2022年のオートサウンドウェブグランプリでシルバーアワードを獲得したパナソニックのストラーダCN-F1X10BGD。選考メンバーが口々にその音の良さを評価したが、改めてその音を掘り下げてみる。ポータブルハイレゾプレーヤーやイヤフォン、ヘッドフォンのジャンルで多くのレビューを発信している野村ケンジ氏を招き、グランプリ選考メンバーの長谷川圭氏と語ってもらった。何が語られたのか、じっくりお読みいただこう[編集部]

対談=野村ケンジ×長谷川圭/写真=嶋津彰夫

パナソニックのAVナビ ストラーダがここまでいい音に仕上がっているのに驚き(野村)
Hi-Fi調の高級モデルと比べても、音楽の聴き応えは勝る部分もある(長谷川)

長谷川 圭(以下、長谷川):野村さんとカーオーディオの試聴取材するのは久しぶりですね。雑誌オートサウンドの頃には、よくお会いしていましたけれど。

野村ケンジ(以下、野村):たしかに、当時乗っていたチンクエチェントでもページを作ってもらったり……懐かしいですね。

画像1: Auto Sound Web Grand Prix 2022 Silver Award
Panasonicストラーダ史上最高の音質 「CN-F1X10BGD」を語ろう
〜良い音のこと、その音を獲得するまでのこと〜

パナソニック ストラーダ AVナビゲーション
CN-F1X10BGD オープン価格

SPECIFICATION
●AV一体型メモリーナビゲーション
●画面:有機EL10V型ワイドHD静電容量方式タッチパネル
●内蔵パワーアンプ最大出力:50W×4
●再生メディア(フォーマット):地上デジタルTV、BD、DVDビデオ、CD(MP3/WMA)、Bluetooth、USB(オプションケーブル経由、最大32GB対応、MP3、AAC、WMA、WAV、FLAC対応・最大PCM192kHz/24bit)、SD(最大2TB対応、MP3、AAC、WMA、WAV、FLAC対応・最大PCM192kHz/24bit[microSDではBDMV対応])、アップルiPod/iPhone(オプションケーブル経由)、レコーダーリンク
●サンプリングレートコンバーター:192kHzにアップコンバート
●サウンドチューン機能:音の匠(匠マスターサウンド/極サラウンド/和 会話重視)
●エフェクト:DSP(HALL、STADIUM、CHURCH、LIVE)
●DSP機能:タイムアライメント、サブウーファー設定、グラフィック EQ(13バンド・-10〜10dB)
●D/Aコンバーター:アドバンスドセグメント方式32bitDAC
●HDMI入出力端子1系統装備
●外形寸法:W178×H100×D170mm(ナビゲーションユニット)、W240×H141×D13mm(ディスプレイユニット)
●重量:約2.6kg(ナビゲーションユニット)、約0.7kg(ディスプレイユニット)
●備考:TVアンテナ(フィルムアンテナ4枚)、GPSアンテナ、ハンズフリー通話用マイク付属

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〜良い音のこと、その音を獲得するまでのこと〜

オートサウンドウェブ試聴室で、パナソニックCN-F1X10BGDを挟んで話をする野村ケンジ氏(左)と長谷川圭氏(右)。

長谷川:さて、パナソニックのストラーダ最新モデルCN-F1X10BGDを聴きました。2022年のオートサウンドウェブグランプリでシルバーアワードを獲得したモデル。実はパナソニック史上最高位なんです。過去にブロンズの実績はありましたけれど、シルバーは初めてでした。

野村:それはすごいですね。聴けば納得ですが、あの選考メンバーで高評価を獲得するとは……。

長谷川:グランプリの選考結果を改めて探ったところ、ゴールドアワードとは僅差の評価でした。

野村:ほう。それを聞くとよけいに凄い。

長谷川:選考後の座談会でも、一様に高く評価していましたから。しかも、音がいいというところで評価されていました。今回、改めて聴いてみてもやはりよくできているのがわかります。

野村:僕はこの試聴室でこのセットで聴かせてもらうのが初めてでしたから、ライバル機となる某AVナビの音も聴きましたけれど、正直、パナソニックのAVナビ ストラーダがここまでいい音に仕上がっていたとは驚きです。

長谷川:野村さんはこの部屋でカーオーディオを聴くのは初めてでしたね。私は、改めて試聴して、編集部で用意したHi-Fi調の高級モデルでも聴きましたけど、遜色ないというか、音楽の聴き応えとしては勝る部分もあるほどでした。

野村:参考で聴いたナビはストラーダよりも高価な製品ですね、価格差で出てくるS/Nや解像度の差といったものは織り込み済みだったんです。けれど、この差を感じさせない素性の良さといったものが聴けました。

長谷川:そうでしたね。基本性能が高く仕上がってる。

野村:ストラーダならではの「音の匠」やイコライザーなどを使わないで鳴らして、いい音だなと感じられる。それと、なんというか、濁りのないクリアな音というか……クリアなといっても高域がのびやかだということではなくで、全体的に音像の配置が明確であったり、ヴォーカルが嫌味なくダイレクトに感じられるというか、ちゃんと距離感を保っていながら通る声がこちらに届く印象です。根本的な部分、素性の良さが音に表れているなと感じます。

長谷川:なるほど、よくわかります。

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〜良い音のこと、その音を獲得するまでのこと〜

今回の試聴取材で、グランプリ選考メンバーが口々に“良い音”と評価したことに納得した様子の野村氏。時間をかけて何曲も聴いていた。

歴代モデルで培った見識が活かされて新モデルが完成しているのがわかる(野村)
「音の匠」でナビの音が進化して、性能向上したナビの音で「音の匠」が進化(長谷川)

野村:ミュージックプレーヤーとして構成しているものの細かいところをひとつひとつ積み上げていって、熟成してきて作り上げられた音なのだろうという想像をしています。組み込まれているパーツを充分に検討していて、この最新のCN-F1X10BGDにいたる歴代モデルで培われた見識を活かした結果、完成しているんでしょう。

長谷川:デフォルトの音がいいというのは、とりもなおさず底上げされている証ですしね、一朝一夕でできるものじゃない。

野村:聴きやすい音……耳なじみがいいというか……マニアが好むようなHi-Fi調とは一味違った音の良さを感じます。あらゆるジャンルの音楽をそつなく鳴らすし、おそらくいろいろな好みがある音楽ファンに対して、より多くの人が納得して楽しめる音にしようと注力したのでしょう。どこのメーカー、どの製品でも掲げられている目標でしょうが、CN-F1X10BGDはその達成度が高い。

長谷川:なるほど。確かに過去モデルから積み上げられたものは多いようです。

野村:ノイジーではなく、耳障りな音も出さない。だからといって音全体を柔らかく聴かせるために丸めるようなこともなく、くっきりはっきり声が聴こえるように作られている気がします。

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CDやUSB、スマートフォンのアプリ、Bluetoothなどなど、さまざまなメディアを試す長谷川氏。野村氏ともどもCDの音の良さに喜んでいた。

長谷川:こうして試聴室のような環境でストラーダを聴かれるのはだいぶ久しぶりじゃないですか?

野村:そうですね。クルマでは、これまでの全世代で体験してきていますけれど、試聴室の環境は4代くらい前が最後じゃないでしょうか。そのころのストラーダの印象は今とだいぶ違っていました。

長谷川:昔話をすると、各社、AVナビがメインのソースプレーヤーになって、確実にクォリティアップを遂げる中で、ストラーダは独自路線でした。代表的なのが、先ほど野村さんも触れた「音の匠」です。初めて装備されたのが2008年のこと。この「音の匠」の<匠(たくみ)マスターサウンド>って、当時衝撃的だったんです。ちょっとギミックっぽいところも感じてはいましたけれど、どんな楽曲も確実に聴き応えが増すし、音楽として楽しくなった。当時からDSPはいまとあまり変わらないレベルでカーオーディオの機能としてあったけれど、「音の匠」はどのブランドの製品も違っていたし、それまでのサウンドチューニングとも違っていましたよね。

 おそらく、チューニングをしているミキサーズラボがやろうとしている音の方向性って変わらず来ている、けれど仕上がりは進化している。もっというと2008年頃と今とでは「音の匠」の活用シーンも変わってきている気がするんです。

 実は2022年のグランプリ受賞後に、このモデルの開発をしたパナソニックのエンジニアである田食さんにいろいろお話しをうかがったんです。昔の製品から比べると、飛躍的にハードウェアが進化していて、近年のモデルはその度合いも大きいんですね。そのおかげで「音の匠」もクォリティアップしていたことがわかりました。

野村:そうなりますよね。基本性能が上がれば、それに伴ってほかの機能も向上する。

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〜良い音のこと、その音を獲得するまでのこと〜

パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社でストラーダのオーディオ回路開発にたずさわった田食寛之氏。

長谷川:話する中で「「音の匠」の性能がアップできるほど、ベースアップが実現できたってすごいですね」と言ったら、「音の匠」があったから、ここまでの物が作れるようになった」と言うんです。

野村:音の匠を作る側、ミキサーズラボとしては、製品のベースクォリティが上がれば上がるほど自由度が上がるはずだから、腕の振るい甲斐も増しますよね。

長谷川:まさにそれですね。

クルマでいかにいい音で音楽が楽しめるかを追及している「音の匠」(長谷川)
「音の匠」というのは絶妙な機能だといえるでしょう(野村)

野村:ここまで、この音作りまでできるんじゃないか……より深いところまで手を入れることができるようになる。ハードの素の音の良さと音の匠の品質向上はリンクしますよね。いわば両輪として成立している話なのだろうと思います。

長谷川:2008年ですから……。

野村:もう14年前ですね。結構経ちますね。

長谷川:振り返るとびっくりしますよね。われわれは初めから知っているから、もうそんなに? という気もしますけど、14年も経ってるんです。「音の匠」が市販のストラーダに載るようになり、<匠(たくみ)マスターサウンド>、<極(きわみ)高域強調>、<和(なごみ)会話重視>の3モードが設定されて……。

野村:一時期は、市販モデルでクルマ毎にチューニングされた「音の匠」のストラーダもありましたよね?

長谷川:ありましたね、LシリーズやLSシリーズというモデルナンバーで発売されていました。何がすごいって、あの車種専用品、バリエーションモデルすべてで、ミキサーズラボが実車でチューニング作業したんですよ。手間も金もかけて開発していたと思いますが、おかげで当時の人気車種をカバーしたし、いまとなっては貴重な存在でした。現在は、市販ストラーダは汎用「音の匠」になって、<極(きわみ)>がサラウンドに進化しましたね。いっぽうで、車種専用「音の匠」は一部の車種でディーラーオプションの製品に組み込まれていて、完成度の高い音を実現してますね。

野村:車種専用チューニングモデルなら、ディーラーでクルマと一緒に購入できる方が手間がないですね。たしかインプレッサ用がありましたね。

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ストラーダの音の良さを語り出して止まらなくなっている野村氏と長谷川氏。

長谷川:「音の匠」の成り立ちというか、そもそも“どうあろう”とした機能なのか、田食さんの話を聞いた結果、私の中でひとつ結論が出まして、「音の匠」というのは、クルマの中でいかにいい音で音楽を楽しめるかを追及している機能なんです。

 音の匠をONにしたときの音が、オーディオ的にいい音と言えるのかというと、全面的に同意はできないですよね。

野村:そうですね。

長谷川:いわゆるHi-Fiとは違うのだけれど、音楽を積極的に楽しむための鳴らし方という部分で、実にうまく調整されているんですよね。聴くたびに「うまくつくるよなぁ」と感心します。

 そう考えると、過去のLシリーズストラーダで車種専用を作ったというのは「音の匠」の真の狙いだったんじゃないかなと思ったんです。そして、いまLシリーズがなくなって汎用品の「音の匠」なんですが、やはりクルマで音楽が楽しめるように純正スピーカーに向けたサウンドチューニングになっているわけです。

野村:そうですね。さきほど長谷川さんも言っていたけれど、これ1台+純正スピーカーで完結できるようにあつらえてある。使用目的を絞り込んだ仕様というのは、興味深いですよね。たとえばスピーカーユニットはハイクォリティ、ハイフィデリティのものに交換しなくてもちゃんと音楽が楽しめるという風にできている。純正のスピーカーってコストとの闘いじゃないですか、壊れなくて中域が聴こえていればいいものが多い。あとトゥイーターが着いていたら、高域が出ている感があればいいというのが一般的だろうと思うんです。でも、スピーカーを交換しないで、元々の装備を活用して楽しもうとなると、それなりの機能がなければならないわけで、「音の匠」というのは絶妙な機能だといえるでしょうね。

 あと、ブルーレイが再生できるじゃないですか、いまDVDを持っている人がどれだけいるかって話ですよ。光ディスクなら……

長谷川:自宅にレコーダー持っている人なら、いまやほぼBDじゃないでしょうか。

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〜良い音のこと、その音を獲得するまでのこと〜

ディスク再生の音が良いのも貴重な存在(野村)
なぜCDの音が良いのかというと……(長谷川)

野村:BDですよね。それをクルマでも観られるようにと考えますしね。あと、CD……ストリーミングの時代になって、ストリーミングは便利だなとなるわけで、ストラーダでもスマホをつなげば、アプリから楽しむこともできる。でも、世の音楽好きなかたは、家にCDありますよね。

 ここ10年買ってないとしても、コレクションを持っている人はいますよね、1,000枚くらいは……、邪魔だとか家族に言われながら(笑)。

長谷川:いくらなんでも、1,000枚持ってる人はそうそういないでしょう(笑)。

野村:大げさに言いましたけど、CDで好きな音楽のコレクションを持っている人はまだまだいるでしょうから、再生機能があるのは大事です。あまり今時な話じゃないかもしれないですけど、CDの愛聴盤をコレクションするって、音楽ファンとしては正しい姿かもしれないですね。

長谷川:ストリーミングって通信状態によって音が変わる印象で……便利はいいのですが……。

野村:なぜこんな話になるかというと、今回聴いたストラーダは、CDの音がいい。音源としてはハイレゾなどの高スペックな音源には及ばないところもあるんですけれど、音楽がとても気持ちよく聴ける。

長谷川:そうですね。CDの音が良かった。実はBDメカのせいかなと思ったんですが、どうやら違っていて、本機の開発担当した田食さんがCDで音決めしているのだそうです。

野村:そうだったんですね。曲によっては、ハイレゾ音源よりCDの方が聴き応えがあったりしました。なので、CDコレクションをお持ちの方にはぜひ、検討してみていただきたい。もちろん、USB経由やHDMI経由で、メモリーやスマートフォンでの再生もよく音がまとまってます。ハイレゾの対応も、368/32というファイルも再生しましたけれど、ちゃんと聴けました。DSDは無理にしても、これほどの高次ファイルが聴けるなら充分じゃないでしょうか。

長谷川:このストラーダはPCM192/24で信号処理していて、高次ファイルもCDもMP3なども192/24の楽曲ファイルで再生してますね。他メーカーのAVナビだと96/24での再生ばかりなので、スペック的には頭一つ出ていますね。

野村;ハイレゾの世界って、ポータブルオーディオ界隈が進んでいますけれど、これはポータブルと遜色ない対応力かもしれないですね。

長谷川:ファイル形式に関しては、ポピュラーな仕様ですけれど、普通に聴く分には問題ないでしょう。192/24で出すというのはマシンスペックが要求されるわけですけれど、最近、DSPを処理能力の高いチップに乗せ換えています。他社では10年ほど、新規DSPの採用がないと聞いていますので、これは画期的じゃないかと。どのメーカーも機能的にとか性能的に向上しているけれど、いわゆるDSPの機能的には完成されていて変える必要がなかったのでしょうね。でもパナソニックは変えた。

野村:機能、性能ともまだまだできることはありますけれど、市場的に充分という判断なのかもしれないですね。

DSPを変更して「音の匠」の<極(きわみ)サラウンド>を実装(長谷川)
専用に開発されたパワーアンプのモデルなんですね(野村)

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高速演算DSPの採用。このDSPの搭載により、<極(きわみ)サラウンド>モードが実現しているという。

長谷川:ストラーダの2021年モデルでDSPを変更していて、「音の匠」の<極(きわみ)サラウンド>を実装しました。これまでサラウンドってエコー成分やイコライザーを変化させて、それっぽい演出として装備されていることが多くて、このストラーダにもスタジアムやホールといったモードはあるんですけれど、この極サラウンドは一味も二味も違うサラウンドに仕上げたんです。サラウンドなので、ステレオの音源を4チャンネル化して調整しなきゃならないわけで、信号処理の規模がだいぶ膨らんだそうです。

野村:試聴室ではよくわかりませんでしたけど、サラウンドですもんね、ステレオ2チャンネルで聴くものじゃない。

長谷川:2021年のフルモデルチェンジ時には、もうひとつ大きなデバイス変更があって、パワーアンプが変更されました。しかもこのアンプ、見かけは「Strada」ロゴが刻印されているだけのようですが、デバイスメーカーと共同開発した専用品なんです。

野村:専用に開発されたパワーアンプのモデルなんですね。

長谷川:そうです。完全専用品で門外不出のデバイスになります。

野村:オーダーメイド品、これはかなり高くつく取り組み方……。

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デバイスメーカーとともに開発したストラーダ専用カスタムパワーアンプ。回路パターンやレイアウトなど、独自に組み込んだリミテッドデバイスだ。2019年より搭載されている。

長谷川:このアンプの採用で、レベルを上げても歪みにくくなったりSN比の向上だったり、格段に出音が良くなっているんです。

野村:4チャンネル分が1チップに集約されたパワーアンプというのは、ごく一般的なデバイスだと、最大出力ではとてもじゃないけれどちゃんと聴けないほど音がひずみます。そういうところを独自に取り組んでいるというのはさすがですね。コツコツと積み上げられたもののうちのひとつですね。素の音がいいというのは、そういうことの集大成ですね。

長谷川:その通りだと思います。さきほど「音の匠」と、ベースのグレードアップが両輪だと話されましたけれど、「音の匠」は、ミキサーズラボの内沼英二さんと三浦瑞生さんのお二人が実際に車載状態だったり試聴室の環境で聴いています。聴きながら音の調整をする。この方法は「音の匠」の導入時から変わっていないやり方です。その調整は開発者専用の音の匠調整用カスタムイコライザーで行います。表には出てこないもので、ユーザーは触れない。このイコライザー、一般的なものとは違ったカスタムイコライザーで、バンド数をはじめ特別仕様として組み込んでいるんですね。そして、ストラーダのハードウェアが進化すると、そのたびにカスタムイコライザーの仕様も変わっているのだそうです。それは当然ですよね。「新モデルは、こんな音が出せるようになったのか、それならこういうところの調整したいね」という具合にミキサーズラボからの要求レベルが上がってくる。それに合わせてカスタムイコライザーを作ってチューニングしてきたんです。

 カスタムイコライザーでミキサーズラボが示すいい音を具現化してきているわけですが、パナソニックはより高い実現度を達成するために勉強もしていて、ミキサーズラボのレコーディングスタジオで楽曲の音の構成とか、特別講座に参加したりしているんですね。「音の匠」のチューニングについてもデータを見て音を聴いて、そのノウハウを蓄積してきている。結果、開発エンジニアの中で“いい音”の認識がしっかり育ってきているんですね。

野村:そうかもしれないですね。“理由がわかると数学は楽しい”というのと同じで、目指すものが理解できるというのは大事ですよね。

長谷川:ミキサーズラボとのやり取りの中で新しいモデルのプロトタイプを体験してもらうと、いつも言われるのが「お、ここ破綻しなくなったね」だそうなんです。

野村:わかりますわかります。良くなってるという誉め言葉ですね。

長谷川:イコライザーの調整の時、レベル上げていくとひずんだりしていたものが、ひずまなくなったりというと、そういうセリフ出ますよね。調整しても安定した音が再生される。破綻しなくなると、もっとこうしてみようが出てくる。調整の幅が広がって以前よりもいい結果が生まれる。両輪が上手く回って進化を重ねていけるんですね。

野村:モノづくりってそういうところがあって、それが楽しいというのありますね。良い流れの中で開発されてきたストラーダだからこそ、今の高評価があるんでしょうね。

長谷川:そうですね、あたらめて試聴室で聴いてみると、音の底上げが大幅に履かれているのがよくわかりますね。実は今回、デモカーの用意もあるんです。さっき話した音の匠はクルマで音楽を楽しむための機能、確かめてみましょう。

野村:そうですね、聴いてみましょう。

クルマでの音を最適化する機能であることがよくわかる(野村)
聴かせどころを知り尽くしたレコーディングエンジニアならではのワザ(長谷川)

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車両純正装備からAVナビのみCN-F1X10BGDに換装したデモカー。トヨタRAV4で試聴した。

長谷川:トヨタのRAV4で、聴いてみました。直後に車内で印象を語ってみましょう。

野村:試聴室の印象としても言いましたけれど、「音の匠」の<極(きわみ)サラウンド>、<匠(たくみ)マスターサウンド>とも、クルマの中での音を最適化するべく調整されているというのがよくわかりました。音楽をいかに楽しく聴かせるかを意識したチューニングですね。

長谷川:聴かせどころを知り尽くした調整。レコーディングエンジニアならではのワザですね。とんでもなくうまく作っている。そして、試聴室じゃなく、クルマで聴いてこそ真価が確かめられます。

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野村:スピーカーはRAV4に初めからついているものですよね? その純正スピーカーに向けて開発されると、純正スピーカーでもここまで聴けるんだなと改めて認識できました。やはり、コストのかけ方という面で純正スピーカーは厳しいですし、スピーカーユニットの取付けという面でもあまり音響的な配慮は期待できない。ですけれど、このストラーダのようなAVナビがあると、純正スピーカーそのままでもかなり楽しめてしまう。クルマによっては、装着している純正スピーカーとの相性も出てきそうですけれど、その場合は「音の匠」をONにしたうえで使用できるイコライザーがあるので、微調整すればいいですね。少なくともこのRAV4に関しては相性良かったと思います。

長谷川:私はRAV4で聴いてみて、ストラーダの素の音が良くなっていることもあって、純正スピーカーだとここまでしか音楽の表現できないんだなと、「音の匠」がOFFの時に感じたんです。試聴室でいいスピーカーと組み合わせて聴いた後だけに、なおさらでしたね。そして、<匠(たくみ)マスターサウンド>は聴き応えや音の躍動感がグンと上がるし、<極(きわみ)サラウンド>は音場が上がって包まれ感が自然に感じられます。2チャンネルステレオを4チャンネルサラウンドにしているんのだけれど、これ、独自の演算で作ってるんですよね、見事なものです。純正でこういうサラウンドが聴けるのは面白い。ライブ盤はかなり盛り上がります。

野村:そうですね。純正だからこうですけど、当然ながらもっと上が目指せます。カスタムフィットタイプのスピーカーで、それほど高価なものじゃ無くても、スピーカーを交換したら確実に音質の底上げはできると思います。アドオンでいいトゥイーターを着けるのでも、質感が大きく変わりますしね。

長谷川:<極(きわみ)サラウンド>なんかは激変しそうですね。

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さまざまな楽曲を音量を変えつつ、さまざまなモードで試聴する野村氏。再生される音楽に自然と表情が緩む。

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聴きながらDYNABIG DISPLAYに触れる長谷川氏。左右方向にも角度調整できるディスプレイ構造に感心しきりな様子だ。

野村:個人的な好みではありますけれど、イコライザーのユーザーモードを少し調整しています。一部の楽曲だともう少し変えてというのはありましたけれど、オールマイティなバランスではこんなカーブに落ち着きました。

長谷川:そう、いいスピーカーだと、曲によって調整を変えたくなるとかなくなるんですよね。そのあたりは純正のクォリティ、仕方ないところですね。

野村:でも、ユーザーモードでイコライザー調整するのも、どうでも良い音ならいじる気にもならないわけで、クルマごとの味付けというか個人の好みに合わせてほんの気持ち……ふりかけたような、ゴマを少しくらいかな……。

長谷川:あ、美味そう……。

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野村氏が調整したRAV4のイコライザーカーブ。13バンドのグラフィックイコライザーは「音の匠」の効果の上に調整することができ、組み合わせるスピーカーに応じたサウンドチューニングが行える。

野村:ちょっと風味を加えて最高に美味しくしたいと思わせるような聴き応えがあるんですよね。それを純正スピーカーで実現できているのはいいですね。しかも、宇多田ヒカルも米津玄師もいけて、なんならクラシックも……とクルマでクラシック聴く人はあまりいないかもですけど……。

長谷川:聴きます聴きます。結構楽しい。だから、みんなも聴く前提で話しちゃいましょう(笑)。

野村:ですね。ノリのいいというかテンポの速いものなんかは、クルマで聴いても聴き馴染みがない人も楽しめるかもしれないですね。

長谷川:フルオケで、大きな編成の曲は面白いと思いますね。それに有名な曲だったら誰もがちょっとくらい耳にしたことがあるでしょうし。そういうクラシックの曲はあらゆる音の成分が含まれているから、細かく聴くと鳴らすのも難しかったりします。そういった曲もわりとしっかり聴けますね。

野村:そう。そういうクラシックが聴けるというのも言っておきたかった。

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「音の匠」の<極(きわみ)サラウンド>では、純正スピーカーとは思えない音場を創生。長谷川氏曰く、音場が上がって音に包まれる感じが自然だという。

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〜良い音のこと、その音を獲得するまでのこと〜

有機ELディスプレイの搭載で実現した圧倒的に薄い画面部デザインは何度見ても美しい。強度を確保するため、ハウジングにはマグネシウム素材が採用されている。

長谷川:改めて聴いてみて、よくできた製品だと感じますし、聴ける音、感じられる音楽が楽しいというのがいい。高忠実度なプレーヤーというのもあって、他のコンポーネントと組み合わせると細かな情報まで送り出しているかもしれないけれど聴ける音は楽しくないというものもある。このCN-F1X10BGDは、理屈抜きに楽しく聴こうよと言って鳴らすような存在は嬉しいです。

野村:言う通りかもしれません。僕もじっくり聴いてみて感じますけど、たくさんの人にこういうカーエンターテインメントを体験しながらドライブを楽しんでみて欲しいなと思います。

提供:パナソニック

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