冷静なスタジオワークから熱のあるライヴまで
懐の深い再生能力を備えている
エラックのAlchemy(アルケミー)は、2016年に同社の傘下に入った米オーディオアルケミー社の代表、ピーター・マドニック氏の手がけるエレクトロニクス製品を送り出すために創設された新シリーズ。「手頃な価格でハイエンドオーディオのパフォーマンスを提供する」というオーディオアルケミー社のコンセプトを継承し、今後もエラック/オーディオアルケミーのダブルネームブランドとして時代のニーズに沿った製品開発を行なっていくという。
ここで紹介するDAC/プリアンプのDDP-2とパワーアンプのDPA-2は、それぞれオーディオアルケミーブランドとしてかつて発売されたDDP-1とDPA-1の後継モデルにあたり、今年5月のミュンヘンハイエンドショーで初出展され、6月に東京で行なわれたOTOTEN2019でも大きな注目を集めたことは記憶に新しい(当日は同シリーズのフォノイコライザーPPA-2も出展されていた)。
デュアルDACを搭載するDDP-2は、PCなどとのUSB接続によってPCM384kHz/32ビットやDSD11.2MHzといった最新のデジタルファイルフォーマット再生に対応するほか、384kHzでの任意のアップサンプリング機能と16ビット⇔24ビット、24ビット⇔32ビットのコンバージョン機能も搭載している。そのほかWi-Fi/有線LANでのネットワーク接続が可能で、SpotifyコネクトやRoon Readyなども利用できる。
そして、DPA-1からの大幅なパワーアップと10万円以上ものプライスダウンの両方を実現したDPA-2。入力段はクラスAディスクリートFET構成、出力段はクラスD増幅によって325W×2(4Ω)のハイパワーを実現する。簡単な切り替え操作によって、650W(4Ω)のモノーラルアンプ仕様にする変更も可能だ。
両モデルはXLRバランスとRCAアンバランスの両方で接続でき、なおかつDPA-2に用意された入力切替スイッチで瞬時に入力を切り替えることができるので、入力ソースにより接続を選択するという贅沢な使い方も可能。また、下記の図のようにRCAでAVセンターのプリアウトと接続すれば、サラウンドシステムとの連携がスムーズで、AV用途としての活用も期待できる。
【サラウンドシステムにも馴染むパワーアンプDPA-2】
両機の接続はXLRがオススメ
表現力がさらに深まる
というわけで、MacBook AirとDDP-2をUSB接続し、オーディルヴァーナでハイレゾファイルを再生してみた。最初に両機をRCA接続でコーネリアス「あなたがいるなら」(96k㎐/24ビット/FLAC)を再生すると、ヴォーカルの異常なまでの生々しさに驚かされる。これまでこのハイレゾファイルをさまざまなシステムで聴いてきたが、ノドの湿り気をここまで表現した再生は初めてかもしれない。それとは対照的に、ギターソロは細部まで輪郭がくっきり浮かび上がり、音色はどこまでもドライ。両モデルの組合せの持つ、音楽再生の懐の深さがありありと伝わってくる。
同曲でアップサンプリング機能を試してみると、DDP-2の本体パネルの表示が「96k㎐+」となり、わずかにエコー成分が豊かになったように感じられる。他の曲で試しても、総じて同じような効果が得られるので、好みで積極的にオン/オフを試すといいだろう。
次に両機の接続をXLRに替えて聴いてみると、より鮮度が高くて芯の感じられるサウンドに変化する。音量レベルがグッと上がるので、それだけで好印象を持ってしまいがちだが、音量を合わせて両入力をじっくり聴き比べても、XLRの音質的優位性は明らか。さらに表現力が深まり、音像に立体感が加わっている。
さらに、DDP-2をプリアンプとして、UHDブルーレイプレーヤー パイオニアUDP-LX800のアナログ音声出力をXLR接続。2chながらAV用途も試してみた。同じくコーネリアスのBD『Mellow Waves Visuals』からライヴ映像を再生すると中域の情報量が豊かで、これまでの印象よりもやや熱量のある演奏を楽しむことができた。
本シリーズの製品は、業務用のラックボードへの収納なども想定して薄型のデザイン(1Uサイズ)が採用されているとのこと。もちろんホームユースでも多彩でマニアックな用途に応えてくれることは間違いなく、このダブルネームブランドの今後の展開から目が離せないと感じた。