サウンドデザイナーにして熱心なHiVi読者である蝦名恭範さんからのリクエストで、ストームオーディオのコントロールAVセンター、ISP 3D.16 ELITEをご自身のホームシアターで体験していただいた。前編では導入からセッティングまでを紹介したが、今回は詳しい視聴インプレッションをお届けする。蝦名さんがこの日のために封を開けずに取っておいたUHDブルーレイを取り出して、いざ。取材・本文は前編に続いて山本浩司さんにお願いしている。

【前編の内容はこちら】
https://online.stereosound.co.jp/_ct/17210387

画像1: ストームオーディオのAVプリ「ISP 3D.16 ELITE」をサウンドデザイナーさんのホームシアターに持ち込んでみた。そのサウンドがすっかり気に入ってしまい……なんと!(後)

CONTROL AV CENTER
STORM AUDIO ISP 3D.16 ELITE ¥1,700,000+税

●対応フォーマット:ドルビーアトモス、DTS:X、オーロ3D、他
●接続端子:HDMI入力7系統(入力1〜4はHDMI1.4/HDCP2.2、入力5〜7はHDMI2.0/HDCP2.2対応)、HDMI出力2系統(出力1はHDMI1.4/HDCP2.2、出力2はHDMI2.0/HDCP2.2対応)、デジタル音声入力6系統(光×3、同軸×3)、アナログ音声入力3系統(XLR)、アナログ音声出力1系統(XLR)、アナログ16chプリアウト(XLR)、他
●備考:音声補正機能Dirac Live Room Calibration対応(Dirac Live Kitは別売¥160,000+税)
●寸法/質量:W490×H191×D479mm/13.1kg
●問合せ先:(株)ナスペック70120-932-455

スピーカーが消えたかのような、シームレスな音場が出現した!

 最初にドルビーラボが制作した「リーフ」と名づけられたドルビーアトモスのデモンストレーション・コンテンツを再生してみる。このソフト、蝦名さんもぼくも様々なAVセンターで幾度となく聴いているが、この日ISP 3D〜で体験できた音は驚くべきパフォーマンスで、これぞ3D立体音響の極みというべき臨場感だった。蝦名さんは言う。

 「ワイドスピーカーを加えたこと、トップを4本から6本に増やしたことが、これほどうまくいくとは思いませんでした。各チャンネルの音が水平・垂直ともにシームレスにつながり、半円球状にみっちりと音がつまったすばらしくリアルなサラウンドサウンドが体験できました。予想以上のインパクトでしたね。また、ヤマハCX-A5100以上に音に芯があり、それぞれの効果音や音楽が真に迫って聞こえました。ISP 3D〜のプロ機っぽい音、間違いなくぼくの好みです」

画像: おふたりには、ドルビーアトモスからオーロ3Dまで様々なソフトをチェックして、その感想を語り合ってもらった。蝦名さんは山本さんが自分の部屋の音について褒めてくれたことが嬉しくて、感無量だったそうです

おふたりには、ドルビーアトモスからオーロ3Dまで様々なソフトをチェックして、その感想を語り合ってもらった。蝦名さんは山本さんが自分の部屋の音について褒めてくれたことが嬉しくて、感無量だったそうです

 蝦名さんのインプレッションに異論を差し挟む余地はまったくない。その通りの音だとぼくも思ったが、これはほとんどすべてのスピーカーをムジークの製品で揃えていることに加え、DiracLiveによる全スピーカーの位相/インパルスレスポンスの補正が効いているのだろう。スピーカーの存在が消えたかのような、こんなシームレスなサラウンドサウンドをホームシアターで聴けるのは希有な体験だ。

 その後、ドルビーアトモス収録のBD『ゼロ・グラビティ』(映画館で初めてアトモスを体験した記念すべき作品で、蝦名さんはその音の凄さに圧倒されたという)、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(ISP 3D〜で楽しみたくて、この日まで封を切っていなかったそうだ)などを再生したが、ISP 3D〜によって奏でられる9.1.6構成のサラウンドサウンドは、まさに超高品質なミニシアターを彷彿させ、テストを忘れいつまでも観ていたいと思わせる見事なものだった。

 とりわけ『ゼロ・グラビティ』のオープング・シーンがすばらしかった。冒頭、アブストラクトな音楽が徐々にクレッシェンドしていき耳を聾さんばかりの大音量になったところで、突然やってくる無音。ISP 3D〜とムジークのスピーカー群によって得られるそのダイナミックな表現力にホームシアター・サウンドがもう一段高いレベルに到達したと確信させられた。

画像: <Dirac Live>の測定時の様子。専用マイクを視聴位置の周り9ヵ所、場所や高さを変えて測定を進めていく。今回はおひとり様用の視聴タイルを選んでいるが、リビング等での2〜3人分の視聴エリアに合わせた補正もできる

<Dirac Live>の測定時の様子。専用マイクを視聴位置の周り9ヵ所、場所や高さを変えて測定を進めていく。今回はおひとり様用の視聴タイルを選んでいるが、リビング等での2〜3人分の視聴エリアに合わせた補正もできる

 その後、遠くから近づいてくるスペースシップの周囲を遊泳する宇宙飛行士(ジョージ・クルーニー)とヒューストンのNASA本部との交信音声が、確かな軌跡を描きながら不気味なくらい生々しく部屋を取り囲む。これまで聴いたことのない微細な環境音がふっと浮かび上がり、思わずゾクリ。うん、この情報量は凄い。残念ながら我がシアターではついぞ聴いたことのない精密なサラウンドサウンドだ。

 『〜最後のジェダイ』は、なぜかワイドスピーカーとトップミドルが鳴らない状態で再生された。蝦名さんの話では本作の米国盤の音声メニューには「7.1.4 Dolby ATMOS」というナゾの表記があるという。ま、それはともかく本UHDブルーレイのダイナミックなサウンドにもおおいに感心させられた。縦横無尽に効果音が動き回るアクション・シーンの解像感の高さ、情報量の多さも凄いが、ダイアローグの明瞭度の高さ、人の声の生々しさにも驚かされた。こんなところにもISP 3D〜とムジークのスピーカーの実力の高さがうかがえるが、それに加えてオーエス製サウンドスクリーンの透過特性のよさ(=高域が鈍らない)が効いているのだろう。

 このスクリーン、幕面がファブリック製だけにサウンドホールの存在が目立たないうえに、ソニーVPL-VW500ESとの組合せではゲインの低さも気にならない。じつにいいスクリーンだと思う。もう一部屋あれば、シネスコサイズのこのスクリーン裏に高さを揃えた同一L/C/Rスピーカーを置いたホームシアターを構築してみたい。「センタースピーカー無し派」の筆者にそんなことまで妄想させるのである。

 最後にAuro-3D収録のクラシック音楽ライヴ作品をいくつか再生してみたが、同フォーマットを発案したギャラクシー・スタジオを出自とするストームオーディオ製品ならではの、すばらしい音が聴けた。ノルウェーのニーダロス大聖堂やコンセルトヘボウのリッチで潤いのある響きが蝦名シアターに甦り、輸入元スタッフ含めこの場にいた全員がうっとりと聴き惚れた次第。蝦名さん、これはもう買うしかないんじゃ?

取材から約2ヵ月、蝦名シアターがVersion2に進化しました!
取材時の音が忘れられずに、ISP 3D.16 ELITEを導入

画像: 無事セッティングが完了し、フロントパネルの保護カバーを剥がす蝦名さん。新しい製品がわが家の仲間になった瞬間、嬉しそうです

無事セッティングが完了し、フロントパネルの保護カバーを剥がす蝦名さん。新しい製品がわが家の仲間になった瞬間、嬉しそうです

 ISP 3D.16 ELITEの体験取材から約2ヵ月、StereoSound ONLINE担当者はふたたび蝦名さんのシアターにお邪魔した。実は、取材の2〜3週間後に蝦名さんから連絡があり、「ISP 3D〜の音が忘れられないので、思い切って注文してしまいました」という報告をもらっていたのだ。

 その後、蝦名さんがオーダーしたISP 3D〜が無事入荷し、ナスペックのスタッフによる設置調整が行われるとの連絡があったのが10月上旬、今回はその様子を追っかけ取材させてもらった。

画像: 搬入されたISP 3D.16 ELITE。まずは箱を開ける儀式からスタート

搬入されたISP 3D.16 ELITE。まずは箱を開ける儀式からスタート

 蝦名邸にうかがうと、既に部屋の中央にISP 3D〜の箱が。それを前にして、蝦名さんもとても嬉しそうだ。さっそく箱から取り出してラックにセットする。このあたりは取材時と同じ手順なので作業もスムーズに進んだ。

 なお、蝦名シアターはISP 3D〜の導入に合わせて、ひとつ変化しているポイントがあった。それは、サラウンド用サブウーファーの追加。蝦名シアターのスピーカーは再生帯域的に、フロントL/C/Rが「ラージ」で、他は「スモール」で使っている。取材時はこの設定だったわけだが、蝦名さんはその際にサラウンド側の低域をもう少し増やしたいと感じたとかで、サラウンドとサラウンドバック用のサブウーファーを追加したのだ。

画像: 9.1.6システムなので、合計16本のバランスケーブルをつないでいく

9.1.6システムなので、合計16本のバランスケーブルをつないでいく

 選んだサブウーファーはジェネレックのスタジオ用モデル7050B。これは5.1chのバランス入力と5chのバランス出力を備えた製品で、5chについては85Hz以下の低域を再生する。蝦名さんは事前にサラウンドとサラウンドバックについては7050Bを経由させ、ISP 3D〜側でのベースマネジメントが必要ないようにしていた。

 結果として蝦名邸のスピーカーコンフィグレーションはフロントL/C/Rとサラウンド・サラウンドバックが「ラージ」、フロントワイドとトップ6本が「スモール」となり、ISP 3D〜側での処理もよりシンプルになっている。

 その状態で改めてDirac Live Room Calibrationの測定をスタート。設定は前回と同じく中央の一人がけシートをターゲットにしている。16chそれぞれで9ヵ所、合計144回の測定を繰り返し、ISP 3D〜のセットアップが完了した。

画像: 新たに追加されたサブウーファーの7050B(左)。サラウンドとサラウンドバック4ch分の低域をここで受け持っている

新たに追加されたサブウーファーの7050B(左)。サラウンドとサラウンドバック4ch分の低域をここで受け持っている

 ここからは視聴タイム。まずはドルビーアトモス収録の『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャンルグ』のUHDブルーレイを再生。あの大太鼓の響きも心地よく、ヘリコプターの移動感、頭上のローターの回転音も迫真的だ。

 「以前はもっと低音が暴れていた印象で、ボリュウムを上げたくても一杯一杯だったのですが、ISP 3D〜にしたら低音がすっきり落ち着きました。これならもっと大音量にしてもうるさく感じないですね」と蝦名さん。

 サラウンド側にサブウーファーを加えた効果もあるのだろうが、たしかに前回の取材時よりも低域の量感や安定感が増し、それでいてだぶついた印象もない。サイの暴走シーンでも低音の移動感が出てきて、作品への没入感はさらに増している。

 続いてAuro-3D収録のクラシック音楽ライヴ作品を再生してみると、ホールの天井の高さ表現が素晴らしい。もちろんオーケストラそれぞれの楽器の表現も緻密で情報量もたっぷりだ。さらにナスペック担当者のアドバイスで、蝦名さんのお気に入り2chソースを「Auro-matic」でアップミックス再生してみると、ステージがぐっと広がり、ライヴ感が増してきた。しかも妙な演出感はなく、全体としてとても自然な再現だ。

 「Auro-3Dもいいですね。また、今まではレコードやハイレゾ再生時にはプリアンプをつなぎ替えていましたが、ISP 3D〜のクォリティならそんな面倒なことしなくても、2chでもマルチでもこれ一台で楽しめそうです。しかもレコードをAuro-maticでアップミックスもできるんですよね。どんな音で聴けるのか、興味があります」

 実際、蝦名さんは早々にシステムをつなぎ替えて、ハイレゾもISP 3D〜経由で再生するようにしたそうだ。サウンドクォリティから操作性まで、ISP 3D〜の導入で蝦名シアターは大きく前進した。これからここでどんなディスクが上映されるのか、そしてそれらが蝦名さんの作品にどんな影響を与えてくれるのか、楽しみだ。(StereoSound ONLINE担当)

画像: サラウンド側にもサブウーファーを加えた、蝦名シアターVersion2の接続図

サラウンド側にもサブウーファーを加えた、蝦名シアターVersion2の接続図

画像: 本誌読者の中にもトライした人が多いであろう、デアゴスティーニのミレニアム・ファルコン号。蝦名さんはしっかり完成させ、汚しのペイントまで施している。その様子はこちらの動画でもぜひ! https://www.facebook.com/100000415018587/videos/1985806738109807/

本誌読者の中にもトライした人が多いであろう、デアゴスティーニのミレニアム・ファルコン号。蝦名さんはしっかり完成させ、汚しのペイントまで施している。その様子はこちらの動画でもぜひ!
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