2026年となった今でも、マイケル・ジャクソンは僕たちのヒーローだ。それは日本各地で開催されるオーディオショーで、彼の楽曲が再生されたときの来場者の表情を見ればわかる。
今回は、イギリスの人気スピーカーメーカーKEFが初めて発売したサウンドバーXIO(ジオ)で、マイケル・ジャクソンの映像作品を視聴してみよう。

Soundbar
KEF XIO
¥330,000 税込
●型式:一体型サウンドバー
●使用ユニット:50mmドーム型トゥイーター+コーン型ミッドレンジ/同軸×6、50mmコーン型フルレンジ×2、50×180mmコーン型ウーファー×4
●アンプ搭載数:12
●アンプ出力:合計820W
●接続端子:デジタル音声入力2系統(光、HDMI eARC)、LAN1系統、ほか
●寸法/質量:W1,210×H70×D165mm/10.5kg
XIOは直線を基調とした無駄のないフォルムで、ファブリック仕立ての質感の高さが外観上の特徴だ。シンプルなエクステリアではあるが、サウンドバー単体で、5.1.2再生に対応し、ドルビーアトモスやDTS:Xといったイマーシブオーディオと呼ばれる立体音響フォーマットの再生をサポートしている。
内部は合計12基のスピーカーユニットを搭載しているが、中核となるのはKEFの代名詞ともいえるUni-Q MXと呼ばれる小型同軸ドライバー。これを6基配置することで、ワンボディでありながら音像の定位精度と広い音場、そしてその一体感を高度に成立させている。加えて専用のレーストラック型低域ドライバーを組み込み、「VECO(Velocity Control Technology)」と呼ぶ独自の歪み低減技術と相まって、低域再生能力を高めている。アンプは高域/中域用と低域用でそれぞれ専用のクラスDアンプを割り当てたマルチアンプ駆動となる。
高価格帯のサウンドバーでは、ネットワークオーディオへの対応も大きなポイントだが、XIOはワイヤレスおよびワイヤード接続で対応する。専用アプリ「KEF Connect」を介してSpotifyやQobuzなどのストリーミングサービスを直接再生できるため、単体で完結するネットワーク対応スピーカーとしての側面も併せ持つ。なお、AirPlay、Bluetoothにも対応している。

内部構造図。50mm口径の超小型同軸ユニットUni-Q MXドライバーを前面に3基と、天面に上向きの3基の合計で6基を搭載している。アプリで本体を棚置きにするか、壁掛けにするかの指定ができるが、棚置きの場合は天面中央のユニットを鳴らさない設定となり、壁掛けの場合は本体前面中央のユニットが鳴らない設定となる。筐体左右には、それぞれ外側に向けた50mmフルレンジドライバーをサラウンドスピーカーとして組み込む。低域用のレーストラック形状ドライバーは、筐体の前後で対向配置として、ユニットの駆動を互いに相殺する仕組みで、強力な低音をクリアーに描き出す。いずれもKEFのハイファイ用スピーカー技術資産を盛り込んだカタチだ
真っ当な帯域バランスと確かなヴォーカルの定位を実感
XIOをパナソニックの液晶テレビTV-55W95BとHDMIケーブルで繋ぎ、eARC接続する。ソース機器はApple TV 4Kとパナソニックの4KレコーダーDMR-ZR1を使う。
XIOに備わる自動キャリブレーション機能を活用して、帯域補正を行なったうえで、まずは基本音質を確認すべくQobuzの『スリラー』を再生した。音声モードはダイレクト。アキュレイトな帯域バランスで、歪みの少ないサウンドステージと、ヴォーカルの確かな定位がクリアーに描写される。Uni-Qドライバーによる点音源再生のアドバンテージを実感した次第だ。
本命の映像ソースを試す。Apple TVでロンドン公演に向けたリハーサルの様子を収めたドキュメンタリー映画『THIS IS IT』を再生した。テレビ内蔵スピーカーでは、センターを中心にテレビ画面の横幅内で音場が展開するが、XIOに切り替えると、周波数レンジが大きく広がり、何より迫力が増す。
利便性重視のアイテムを超えたXIOのリファレンス的サウンド
本取材のハイライトとなったのは、マイケル・ジャクソン全盛期の映像を収録した2枚のDVDビデオだ。まずはBADワールドツアーのライヴ映像作品『ライヴ・アット・ウェンブリー』を再生したが、そのパフォーマンスは率直に言って衝撃的だ。マイケルの死後の遺品整理で見つかったVHSテープを元にしたという曰く付きの作品だが、1988年当時、29歳だった全盛期の彼のダンスのキレは圧巻で、そのパフォーマンスに圧倒されてしまう。
『ライヴ・イン・ブカレスト』は、1992年のルーマニア公演を収録した作品で、生前に公式発売された唯一のライヴ映像でもある。身体能力、音楽理解、ステージ上の空間認識、さらには精神力まで含め、「今、このレベルのステージをこなせるアーティストがどれだけいるのだろうか?」と鳥肌が立つ。2枚のディスクを観ているうちに、僕は視聴取材であることを忘れ、画面に釘付けになった。
忘れてはいけないのは、この感覚に至った理由の1つが、XIOの音の良さにあったことだ。ウェンブリーのライヴは、ロッシー圧縮のドルビーデジタル5.1ch音源、ブカレストのライヴはリニア2ch音源での再生であり、BDやUHDブルーレイのような高品位なサラウンドフォーマットではないものの、それでもマイケルのヴォーカルは非常に明瞭に描かれ、その周囲を包み込むようにバックコーラスとリズムがHiVi視聴室全体に広がっていく。
XIOは、KEFの最新音響技術とデジタル信号処理技術を集約した完成度の高いモデルだ。単なる利便性重視の製品にとどまらず、高音質志向のリスナーに向けたリファレンス的存在と位置付けてよいだろう。マイケルの全盛期のパフォーマンスがDVDビデオでしかリリースされていないのは、正直残念ではあるのだが、しかしXIOのサウンドは、DVDビデオというフォーマットの限界を超えていたと言っても過言ではない体験だった。
リファレンス機器
●液晶ディスプレイ:パナソニックTV-55W95B
●ストリーミング端末:アップルApple TV 4K
●4Kレコーダー:パナソニックDMR-ZR1
本記事で紹介した製品は、東京・青山にあるショールーム『KEF Music Gallery Tokyo』で試聴可能です。
ラグジュアリーブランドやデザイナーブランドの発信地である青山らしい、スタイリッシュな空間で、KEF製品各種の魅力を実際に体験できます。
試聴予約は公式サイトのフォームまたは電話(03-3409-2150)にて受付中。お気軽にお問い合わせください。
【KEF Music Gallery Tokyo 】
住所: 東京都港区南青山5丁目5番6号
東京メトロ表参道駅A5出口徒歩3分
電話: 03-3409-2150
営業時間: 11:00 ~19:00
>本記事の掲載は『HiVi 2026年夏号』




