインターネットサーバーという違いはあるが、Spotify Connectでの再生と操作イメージは共通する。ただし、DLNAやUPnP規格そのままでは操作性が悪く、それを元にして独自機能として開発された「OpenHome」「HEOS」、あるいはまったくの新手法である「Roon」などさまざまな方法が提案されている

ネットワークオーディオの先駆者、英国リンが自社開発した「LINN」アプリ。ネットワーク内サーバーのほか、TIDAL、Qobuzなどの音楽サブスクに対応

 

考え方は似ているが使い勝手や音質が異なる

 スマホは良質なハイレゾ音源まで再生する能力を備えているわけだが、同時にタッチ画面による快適な機能性も実現している。後者の特徴を生かし、スマホをオーディオ機器のリモコンにように活用できるのがSpotify Connectとネットワーク再生だ。  

 世界最大の音楽ストリーミングサービスとしてお馴染みのSpotifyが提案しているSpotify Connect。スマホ画面上の専用アプリを操作して、楽曲の選曲やプレイリストの作成、呼び出しなどが可能で、さらに同じ画面上でオーディオ機器の電源オン、音量調整まで行なえるという優れものだ。

 基本的にオーディオ機器側でインターネット上にあるサーバーにアクセスして音源を再生するため、スマホ自体で音源を再生して、オーディオ機器にリアルタイムで送り出すBluetoothやAirPlayとは考え方が異なる。

 CD同等のロスレス音源が配信される見込みの「Spotify HiFi」サービスも、Spotify Connect機器で対応できるのではと噂されるのも、再生機能をスマホではなく、オーディオ機器側が背負っているためである。  

 ちなみにSpotifyは有料、無料の2通りのサービスを展開しているが、Spotify Connectが使えるのは有料のプレミアムプラン限定となる。  

 いっぽうのネットワーク再生は、スマホのような「コントローラー」を使って、同一ネットワーク上にある音源(データ)を格納した「サーバー」(NAS)からデータを読み出す「レンダラー」に再生指示を出すというもの。  

 もともとは映像や静止画まで扱えるDLNAやUPnP規格をベースにしたものだが、そのままでは素早い楽曲の選択、再生や、スムーズな楽曲の切替えなど、オーディオシステムとしての操作性に問題があった。  

 オーディオ機器として洗練された操作性を実現するために、独自機能として開発された「OpenHome」「HEOS」「Roon」などさまざまな方法が提案されている。製品によっては特定の音楽ストリーミングサービスに対応している。

 

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