パナソニックは9日午後、マスコミ各社に向けて同社ビエラを使った「ネット動画ビューイングセミナー」を開催した。
同社の調査によると、コロナ禍の影響もあり、この1年でテレビの視聴時間は1.4〜1.5倍に増加しているという。しかもアプリを使って配信コンテンツを見ている時間が1.7〜2倍近くに伸びており(パナソニックテレビでのアプリの起動時間を調べた結果)、配信番組がテレビのコンテンツとして急激に普及していることがうかがえる。
パナソニックでは、年末年始でこの傾向がさらに進むと予測、より多くの方にテレビの大画面でネット動画や配信サービスを楽しんで欲しいとして今回のセミナーを開催したわけだ。
確かにこれまで配信というとスマホやタブレットの小さな画面が中心で、画質もそういったデバイスを想定したものが多かった。しかし最近は高品質を目指したサービスも増え、中には4K&立体音響で配信されている場合もある。そういった番組を大画面で見ると臨場感や没入感は桁違いだし、何より家族みんなで楽しむこともできる。このメリットを享受しない手はない。
今回のセミナーではビエラが対応している配信サービスの中から「hulu」「U-NEXT」「ABEMA」について年末年始のお薦め番組を紹介、それらをビエラで視聴するメリットも解説された。
huluはハリウッド作品やテレビ番組など60,000本以上の作品が月額¥1.260(税込)で楽しめる見放題サービスだ。お薦め番組としては、傑作ディストピア小説をドラマ化した『BRAVE NEW WORLD/ブレイブ・ニュー・ワールド』が12月16日にスタートする。さらに2021年1月11日からは全299話にも達する古代インドを舞台にした英雄伝『ポロス』のシーズン5が始まるそうだ。
これらの作品を再生する場合には、ビエラの「ヘキサクロマドライブ」機能が有効になる。これはプロの映像製作の現場でも使われる3次元カラーマネジメント回路の「3D-LUT」と高精度演算回路を駆使して正確な色再現を可能にする同社の独自回路。液晶テレビには「ヘキサクロマドライブ」、有機ELテレビは「ヘキサクロマドライブ プラス」とデバイスに応じて最適化した回路が使い分けられている。
その効果は例えば『ホロス』で顕著になる。この作品では王宮内などでブルーが印象的に使われているが、その青色の鮮度や階調がしっかり再現できるわけだ。さらに有機ELビエラでは、自発光ならではの純度の高い色が楽しめることになる。
また配信では2Kコンテンツが中心だが、それも「4Kファインリマスターエンジン」によって高品位に4Kアップコンバートしてくれる。同一画面内でノイズを抑える部分とディテイルまで再現する部分を解析、それぞれに合わせた処理を行っている。
さらに4Kファインリマスターエンジンでは入力された信号を素材に遡って解析し、4KやHD/SDといった制作時の素材に合わせた高精細化処理を加えている。これも様々な素材が混在している配信の再生では効果的だろう。
なお「HZ2000」「HZ1800」「HX950」シリーズなら音質面でも相当満足度の高い再生が楽しめる。これらのモデルは画面上部にイネーブルドスピーカーを内蔵しており、下部スピーカーとの組み合わせで画面中央に音像を定位できるからだ。もちろんドルビーアトモスコンテンツなら高さ方向を伴った再生も可能だ(2ch等からのアップミックスにも対応)。
今回のセミナーではU-NEXTが配信しているアトモスコンテンツ『バンブルビー』でその効果を体験させてもらった。ちなみにU-NEXTは月額¥1,990(税別)で約20万本の見放題ビデオや80誌以上の雑誌読み放題などのサービスを展開している。年末年始のお薦め番組としては12月25日から邦画『コンフィデンスマンJP』が、さらに2021年1月8日には今年の話題作『TENET(テネット)』が公開スタートする。他にもノーラン監督作品も配信済みという。
さて『バンブルビー』のアトモス(今回は2K&ドルビーアトモスコンテンツを再生)はイネーブルドスピーカー搭載の「TH-65HZ2000」と非搭載の「TH-65HZ1000」で切り替えながら体験させてもらった。
冒頭のバトルシーンでは爆音の迫力、効果音の移動感、セリフの明瞭さなど格段の違いがある。映画を楽しむという意味ではこの違いは大きい。最近はドルビーアトモス対応のサウンドバーも登場しているがHZ2000ならそれらを組み合わせる必要もない。ちなみにU-NEXTではドルビーデジタルプラスで圧縮したアトモスを配信しているそうだが、HZ2000自体はトゥルーHDにも対応済みだ。
最後のお薦めコンテンツはABEMAから紹介された。ABEMAは約20チャンネルで24時間配信している会員登録不要の配信サービスで、開局4年で6000万ダウンロードを達成したという。
2021年1月1日から『配信版 アンダードッグ』配信をスタート、さらに『鬼滅の刃』を始めとするアニメ作品、サザンオールスターズの年越しライブ(12月31日)や福山雅治のオンラインライブ(12月27日)など盛り沢山とのこと。
ここでアニメ作品を楽しむなら「オブジェクト検出倍速表示」と「素材解像度検出4Kファインリマスターエンジン」の働きが重要となる。
前者は倍速(1秒間に120コマ)で映像を表示することで動きぼけを解消する機能だが、元の映像から120コマに変換する際に映像内の背景と被写体(オブジェクト)を分離処理することで輪郭がクリアーでかつ滑らかな動きを可能にしている。
こちらについても会場でデモ展示をしていた。一般的な倍速表示(オブジェクト検出倍速 非搭載)のTH-55FX750では人物が疾走するシーンで顔の横にできるちらつきやボケが目に付いたが、対応モデルのTH-55HX950ではそれがなくなってすっきり見やすくなっていた。
後者はアニメならではの画質特性に合わせた高画質化処理で、ノイズが目立ちやすい部分には強めにリダクションをかけ、動きの速い部分は効果を弱めてクリアーで鮮明な映像になるようにしている。またアニメで目に付きやすいバンディングノイズ(階調再現のむら)に対しても、複数のノイズフィルターを使い分けることでノイズ部分とテクスチャーを分離、滑らかな映像を実現している。
今回紹介したビエラの機能は放送やパッケージを高画質に再生するものとして既にお馴染みだ。だが今回、それらが配信コンテンツにも有効だということを改めて確認し、テレビで配信番組を再生する価値がここにあるということがわかった。
それは、スマホやタブレットより大きな画面で楽しめるという物理的な意味だけでなく、大画面に拡大した場合でもより綺麗に、より自然なコンテンツの世界に浸れるということ。今後は配信が家庭内エンタテインメントで大きな役割を果たしていくのは間違いない。ビエラはその最先端を堪能できる製品といっていいだろう。(取材・文:泉 哲也)