ほんの小さなねじれが取り返しのつかない悲劇を生む、という感じだ。アン・ハサウェイとジェシカ・チャステインの共演なのだから、どんなストーリーでも成功を収めそうな気もするのだが、そこに、よりによってかなりダークでハラハラさせられる筋書きを当ててくるあたり、逆にとても気が利いているなあ、と私は思う。

 時代背景は、セリフから察するにジョン・F・ケネディ大統領がまだ健在の頃のようだ。アン扮するセリーヌも、ジェシカ扮するアリスも、ともに良き夫と良き息子を持っていて、一軒家の隣どうし、とても仲よく交流している。とある“自宅飲み”のシーンで、サックス奏者アート・ペッパーが50年代に残した演奏がさりげなくBGMとして使われているのも、なんとも粋だ。が、平穏な日々は長くはつづかなかった。とある不幸な事件が起きるのだ。セリーヌがそれに気づいたとき、そこには誰がいたか? セリーヌの心に疑念が生じ、それを受けたアリスがセリーヌに疑念を感じる。スクリーン越しで見る側にとっては「疑心暗鬼ではないか」と思えるような物事でも、出演者たちにとっては生きるか死ぬか、真剣そのもののマターである。そうなると隣でいても毎日がギスギスするばかり、最良の策はどちらかの家庭が引越しをするしかないのだが、かりにも、少し前までセリーヌとアリスは大の親友だったわけで……この映画ほどエクストリームではないにせよ、「自分も、ちょっとばかりこれと似た経験があったかもしれないな」と内省する鑑賞者も多そうだ。とにかく最後まで気が抜けないし、前半の展開はいささかスローながら“伏線”がたくさんなのでぜひ目と耳を凝らしてほしい。監督はブノワ・ドゥローム。

映画『隣人たち』

7月24日(金)より 全国公開

監督・撮影監督:ブノワ・ドゥローム
脚本:サラ・コンラット
出演:ジェシカ・チャステイン、アン・ハサウェイ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジョシュ・チャールズ
原作:オリヴィエ・マッセ=ドゥパス『母親たち』
2024年 | アメリカ・ベルギー・フランス・イギリス | 英語 | カラー | シネスコ | 5.1ch | 94分 | 字幕翻訳:中沢志乃
提供:カルチュア・エンタテイント
配給:ギャガ
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