無帰還2段構成+リレー式アッテネーターのラインプリは
CSポートお家芸のスイッチング電源を採用
超大型3極管212Eアンプとの組合せは相性も抜群
2017年に登場したCSポートの製品群は、いずれもハイエンド指向の豪華な内容で大いに注目されている。重厚長大なアナログプレーヤーを筆頭に、巨大な212E3極管によるモノーラルパワーアンプ、そしてバッテリー駆動方式のフォノイコライザーアンプが同社のファーストリリースだった。
ここで紹介するC3PRは、登場が待たれていたラインレベルのプリアンプ。やはりというか、こだわりの設計思想が随所に表れている意欲作だ。増幅回路はドイツテレコムが開発したC3g真空管をチャンネルあたり2本使った無帰還の2段構成。音量調整は多数の固定抵抗を高信頼性リレーで切り換えるR2R方式のアッテネーター回路による。最大0デシベルから-60デシベルの調整に加えて、ノブを押すことで-10デシベルの減衰ができるので、実質的に0〜-70デシベルの音量調整を可能にしている。プリアンプとしての増幅回路はシングルエンド構成であり、入出力に高性能トランスフォーマーを配備することで理想的なバランス伝送に対応している。
特徴的なのはオーディオ回路だけでなく、電源部もかなり凝ったもので、同社が得意とするスイッチング電源部で安定化した供給電圧を獲得したうえで、さらに応答性に優れたアナログ電源部を経由させて整流化しているという。もちろん、電源部は左右独立仕様であり、コントロール回路の電源も独立させている。筐体内部は左右の増幅回路基板と仕切られた電源部で3分割された格好である。
C3PRの試聴に使った機器は、USB接続DACとしてアキュフェーズDC950、パワーアンプがエアータイトATM3、スピーカーシステムはB&W 800D3である。
シングルエンド入力(RCA)での手嶌葵「月のぬくもり」は、物腰の柔らかい丁寧な発声に耳を奪われる。有機的な音の展開というべき、プリアンプの存在を滲ませた上質な表現が感じられるのだ。音場空間の拡がりも充分で、ハイレゾ音源で聴く井筒香奈江「サクセス」も滑らかな音で帯域の広さも窺わせる。ドラム奏者マヌ・カッチェの「キープ・オン・トリッピン」は、キックドラムやウッドベースの低音に弾力が感じられる、リズミカルに心を揺さぶる音を愉しませた。ネルソンス指揮によるショスタコーヴィチの交響曲11番で聴く大音響(第4楽章)の迫力は繊細さも伴っており、大いに聴き応えがあった。
バランス入力(XLR)で聴くと、音の本質的な描写に深みが増すような印象。ショスタコーヴィチでは風格の増した音に、マヌ・カッチェでは音ヌケがわずかに後退するものの重心が低い落ち着いた音に感じられた。
超大型3極管212Eを搭載する同社212PAとの組合せは、相性の良さが抜群だった。音像のフォーカスが整って生き生きとした積極的な音を聴かせてくれるし、音量を上げても音の構築が乱れることなく、色調を濃いめに音楽を濃淡鮮やかに描き上げる。