32 inch Full HD Smart TV Debut!
32インチの2KテレビにAndroid TV OSを搭載。多彩な動画配信サービスを個室で手軽に楽しめるテレビとして登場したTCLの32S515がモデルチェンジした。新モデルは32S5200A。Android TV OS搭載などの基本的な特徴はそのままに、液晶パネルがフルHD解像度(水平1920 × 垂直1080画素)となった。
他社の32インチの薄型テレビはほとんどが1366×768などのワイドXGA解像度なので、大きなアドバンテージと言える進化だ。
今や各社ともにあまり力を注いでいない印象の小型2Kテレビだが、コロナ禍の影響で事情は大きく変わったようだ。巣ごもり需要の伸びで、個室で使えるパーソナル用小型テレビの需要も高まり、同じく勢いを増している動画配信サービスにも対応となれば売れないわけがない。個室に置く小型サイズの薄型テレビなら4Kの高解像度は必須ではないし、安価な2Kテレビなので買い増ししやすいことも拍車をかけたと思う。32S5200Aはそこに注目して投入されたモデルと言えよう。
LCD Display
TCL 32S5200A
オープン価格(実勢価格3万6000円前後)
● 問合せ先:(株)TCLジャパンエレクトロニクス TEL 0120-955-517
Specification
● 型式:液晶ディスプレイ
● 搭載パネル:VA液晶
● パネル解像度:水平1920×垂直1080画素
● バックライト:直下型LED
● チューナー:地上デジタル2系統、BSデジタル/CS110度デジタル2系統
● 接続端子:HDMI入力2系統(1系統ARC対応)ほか
● HDR対応:HDR10、HLG
● サウンドシステム:ドルビーオーディオ対応
● 備考:Android TV OS搭載/Chromecast、Google Assistant対応
● 寸法/質量:W731×H491×D186mm/4.4kg
直下型LEDバックライト採用。HDR10とHLGにも対応する
今回はS515とS5200Aの両方をお借りし、比較視聴をしながら新モデルの進化点を見ていく。まずはスペックを確認。内蔵チューナーは地上デジタル×2、BS/110度CSデジタル×2。外付けHDDを追加しての録画機能も備える。内蔵スピーカーはドルビーオーディオ対応で、5.1ch信号のデコードにも対応する(ステレオ再生)。Android TV OS搭載を含めて、HDMI入力は2系統で基本的な機能や装備は変わらない。
高画質技術についても、直下型LEDバックライトの採用、映像信号を細かく分割したゾーンごとに解析して明暗の再現性を高める独自技術「マイクロディミング」の搭載も共通だ。注目したいのは、HDMI入力時にHDR10/HLG(1080pのみ対応)に対応すること。S515もHDR10信号には対応していたが、S5200AはHLG信号にも対応する。4K放送チューナー 東芝TT4K100で試してみると、テレビ側では表示はないが、チューナー側ではHLG信号を出力しており、画質的にもHDRであることが確認できた。
2KテレビでHDRというと、掟破りのような感じもあるが、PCやゲーム機では当たり前のこと。PS4やPS5でもテレビが対応していれば2K&HDR出力が可能だ。動画配信サービスでも増えてきているHDRコンテンツを楽しめるのは大きなメリットと言っていい。
地デジ、BSデジタル放送は低ノイズで見やすさが光る
では、肝心のフルHDパネル採用の画質を観てみよう。まずは地デジ放送を観たが、ニュースや情報番組で表示されるテロップの斜め線がすっきりとしている。S515では解像度が足りないせいか斜め線がギザギザになっているのがわかる。視聴では確認できなかったが、アニメの輪郭線などの再現でも差が出そうだ。
続いてBSデジタル(2K)放送のドラマを観た。画質モードは「標準」としたが、ノイズをよく抑えた見やすい画質だ。黒浮きはあるが、黒の締まり感やコントラストは良好でHDR対応のポテンシャルの高さを感じる。視野角による影響は少し目立つがパーソナル用途ならばそれほど影響はない。やや色は濃いめで特に赤の原色が強めに出る傾向があるが、肌の色は血色がよく、不自然さは少ない。気になる場合は画質調整で色の濃淡を抑えて、好みに調整するといいだろう。
4K放送は東芝のチューナー経由でドラマや映画を観たが、精細感の低下もあまり感じず、HDRらしい陰影の豊かな映像を楽しめた。明るい場面ではやや色味が濃く感じるのは地デジと同じ印象だ。
昨年リリースされ高い人気を博した32S515の後継機32S5200Aの最大の特徴は、水平1,920×垂直1,080画素のフルHDパネルを搭載したこと。バックライトは直下型LEDを組み合わせている
直下型LEDバックライト仕様なので、極薄というわけではないが、デザインはシンプルさが貫かれている印象だ
ネットフリックス再生ではフルHDパネルの利点を実感
テレビ内蔵アプリでネットフリックスを観た。音声はきちんと5.1ch音声だ(対応作品のみ)。そして、HDRについては内蔵アプリでは非対応。残念ながらすべてSDR表示となるが、これは一般的な2Kテレビと同じ挙動だ。なお、画質モードにはSDRコンテンツをHDRに近い高輝度で再現する「スマートHDR」というモードがあり、これを選ぶと、コントラスト感が増す。暗部がやや明るくなりすぎるなど、コンテンツによる相性はあるが、好みで使うといいだろう。
天才的なチェスの打ち手である少女を描いた『クイーンズ・ギャンビット』を観たが、椅子に置かれたクッションの模様やチェスの駒など、細かな部分まですっきりと再現した。チェス盤に向かう少女にピントを合わせたクローズアップでは、くっきりとした輪郭とフォーカスの外れた背景のボケ味の対比がきれいに出て、美しい映像を充分に楽しめた。S515と比べると精細感や映像の奥行感が明らかに違う。4Kテレビと比べると差はあるが、フルHDパネルのメリットはしっかりと感じられた。
アニメで巨大ロボットと怪獣のバトルを描く『パシフィック・リム:暗黒大陸』では、CGで描かれたコックピット内の表示もつぶれることなく描き、やや濃いめの色調はアニメとはなかなか相性がいい。アメコミ調のトーンのアニメーション作品ということもあり、見応えがある。また、アニメで目立ちやすい階調の変化が縞模様のようになることもよく抑えられている。フルHD解像度というだけでなく、液晶パネルの基本的な性能も優秀だとわかる。
内蔵スピーカーの音は、インビジブルタイプながらも音がこもるようなことはなく、声もはっきりと聴きやすい。S515と比べても音の広がりもスムーズでなかなか良好。映画となると低音の伸びや迫力が物足りないと感じたくらいだ。5.1ch音声はバーチャルサラウンド機能を使うと音の広がりが豊かになり、後方への音の周り込みもなかなか。音の明瞭度はやや下がるが、アクション映画などマッチするかなり楽しい音だ。
サウンドシステムはドルビーオーディオ対応仕様。サウンドバースタイルで、合計10W出力のアンプで駆動される
電源以外の接続端子は画面に向かって右側面にまとめられている。HDMI入力は、2系統の装備で1080pのHDR信号にも対応する。ARC(オーディオ・リターン・チャンネル)は、HDMI1が対応している。無線LAN機能も備わり利便性も高い
『パシフィック・リム:暗黒の大陸』
Netflixオリジナルアニメシリーズ『パシフィック・リム:暗黒の大陸』Netflixにて、全世界独占配信中
外部機器経由でHDR再生。暗部階調のよさを再現する
今度はパナソニックのUHDブルーレイプレーヤーDP-UB9000を使って、HDMI接続でUHDブルーレイを観てみた。画質モードは「動画」で色の濃淡を少し抑え、暗いシーンでやや赤みが強いので色温度は「標準」。『TENET テネット』冒頭のキエフのオペラハウスの襲撃場面を観たが、ダウンコンバートによる2K表示とはいえ、精細感の高さはよくわかる。テレビ側の表示ではHDR10となるが、プレーヤー側の表示はSDR出力だったので、詳しく確認したところ、どうやらその表示がおかしいだけで映像はHDR出力となっている。メーカーに問い合わせたところ、パナソニックのDP-UB45との連携だと問題ないようなので、機種による相性があるようだ。HDRの映像は暗部の階調性のよさや眩しい光も再現できている。オーケストラの楽団員が調律する描写も鮮明だし、周囲の客席の様子も見通しがいい。
同じくUHDブルーレイの『ガメラ 大怪獣空中決戦』も同様で、きちんとHDRらしさが得られる。冒頭の暗い会場の場面や、夜の福岡ドームに迫るガメラなど、海面や夜空で黒浮きは少々あるものの、コントラスト感はしっかりとしている。ガメラの濡れたような外皮の感触もよくわかる。
このほか、HDMI入力では、Amazon Fire TV Stickを使えばネットフリックスもHDR画質で表示できる。Apple TV 4KでもHDR画質で楽しめた。
32インチは今や小型サイズのテレビだが、フルHD解像度で見てみると緻密でなかなか魅力のある映像だと感じた。画質/音質の向上で魅力はさらに増している。