欧州ヴィンテージ管

量感は控えめながらメロディアスな音色。真空管らしい倍音が表れ、輝かしく上品

鈴木 この3本については、僕はどれも似たような印象だったかな。どれも全帯域が綺麗に揃っていて悪くないんだけど、欲を言えば中音やや下の400Hzと中音やや上の1kHzあたりがもう少し充実すると嬉しいですね。バランス的には整っているので、微妙なところですが、3本ともそういう印象でした。

高橋 テレフンケンは、ベースがちょっと弱い感じがしました。でも真空管らしい倍音はフワッと感じられて、これぞヴィンテージの旨味だなと。ムラードは、最初に聴いた12AX7/ECC83の方が音楽的で良かった。これもレンジはそれほど広くないけれどもほどよい倍音があって、特にギターのキラッとした感じがよく表現されています。もう1本のCV4004/M8137は他2つに比べるとハムノイズが多めで音圧もやや低いものの、ヴォーカルがいい感じに前に出てきます。3本ともベースが少々弱い印象はありましたね。弱いというか、どこか抑えられている感じがしたかな。

杉井 この3本はどれもヨーロッパのヴィンテージ管ということで、アメリカ録音の『バンド・ワゴン』が少し変わったテイストで鳴らされていたと思います。好みは分かれるかもしれません。どれもUKロック、たとえばウィッシュボーン・アッシュのような旋律を重視したサウンドに向いている球だと思います。テレフンケンは生き生きとした鳴り方で良いのですが、中低域がやや薄いように感じました。バスドラムのアタック感はこれまでの真空管でいちばんよく出ていて、質感も優れていますが、量感がやや物足りないんですね。

鈴木 おっしゃる通りですね。

杉井 ムラードの2本はよく似ていて、どちらも楽器の音色が上品な印象です。だからロック的なビート感よりはメロディアスな方向で聴かせる傾向がある。そういう意味で、鈴木さんが『バンド・ワゴン』で本来目指した鳴り方とはもしかしたら少し違うのかなと。

テレフンケン ECC83
(スムースプレート/ダイヤマーク入り)

ムラード ECC83

ムラード CV4004/M8137

杉井 鈴木さんにお聞きしたいのですが、「砂の女」のギターにはフェイズ系のエフェクトがかかっているのでしょうか。

鈴木 ギターには3トラックを使っていて、ダブルトラッキングを多用しているのでフェイズっぽく聴こえるのかもしれません。でも3トラックのうち1トラックのギターにはフェイズシフターをかけていた記憶もあります。そのあたりは曖昧だけど。

杉井 なるほど。これまでの真空管ではあまり感じられませんでしたが、そのあたりの響きが前面に出ていたのかなと思います。どこか哀愁を感じさせるギターに感じられました。

高橋 どの管でもスネアのアタック感などは抑えめになりますよね。でも僕は倍音が綺麗だなと思った。楽器の実音にない部分の響きの美しさというか。

杉井 ムラード2本のうち、特にCV4004/M8137は個々の楽器の音色に品がありました。バンドとしてのグルーヴ感を前面に押し出す感じではないけれども、オーディオ的にはなかなか魅力的な球です。

Part1Part3の記事はこちらから)

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