ニュートラルでありながら、個性が明確
プリメインアンプやパワーアンプ、あるいはAVセンターで増幅された信号を、音の出口となるスピーカーまで送り届けるという重責を担うスピーカーケーブル。最終的な音質に大きな影響力を持つだけに、オーディオクエストでも入門者向けの手頃な価格のモデルから、音質を徹底的に追求したハイエンドモデルまで、個性豊かなケーブルを数多く用意しているが、今回採り上げるのは、前者。必要な長さに合わせてカットした状態で購入できる「スプール」(巻き取りリール)仕様のスピーカーケーブルの3タイプだ。

G2
¥79,200 (100m巻)税込
※切り売り対応品(¥792/1mあたり)
●導体 : LGC
●構造 : セミコンセントリック同芯線
●導体径 : 16AWG
SLIP164
¥247,456(152m巻)税込
※切り売り対応(¥1,628/1mあたり)
●導体 : LGC4芯
●構造 : セミコンセントリック同芯線
●導体径 : 16AWG×4
Q2
¥256,300 (100m巻)税込
※切り売り対応品(¥2,563/1mあたり)
●導体 : LGC
●構造 : ソリッド+セミコンセントリック同芯線
●導体径 : 15AWG
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G2
LGC導体を採用した最廉価ケーブル。高鮮度で素性の良さを実感した
まずはコストパフォーマンスの高さで根強い人気を誇るG2から見ていこう。2本の導体を平行に配置したフラットな形状が特徴的で、同ブランドとしては最エントリーのモデルとなる。導体には一般的な無酸素銅(OFC)よりも高純度で、結晶粒界が少ないロング・グレイン・カッパー(LGC)を採用している。
今回も宇多田ヒカルやチョ・ソンジンなど、Qobuzのハイレゾ音源を中心に聴いたが、気張らないニュートラルなサウンドが特徴的で、特定の色合い、癖っぽさも気にならない。明るく、華やかに聴かせるというタイプではないが、宇多田ヒカルの歌声は、繊細なヴィブラート、息づかいと、総じて鮮度が高い。
チョ・ソンジンのピアノでも整った帯域バランスは変わらず、質感は滑らか。派手さはないが、鍵盤のしなやかなタッチといい、反応の良さといい、随所でケーブルの素姓のよさを感じることができた。
SLIP164
LGC導体を同芯撚り4芯構造で配置。繊細かつダイナミックな表現力を満喫
続いて純度の高い銅(LGC)導体をセミコンセントリック(同芯撚り)で配置した4芯構造としてデザインされたSLIP164。機械的安定性も重視された設計で、柔軟性を保ちつつ、確かな性能を約束している。この4芯を組みとしたツインペア構造のため、バイワイアリング接続も考えやすい。
さてそのサウンドだが、目の前に拡がる空間がひと回り大きく、天井が高い。音調としては明るく開放的で、リズムの良さが際立つ。語るように歌う宇多田ヒカルの声は、語尾まで明確に再現され、その息づかいが実に生々しい。
チョ・ソンジンのピアノも緻密な響き、奥行の広さは健在。透明度の高い響きがホールに染み込むように拡がり、独特の繊細かつダイナミックな表現力を満喫できた。
Q2
単線+同芯という凝った構造が特徴。浸透力が高く緻密な音が見事だ!
最後はLGC単線を中心に配置して、その周囲を11本のLGC撚線を「らせん」状に覆わせるという実に凝った「単線+同芯導体」構造を採用したQ2。2本の導体をらせん状にした構造は、インダクタンスを最小限に抑えるため。四角の外装でしっかりと抑えることで、クールな外観と、安定した性能を実現している。
ここで目の前に拡がる風景が大きく変わった。中低域の厚みが増して、押し出しが強い。宇多田ヒカルは優しく包み込むような歌声が心地いい。ささやくような歌い出しから一気に高揚して歌う場面も、躊躇なくレスポンスが良好。チョ・ソンジンのピアノは、響きがしなやかで浸透力がある。特に右手側、つまり高音域の繊細さ、緻密さは見事だ。
総合的な表現力ということでは、やはりスプール仕様の最上位のQ2が頭ひとつ抜け出していた。ただ落ち着きのあるニュートラルな表現力のG2と、空間が広く、爽やかなサウンドが持ち味のSLIP164も、個性が明確で、実に楽しい。手間をいとわないのなら、アーティストや、再生楽曲によって使い分けて、楽しむのも“アリ”だと思う。
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HDMI、LAN、RCA、そして今回のスピーカーケーブルと、4回に渡ってお届けしたオーディオクエストのロングランテストリポート。全てのケーブルに共通して言えるのは、独自の設計思想、技術を積極的に取り入れ、ニュートラルで癖のないサウンド(HDMIでは映像も)を提供していること。今回のテストを通じて、ケーブルとしての主張は最小限に抑え、音楽、映像そのものをあるがままに表現するというオーディオクエストの明確なスタンスを実感することができた。
[使用した機器]
● スイッチングハブ : バッファローBS-GS2016/A
● ミュージックサーバー : デラN1A/3
● SACDプレーヤー : デノンDCD-SX1 LIMITED(DAC部を使用)
● プリメインアンプ : デノンPMA-SX1 LIMITED
● スピーカーシステム : Bowers & Wilkins 802 D4
>本記事の掲載は『HiVi 2026年春号』


