映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第49回をお送りします。今回取り上げるのは、人気ヒロインが大活躍する『ワンダーウーマン 1984』。時代はいきなり80年代となり、エンタメ界や経済界が大盛況を迎えるあの喧騒の中で、彼女が大暴れ!? 新たなコスチュームに身を包んだ煌びやかな姿など、見どころもたくさん。とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)
【PICK UP MOVIE】
『ワンダーウーマン 1984』
12月18日(金)より全国ロードショー
『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016年)で初登場し、なんかウジウジしている主役のふたりよりダイナマイトでカッコいいやんけ、と注目されたワンダーウーマン。両腕のガントレットをクロスさせて敵の攻撃を跳ね返し、真実の投げ縄を操って攻守を一瞬で入れ替える。
当初は登板にあった危惧の声を、大ヒットという事実でパティ・ジェンキンスが跳ね飛ばし、その後の『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』や『ムーラン』、近日公開の『ブラック・ウィドウ』や製作中の『エターナルズ』など、エンタメ大作への女性監督起用の口火を切った。
コロナ禍の時代でも前に出る! 映画館を元気にする! 主演ガル・ガトット。演出ジェンキンスによる人気シリーズの第2弾。
ワンダーウーマン=ダイアナの初恋のひと、スティーヴ(クリス・パイン)が再登場することまでは言ってもいいかな。そのため今回のダイアナには乙女が入ってしまい、背景に『ゴースト/ニューヨークの幻』の名曲「アンチェインド・メロディ」が流れる気配にもなっている。
しようがないのだ。彼女は前作の第二次大戦の最中から今回の舞台になる1984年までひとりで生きてきたのだから。現在はワシントンD.C.のスミソニアン博物館で、考古学研究員として働いているダイアナ。そんな彼女の前に欲望と嫉妬の化身のようなヴィランたちが現れる。
その狂騒のためバブル景気に向かう1984年が選ばれたのだろう。冒頭少しで登場するのは、カラフルな装飾のショッピング・モールでの大アクション。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の即席スケートボードに乗ったマーティ(マイケル・J・フォックス)が走り抜けていてもおかしくないポップな世界だ。
スティーヴが当時の人気ドラマ「マイアミ・バイス」のドン・ジョンソンみたいな、いまやダサい着こなしをしたり、街角のブレイクダンスに驚いたりというカルチャー・ギャップのギャグを挟んで、クライマックスは陸海空で繰り広げられるダイナミックな戦いに突入する。アマゾンの最強兵士アステリア由来の黄金の鎧ゴールドアーマーに身を包んだワンダーウーマンの晴れ姿! これまでは大跳躍するだけだったが、今回は飛行能力まで身につけている。
鬼に金棒。彼女とマーベル・コミックスのキャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)が居ればどんなラスボスが現れても大丈夫なのではないか。今回も強すぎてスリルがいまいち盛り上がらないところもあるくらい。それが痛快さにもなっている。
雲海の上に立ち、空のかなたに飛び去ってゆくワンダーウーマン。幕切れの風景はいまの季節に合ったものだ。何度か上映延期を余儀なくされた作品だから、追加撮影が添えられたのかもしれない。いいアクセントになっている。
『ワンダーウーマン 1984』
12月18日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、グランドシネマサンシャインほかにて全国ロードショー
監督:パティ・ジェンキンス
出演:ガル・ガトット、クリステン・ウィグ、クリス・パイン、ロビン・ライト
原題:WONDER WOMAN 1984
配給:ワーナー・ブラザース映画
2020年/アメリカ/シネマスコープ/2時間31分
(C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics
公式サイト https://wwws.warnerbros.co.jp/wonderwoman/