家庭用テレビの新たな自発光、表示パネルとして登場し、いまや高級テレビの代名詞と言っていいまでに成長した有機ELテレビ。画質に優れた(特にコントラスト比が高く、動画表示性能が高い)逸材だけに、当然と言えば、当然だが、ここまでの道のりはけっして平坦なものではなかった。

 商品化の最大のネックとなったのが、量産の難しさ。世界中の名だたる大手企業が開発に着手し、大量の資金、開発パワーが投じられたが、なかなか思うような成果があがらず、1社2社と、撤退。そんな厳しい状況の中で唯一、家庭用テレビ向けの大型有機ELパネルの量産化に成功したのがLGだ(※)。

※編註:正確にはLGディスプレイが有機ELパネルを製造。そのグループ会社でテレビを含む総合家電メーカーがLGエレクトロニクスとなる

 同社では早々から白色の有機ELパネルにカラーフィルター(編註:カラーリファイナーとLGディスプレイでは称している)を組み合わせた「白色有機EL+カラーフィルター方式」の可能性の高さに着目し、技術/ノウハウを蓄積。そして2013年、世界初の大型有機ELパネルの量産に成功、55インチの有機ELテレビが市場に送り出された。

 その後、2Kから4Kへの画質の進化、内側にアールを持たせた曲面型や“壁に貼る”ディスプレイといったデザインの提案、さらにはCES2019で初お披露目となった世界初のローラブルテレビ(巻き取り型)と、画質、機能性、デザイン性と、7年という短い期間で大きな進化を遂げている。

 これまでの家庭用テレビの常識を超えるような新しい提案は、世界のテレビユーザーから広く支持を集め、現在、LGは有機ELテレビの世界販売シェア、No.1メーカーとして確かな地位を確立している。

 

家庭用テレビとして未知の臨場感への挑戦、それがLGの8K対応有機ELテレビだ!

 そして今年、LGは「令和」という新しい時代の始まりにふさわしい最先端の有機ELテレビを発表。そう、世界初となる8K対応、世界最大の88インチサイズの有機ELテレビ、OLED 88Z9PJAの登場だ。

 画質が一定レベル以上に達すると、人はその画像からより明確なスケールを感じるようになり、55インチ、65インチの大画面でも、その大きさに物足りなさを覚え始める。

 本格的な8K時代が到来すると、この問題はさらに深刻さを増すことは明らかで、50~60インチでもまだ小さい。そこでLGが開発したのが88インチの8K対応テレビだ。これはまさに家庭用テレビとしての未知の臨場感への挑戦なのである。

 今年の6月、国立新美術館で開催された「LG SIGNATURE in TOKYO」でお披露目され、9月に正式発表となった88インチ8K対応有機ELテレビ、OLED 88Z9PJA の正体が明らかになった。

 まずシルバーのキャビネット型スタンドと、極細ブラックベゼルのパネルを一体化したデザインに目が奪われる。空洞のテレビボードから、極薄の有機ELパネルだけがせり上がったかのような見え方が何とも斬新で、照明を落とした環境では、映像だけが浮いているような不思議な感覚が味わえる。

 このテレビボードはデザイン上、きわめて重要な役割を果たしているわけだが、内側上部、見えないところに音の開口部が存在する。スピーカー自体はテレビ本体の背面に搭載され、音を下向きに放出。それをキャビネット内に組み込まれたリフレクター(反射板)が受け止め、音を前方向へ送り出すという実に凝った仕組みだ。

 ちなみにスピーカーは本格的な3ウェイ構成(実用最大出力80W)。ドルビーアトモス再生に対応し、通常のステレオ音源についてはドルビーサラウンド再生が可能となる。

 いよいよ本題、画質の話に入ろう。まずLGディスプレイから供給を受ける88インチの有機ELパネルだが、8K解像度の倍速駆動以外、具体的なスペック値は公表されていない。

画像: 88型でも本体は極薄。スタンドは一体型で、本体は42kg、スタンドは62kg、合計104kgの質量
88型でも本体は極薄。スタンドは一体型で、本体は42kg、スタンドは62kg、合計104kgの質量

 

豊かな表現力は圧倒的!4K有機ELテレビとは別世界

 映像エンジンとしては8K対応の「α9 Gen2 Intelligent Processor 8K」が投じられた。これは現行の4K有機ELテレビで実績のある「α9 Gen2 Intelligent Processor」の後段に、専用の画像処理ICを加えたもの。独自のAI技術によるディープラーニング処理を駆使し、2Kおよび4K映像を、8Kアップスケーリング処理を行なう。

 

画像: 本機に搭載されたのは「α9 Gen2 Intelligent Processor 8K」。LGの4K有機ELテレビの最新モデルに搭載されたプロセッサーの後段にICを追加した構成となる。そのため、基本的なインターフェイスは既存モデルと同様

本機に搭載されたのは「α9 Gen2 Intelligent Processor 8K」。LGの4K有機ELテレビの最新モデルに搭載されたプロセッサーの後段にICを追加した構成となる。そのため、基本的なインターフェイスは既存モデルと同様

 

 内蔵チューナーは4Kが1基、地上/BS/110度CSデジタルが3基という構成で、残念ながら8Kチューナーは非内蔵。ただ8K入力が可能なHDMI2.1をサポートし、インターネット経由での8Kコンテンツ視聴についても、ソフトウェア・アップデートで対応予定だ(単体8Kチューナーの製品化は未定)。

※2019年12月以降発送予定の8Kアップグレーダーを接続した上でソフトウェア・アップデートを実施することで対応

 さて実際の画質インプレッションといこう。まず日頃から見慣れているBD『恋におちたシェイクスピア』の再生だが、輪郭がやや太く、ノイズの粒子も大きめだが、極端に甘い感じはなく、コントラストは良好。8Kアップスケールの精度をもう少し追い込む必要はありそうだが、8K画素が創り出す若き日のグゥイネス・パルトロウの瑞々しいスキントーンは悪くない。

 続いてUHDブルーレイ『マリアンヌ』を再生。冒頭部、夜のパーティーシーンを中心に視聴したが、夜の街を照らす照明の瞬きといい、光を受けて、反射する車の塗装、その汚れといい、画面の奥に拡がる空間のリアリティにハッとさせられる。パーティー会場では豪華な衣装、宝石、シャンデリアが鮮明に描き出され、マリアンヌのピンクがかった肌と、柔らかなグラデーションを伴なった髪のなんと生々しいことか。6K、8K撮影の優位性がダイレクトに感じ取れる表現力であり、4K有機ELテレビとは明らかに別の世界だ。

 そして8K。今回は市販の8KチューナーからのHDMI出力4系統による8K信号を、開発用機材でHDMI2.1(HDMI1本)に変換して視聴したが、このインパクトは強烈だった。ラグビーの中継や『メガシティ大発光 空から見た東京夜景』、『マイ・フェア・レディ』と8K放送のオンエアコンテンツを中心に見たが、その緻密さ、豊かな風合い、そして人工臭を排した色再現と、これまでなかなか体験したことがないようなグレードの高さで、その表現力の豊かさに圧倒される。

 

画像: 「HDMI2.1」対応としており、将来的にはHDMI1本での8K映像信号入力が可能。開発用の機器を使って8K放送の録画番組を再生すると、写真のように「4320p」(水平7,680×垂直4,320画素)の入力を確認できた

「HDMI2.1」対応としており、将来的にはHDMI1本での8K映像信号入力が可能。開発用の機器を使って8K放送の録画番組を再生すると、写真のように「4320p」(水平7,680×垂直4,320画素)の入力を確認できた

 

本物感に度肝を抜かれた間違いなく、テレビの歴史に残る1台となる

 特に『マイ・フェア・レディ』の本物感には度肝を抜かれた。絢爛な衣装、高級な調度類、躍動する競走馬、そしてオードリーをはじめとする名優たちの豊かな感情表現と、すでに数十回は視聴して、熟知した絵柄だが、随所、随所で感性に訴え、心に突き刺さる。

 英国の映画監督、クリストファー・ノーランはフィルム撮影されフィルムで上映することを前提にした作品をデジタル化すると、その時点で人の感性を刺激する“感性情報”が膨大に失われてしまうと述べているが、もし、この8K『マイ・フェア・レディ』をノーランが見たらどう思うだろうか。彼の認識が大きく変わる可能性は充分にある……。そのくらいのインパクトだった。

 まさに88インチというスケールと、本物の8Kクォリティの共演の成せる技。テレビの歴史に残る1台になることは、間違いない。

 

画像: LGこそ、有機ELテレビの先駆け。ついに登場した夢の8K対応有機ELテレビ

LG
OLED 88Z9PJA
オープン価格(実勢価格330万円前後、受注生産)

● 解像度:水平7,680×垂直4,320画素
● 内蔵チューナー:地上デジタル×3、BS/110度CSデジタル×3、4K BS/110度CSデジタル×1
● 接続端子:HDMI入力4系統、デジタル音声出力1系統(光)、LAN1系統、ほか
● 寸法/質量:W1,961×H1,456×D281mm/104kg
● 問合せ先:LGエレクトロニクス・ジャパン カスタマーセンター 電話 0120-813-023

 

 

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