DSオーディオが蘇らせた光電型フォノカートリッジは、MC型とMM型で占められていたアナログ盤の再生手法に、第3の選択肢と音の新境地を与えてくれた。ここで紹介するDS003は、最高峰グランドマスターを頂点とする光カートリッジ(システム)の第3世代を担う最新製品である。
最も注目すべきは光カートリッジのDS003であろう。グランドマスターと同じ内部構造、すなわち左右独立の光源(赤外線LED)と受光部を継承したことで、チャンネルセパレーションが向上。遮光板も同じくベリリウム製だ。アルミ製カンチレバーにラインコンタクト針を組み合わせた、オーソドックスな振動系である。専用のフォノイコライザーの003は、銅箔と基板の厚みが増して低域減衰を4パターンから選べるよう進化。外観はグランドマスターのそれを小型化したイメージである。
本誌リファレンスのシステムで聴いたDS003は、MM型やMC型の電磁式とは明らかに趣の異なる、艶やかな音のスムーズさが印象的。振動系の軽さも貢献しているのは間違いなく、ローエンドまで深々と伸びた雄大な音が特徴だ。遮光板が従来のアルミ製からベリリウム製に変わったことで、情報量も飛躍的に増えている。圧倒的だったのはゲルギエフ指揮「春の祭典」の再生音。芯があり押しの強い打楽器の響きと、臨場感溢れるオーケストラの演奏は生気に満ちており、光電型カートリッジの魅力が存分に発揮された。