邦題通りの一作という印象を受けた。見る者を現代とベル・エポック期の双方にいざなう、なんともあたたかな気持ちになるコメディで、ふと自分も「逢ったことのない先祖はどうだったのかなあ」と思いをめぐらせてしまった。
舞台は、フランス北部ノルマンディーの草原に佇む古い屋敷。ここを土地開発のため売るよう迫られたので、親戚4人が屋敷の調査をすることになった。ひょっとしたら、19世紀以来、空気が入れ替えられていなかったのではないか。そこで彼らが発見したのは、印象派の作品らしき絵画と、先祖アデルの手紙や写真だった。アデルはどんな女性だったのか、絵画を描いたのは果たして誰なのか? モネに限らず、ルノワール、セザンヌらが登場するのも印象深いし、「歴史上の大巨匠にも、普通にひとりの人間として生きていた時期があったのだ」ということを改めて思い出させる描写に、ほおが緩んだ。
アデルは親戚たちの祖先であるから、つまり、アデルがいなければこの4人は生まれていなかった。劇中のアデルは実に愛すべき、そして冒険好きな人物で、その性分はやはり、何らかの形で子孫に受け継がれていて、それが「血は争えぬ」ということなのだろう。と同時に、このようなユーモラスな作品が、たとえば明治維新の頃と現在の両方にスポットを当てた日本版として作られても面白いのではないかとも感じた。監督は『スパニッシュ・アパートメント』、『ダンサー イン Paris』のセドリック・クラピッシュ。現代パートの主人公セブをアブラム・バプレ、過去パートの主人公アデルをスザンヌ・ランドンが演じる。
映画『モネと時間旅行』
9月18日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下 ほか全国公開
監督・脚本:セドリック・クラピッシュ
出演:スザンヌ・ランドン、アブラム・ヴァプレ、ヴァンサン・マケーニュ、ジュリア・ピアトン、ジヌディーヌ・スアレム、ポール・キルシェ、サラ・ジロドー、セシル・ドゥ・フランス、オリヴィエ・グルメ、ヴァシリ・シュナイダー、ヴァランタン・カンパーニュ
原題:La Venue de l'avenir/2025 年/126分/フランス/フランス語/日本語字幕:古田由紀子/1:2.35/5.1ch/配給:セテラ・インターナショナル
(C) STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques


