「Soul Of the Music」を社名に戴いた韓国のSOtMは、PC・ネットワークオーディオ分野で、川上のデバイスから川下のセットまでの幅広いレンジで、優れた製品を世に送り出している、ネットワークオーディオの専門メーカーだ。PCオーディオの初期から高音質を旗印に開発に邁進してきた。

 オーディオグレードのUSBインターフェイスカード、内蔵ストレージからのノイズを低減させるSATAノイズフィルター、空冷ファンノイズを低減させるファン用ノイズフィルター、オーディオ用電源……などの音質向上デバイスは業界での評価がたいへん高く、数多くの世界のネットワークオーディオ製品に組み込まれている。

Roon Server対応ミュージックサーバー
SOtM sMS-1000SQ Eunhasu
¥500,000(税別、USB出力モデル)
¥550,000(税別、デジタル出力モデルまたはアナログ出力モデル)

画像1: SOtMの「sMS-1000SQ Eunhasu」は、今もっとも注目すべきネットワークプレーヤーである。再生環境を整えることで、聴ける音が着実に向上した

●使用OS:Linux(Eunhasu OS)
●利用可能なオーディオ再生ソフトウェア:RoonServer(Roon Ready)、TIDAL、Qubuz、Minim Server、DLNA(Open Home)、Logitech Media Server(LMS)、Squeezelite、HQplayer Network Audio Adapter、Shairport
●基本ストレージ:64GバイトSSD
●拡張ストレージ:最大8TバイトHDD または2TバイトSSD
●接続端子:Audio grade USB 3.0port(tX-USBexp)、External power input jack、USB power on/off switch、USB audio class 2.0 support
※デジタル出力モデルは上記にAES/EBU、Coaxial、Optical出力を追加。アナログ出力モデルはバランス、アンバランス出力を追加
●寸法/質量:W360×H68×D240mm/4kg

画像2: SOtMの「sMS-1000SQ Eunhasu」は、今もっとも注目すべきネットワークプレーヤーである。再生環境を整えることで、聴ける音が着実に向上した

※オプション(価格はすべて税別)
●SSD交換:2Tバイト¥55,000、4Tバイト¥75,000
●HDD追加:2Tバイト¥18,000、4Tバイト¥25,000
●マスタークロック入力機能追加:USB出力モデル¥120,000、デジタル出力/アナログ出力モデル¥150,000
●リッピングドライブ追加¥30,000

 SOtMはセットも作る。それらの高品位部品、回路、システムを搭載した自社製のネットワークサーバー、ネットワークトランスポート、さらにはUSB DACも展開。このようにSOtMはひじょうに高い技術力、オーディオセンスを持ち、世界的にネットワーク・オーディオを牽引する先進メーカーなのだ。

 そのSOtMが開発した最新のネットワーク・トランスポート&ミュージックサーバーが「sMS-1000SQ Eunhasu」(ウナス)。ルーンサーバー、TIDAL、Qubuz、Minim Server、DLNA(Open Home)、Logitech Media Server(LMS)……などの各種サービス対応のソフトウェアがデフォルトで内蔵されており、容易に接続、アクティベイトできる。

 さらにHDD、もしくはSSDの内蔵や外部のストレージ、USBメモリーなどからUSB出力、もしくはデジタル出力で外部DACと接続して、再生可能だ。本体にはUSB電源をオフするスイッチを持つ。しかも興味深いことに、SOtMの自慢の高音質化デバイスを組み込んだ周辺機器がいくつも、用意されている。

画像: 機器の接続を変えながら、細かな音質の変化をじっくりチェックする麻倉さん

機器の接続を変えながら、細かな音質の変化をじっくりチェックする麻倉さん

 ひとつがマスタークロックを供給するクロックジェネレーター「sCLK-OCX10」。オーブンにより温度を一定に保つことで振動数を安定させるOCX(oven-controlled crystal oscillator=恒温槽型水晶発振器)方式を採用し、一般的な矩形信号ではなく、より正確な正弦波にて高精度な10MHzクロック信号を生成する。4つの出力を持ち、BNCコネクターにて、4台の機器に同時にクロックを送れる。

 USBリジェネレーター「tX-USBultra」はUSB DACに送るUSB信号をリファインする機器。業界で多くのデジタル製品に組み込まれているクロックモジュール「sCLK-EX」を用いて、入力したUSB信号のクロックを入れ替え、さらにUSB電源をオフする。電源は超低ノイズのリニア回路で構成されている。さらにクロック精度が高いsCLK-OCX10用のBNC入力端子も持つ。これらの措置により、PCやサーバーから生成されたノイズを効果的に除去する。

 まずsMS-1000SQ Eunhasuの基本音質はどうか、次にオプションを加えた効用はどれほどのものかを、順番に試聴する。今回はStereoSound ONLINE試聴室の常設機材で再生した。全容は以下の写真・接続図を参照していただくとして、テスト機に直接関連するのはミュージックサーバーのデラ「N-157A」、スイッチングハブSOtM「sNH-10G」、USBリジェネレーター「tX-USBultra」だ。

画像3: SOtMの「sMS-1000SQ Eunhasu」は、今もっとも注目すべきネットワークプレーヤーである。再生環境を整えることで、聴ける音が着実に向上した
画像4: SOtMの「sMS-1000SQ Eunhasu」は、今もっとも注目すべきネットワークプレーヤーである。再生環境を整えることで、聴ける音が着実に向上した

 試聴はsMS-1000SQ Eunhasu本体の素の音(オプションをつながない、USB電源もオン)から始めた。試聴音源はUAレコード合同会社の『情家みえ/エトレーヌ』から「チーク・トウ・チーク」(192kHz/24ビット/FLAC)だ。ヴォーカルの情家みえとピアノの山本剛の音楽がどのように聴けるか。オーディオ的な観点に加え、音楽的な観点からも、音の変化を聴く。

 冒頭にSOtMはファイルオーディオの経験がひじょうに長いと記したが、その経験と技術力はさすがのものだと納得させられる、堂々とした水準の音を聴かせた。しなやかでウォームで耳触りのいいサウンドだ。山本のピアノはしっとりとした味わい。ベースは雄大で、スケール感はたっぷりとしている。

 情家みえのヴォーカルは、潤いと優しさが聴けた。少しメタリックな質感もあった。ヴォーカル、ピアノ、ベース、ドラムスの音像位置は、ミックスダウンで決めた場所をきちんとキープしていた。基調としてクォリティは高い。欲を言えば、音のフォーカス感、切れ味、粒立ちの細やかさ、透明感、躍動感……が加わると、さらに完成度が上がると聴いた。

画像: 「sMS-1000SQ Eunhasu」の端子部。音楽信号の出力用には写真右上「AUDIO USB PORT」と書かれた端子を私用する。その左横にあるのがUSB端子の電源オン/オフスイッチで、これを「OFF」側にするとUSB信号の電源を供給しなくなる

「sMS-1000SQ Eunhasu」の端子部。音楽信号の出力用には写真右上「AUDIO USB PORT」と書かれた端子を私用する。その左横にあるのがUSB端子の電源オン/オフスイッチで、これを「OFF」側にするとUSB信号の電源を供給しなくなる

 仕掛けの第一は本体裏面のUSBキルスイッチだ。アキュフェーズのDAC「DP-950」と結ぶUSBケーブル信号の中には電源線があり、相手に電源を供給している。電源を持たないスレーブ機器を動かすためだが、オーディオ使用では、相手の機器も電源を持っているわけで、不要であるばかりか、ノイズ源でもある。市販のオーディオ用USBケーブルには、電源用にケーブルを分けているものもあるが、それとてUSB電源そのものは流れている。だから、sMS-1000SQ EunhasのUSB電源オフ機能は大いに期待が持てるのだ。

 リアパネルの青いスライドスイッチをオフの位置にセット。出てきた音は……、さきほどの基本音とは格段に違う音だった。冒頭の山本のピアノの音がよりしなやかに、深みを帯びた。ベースもスケールを増した。もっとも異なるのがヴォーカルの再現。音像的な実体感が加わり、イメージングが明瞭方向に。ボディの輪郭感、その内実のキメ感、粒立ち感などもよくなった。

 音場の透明感、空気感、グラデーション感も、オン時より明らかに上回る。さすがにUSB電源を切った効能は顕らかだ。本機の使用に当たっては、常に本スイッチをオフにするのが望ましい。もちろんスイッチなのだから、オン/オフ効果を愛でるというマニアックな使い方もできる。

 ではいよいよ、SOtMのノウハウがたっぷり詰め込まれている、オプション製品をひとつずつ使って、その効用を個々に確認しよう。まずクロックジェネレーター、sCLK-OCX10をsMS-1000SQ Eunhasにつなぐ。その音は、私がよく使う言語表現を使うと「刮目」だった(音なのだから刮耳か?)。

マスタークロック
SOtM sCLK-OCX10 ¥500,000(税別)
●出力クロック信号周波数:10.000MHz正弦波
●出力クロック信号出力レベル:13dBm(2.825Vp-p@50Ω)、±2dBm
●出力コネクター:50ΩBNC コネクター×4 ※オプションで75ΩBNCコネクター対応可能
●寸法/質量:W106×H48×D245mm/1.5kg

BNCデジタルケーブル
SOtM dCBL-BNC50 ¥52,500(1m、50Ω、税別)

画像: 写真右がマスタークロック「sCLK-OCX10」で、左がsCLK-OCX10と「sMS-1000SQ Eunhasu」や「sNH-10G」との接続に使ったBNCケーブルの「dCBL-BNC50」

写真右がマスタークロック「sCLK-OCX10」で、左がsCLK-OCX10と「sMS-1000SQ Eunhasu」や「sNH-10G」との接続に使ったBNCケーブルの「dCBL-BNC50」

 さきほどのUSB電源オフで向上した地平をさらに押し上げた。まず透明感が圧倒的に向上し、フォーカスが鋭くなった。このことは山本の第一音ですぐに聴き取れた。「チーク・トウ・チーク」はへ長調だ。ピアノはトニックのFから始まり、F Dm Gm C7と定番のコード進行で進む。この演奏では、F和音の第一音が軽い装飾音から始まる。その微細な弱起的な音からして、ひじょうにクリアーになった。

 ヴォーカルも凄く違う。まず音像イメージが明確になった。エッジが立ち、ボディが立体的になる。さらに、表情により細やかな抑揚と感情が加わった。情家みえの美質である、音が消えゆく際の感情を込める部分が、より美しく、濃密になった。高密度であるだけでなく、透明度も格段に高いから、歌詞が持つ意味合いがより的確に再生された。

 次にスイッチングハブsNH-10Gにもこの高精度クロックを供給してみよう。これも驚きだ。特に質感の部分が格段に向上した。それも単純に綺麗なるというより、透明感と濃密感と緻密さが同時に上がると言った方が正確だ。音楽の味わいが深くなると同時に、音場のクリアネスも上がり、見通しがすっきりとした。つまりこってりさと透明感が同時に得られるという音楽的にもとても興味深い音が、スイッチングハブのクロック精度向上で得られたのである。情家みえのヴィブラートはより明瞭になり、ベースの弾力感も心地好い。

USBリジェネレーター
SOtM  tX-USBkltra
¥180,000(マスタークロック入力機能モデル、税別)、¥150,000(税別)
●USBホストインターフェース:Type-B
●USB出力ポート:Type-A×2 ※USB電源オンオフスイッチあり
●USBインターフェースチップセット:USB2.0準拠ハブコントローラー、HS(480 Mbps)、FS(12 Mbps)、LS(1.5 Mbps)サポート
●内部レファレンスクロック:sCLK-EX12ボード
●外部マスタークロック(オプション):入力周波数10MHz、アイソレートクロックインプット、50Ω BNCコネクター×1
●寸法/質量:W106×H48×D227mm/1.5kg

画像: USB出力機器と、USB DACの間に挟むことで音質を改善するのがUSBリジェネレーターだ。PCやミュージックサーバーから生成されたノイズを効果的に除去し、内蔵の高性能クロックによって純粋なUSBオーディオ信号のみを再配置してから、オーディオデバイスに受け渡すことで、サウンドを元の録音に近い状態に戻るという

USB出力機器と、USB DACの間に挟むことで音質を改善するのがUSBリジェネレーターだ。PCやミュージックサーバーから生成されたノイズを効果的に除去し、内蔵の高性能クロックによって純粋なUSBオーディオ信号のみを再配置してから、オーディオデバイスに受け渡すことで、サウンドを元の録音に近い状態に戻るという

USBケーブル
SOtM dCBL-UF-CP ¥140,000(1m、UPOCC銅線、USB給電ライン有、税別)

画像5: SOtMの「sMS-1000SQ Eunhasu」は、今もっとも注目すべきネットワークプレーヤーである。再生環境を整えることで、聴ける音が着実に向上した

 ではいよいよ最終的なトリートメント、USBリジェネレーターtX-USBultraだ。これまでも段階的によくなってきたが、やはり横綱はこれだと思わせてくれる、抜群の音場解像度と音楽表現になった。ヴォーカル、ピアノ、ベース、ドラムスの位置がなるほどここだったのかと初めて分かるほどの、きわめて精確な音像イメージだ。輪郭がひじょうに明瞭になり、鋭いフォーカスも与えられた。イメージの明確化には、音場透明度がさらに上がったことも、好影響を与えていよう。

 質感も素晴らしい。単に柔らかい、強い……という次元を遙かに超え、まるでライブ演奏を眼前で聴いているような「柔らかくて芯がある。強い剛性感と同時に表面がしなやか」という生々しい質感に包まれる。ヴォーカルの感情的なニュアンス、ピアノの立ちが鋭く、時間的に音と音のつながりが、たいへんスムーズだ。

 さきほどスイッチングハブに外部クロックを導入した時に、「こってりさと透明感が同時に得られる」と書いたが、そのレベルが半端じゃない。音楽的に濃密にして、音場の向こうが見えるほど透明度が高く、音の粒立ちがひじょうに細やかなのだ。まさに「Soul Of the Music」を社名にいただく矜持が聴けたのである。

画像6: SOtMの「sMS-1000SQ Eunhasu」は、今もっとも注目すべきネットワークプレーヤーである。再生環境を整えることで、聴ける音が着実に向上した

 ここまでは比較として『情家みえ/エトレーヌ』の「チーク・トウ・チーク」一曲で聴き通してきたが、他分野のハイレゾ音源も聴いてみよう。アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団『ベートーヴェン第7交響曲』(192kHz/24ビット/FLAC)。古いアナログ録音だが、進行のスムーズさ、音場への音の粒子の飛翔感、そして音像のフォーカス感……など刮目と聴いた。

 松田聖子『瞳はダイアモンド』(96kHz/24ビット/FLAC)は、この歌手の感情表現の深さ、類い希なる表現力がひしひしと伝わってくる。語尾のヴィブラート、しゃくりなどに込められた気持ちの濃密さの表現が、これほどのものであるとは。ベースの切れ込み、楽器の輪郭のタイトさ、楽器の左右の拡がり……と、質感と音場、音像感の精妙さは、ハイレゾ再生でもなかなか聴けないレベルのものだ。

 sMS-1000SQ Eunhasは、基本性能の高さと、追加機器による音質向上カーブの急峻さから、今、もっとも注目すべきネットワークオーディオプレーヤーといえよう。

画像: 「sMS-1000SQ Eunhasu」の各種設定は、PCのブラウザからネットワーク経由で行う仕組みだ。写真のメインメニューからルーンサーバーやネットワークプレーヤーなどの機能を選び、アクティベートするとそれらが使えるようになる

「sMS-1000SQ Eunhasu」の各種設定は、PCのブラウザからネットワーク経由で行う仕組みだ。写真のメインメニューからルーンサーバーやネットワークプレーヤーなどの機能を選び、アクティベートするとそれらが使えるようになる

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