単線構造HDMIの利点を明確に実感

 放送、パッケージソフト、映像配信と、本格的な4K&HDR時代の到来によって、信号の受け渡しを担うHDMIケーブルの重要性が高まっている。4K/60pの信号を扱うには18Gbpsの伝送を約束するHDMI2.0、あるいはその上位規格となるHDMI2.1(48Gbps)への対応が不可欠だか、規格さえクリアーしていれば万全というわけではない。

 HDMIでは、基本的に復調後のベースバンドの映像信号を伝送することもあり、ケーブル性能の違いはブロックノイズのような圧縮ノイズの変化としては表れにくい。

 ところがケーブルによって、暗部でざわつきが気になったり、色の透明感が損なわれたり、画質への影響は意外に大きく、映像のコントラスト感、階調性といった部分も変わってくる。もちろん音質への影響も少なくない。つまりHDMIケーブルの選択は単にスペックだけでなく、最終的なパフォーマンスを慎重に見極める必要があるというわけだ。

今年2025年に創業45周年を迎えるオーディオクエストのこだわりとは

 今回は多彩なラインナップを誇るオーディオクエストのHDMIケーブルにスポットを当て、その画質/音質に注目してみたい。

 今年2025年に、創業45周年を迎えるオーディオクエスト。現在、米国カリフォルニア州アーバインに最新設備の研究所、工場を備え、「より高純度な信号伝送の実現」を開発理念として、高品質のオーディオ用/映像用ケーブルを世界の市場に向けて送り出している。

 HDMIケーブルを含むオーディオクエスト製ケーブルの特徴は、撚り線ではなくソリッド・コア導体と呼ばれる単線導体を採用していることだ。HDMIでは、「PSS(パーフェクト・サーフェス・シルバー)」と呼ばれる非常に純度の高い銀線、あるいは「LGC(ロング・グレイン・カッパー)」と呼ばれる非常に長い結晶構造を備えた導体に適材適所で銀をコーティングした素材を用いている。

 では、なぜ単線をメインで使っているのか。それは交流電流を流す際、高周波成分が導線の表面近くだけを流れるという表皮効果を考慮したもの。表皮効果は導体の異なる部分で高周波の伝送を遮断するため、一般的な撚り線導体ではどうしても伝送ロスが生じやすいが、単線構造の導体はこうした問題を軽減。歪みやタイミングエラーが抑えられ、電気的/磁気的干渉が軽減できる。ちなみに現行のHDMIケーブルは全て48Gbpsの高速データを安定して伝送するHDMI 2.1規格をクリアーした8K仕様となる。

 そしてもうひとつ注目されるのが、高級ケーブル2モデル限定となるが、同社のオーディオケーブルでも実績のある「DBS(Dielectric Bias System/誘電体バイアス・システム)」を搭載していることだ。これはケーブルの中心部にDC(直流)電圧印加専用の導体を配置して、72VのDC電圧を加えるというもの。

 DBSは、信号電圧を超える直流電圧を加え続けることで不規則な放充電の影響が抑えられ、信号の流れと干渉させることなく、ケーブルの状態を安定することができるという考え方だ。このDBSによって、いわゆるケーブルのエージングを不要にする、というオーディオクエストならではの特許技術である。

画像1: 創業45周年を迎える米国オーディオクエストの最新HDMIケーブル横並び全視聴!「48Gbps対応HDMIケーブル」【LONG RUN TEST REPORT】

HDMIケーブルは、内部的に19の信号線を束ね合わせた構造となっている。TMDSと呼ばれるデータライン(R/G/B/クロック/DDC[ディスプレイデータ]がそれぞれHot/Cold/Ground)5組合計15線+CEC機器連携+5V電源+プラグ検出用+予備となっている。一般的なHDMIケーブルでは、各線が細い線を束ねた「撚り線」となっているが(画像左)、オーディオクエストでは単線を用いている(画像右)。その単線構造が、オーディオクエスト製HDMIケーブルの最大の特徴である

●問合せ先 : デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオ お客様相談センター TEL. 0570(666)112

 

 

8本のHDMIケーブルをHiVi視聴室で同一条件で入念チェック

 早速、普及タイプのHDMIケーブルから、実力を検証しよう。テスト素材として『8K空撮夜景 SKY WALK』、『DUNE/デューン 砂の惑星』のUHDブルーレイを使った。主に前者はパナソニックの有機ELテレビTV-65Z95Aと4KレコーダーDMR-ZR1を直結して映像のパフォーマンスを(接続①)、後者はZR1とデノンのAVセンターAVC-A1Hに繋ぎ、音声のパフォーマンスをチェックした(接続②)。スピーカーはHiVi視聴室のリファレンスシステムBowers & Wilkins 800 D4シリーズとイクリプスによる7.2.6システム。

 

❶Pearl 48 落ち着いた画調と筋肉質の音

 エントリーモデルだが、端子部は他モデル同様、金メッキ処理を施した削り出しの仕様で、内部導体/eARC導体に単線LGCを使用、グラウンド導体は錫メッキ銅を採用する。

 映像は細部を強調したり、輪郭を際立たせたりせずに、落ち着いたフラットなトーン。ノイズの粒子が細かく、階調性が豊か。もう少し黒を締めて、コントラスト感を高めたいという思いも残るが、このクラスとしては上々の仕上がり。音は引き締まった筋肉質。セリフのニュアンス、効果音の描き分けもなかなか意欲的だ。

画像3: 創業45周年を迎える米国オーディオクエストの最新HDMIケーブル横並び全視聴!「48Gbps対応HDMIケーブル」【LONG RUN TEST REPORT】

Pearl 48
●導体 : シグナルライン/LGC、eARC/LGC、グラウンドドレイン/錫メッキ銅
●ラインナップ(税込価格) : ¥5,830/1m、¥8,250/2m、¥10,340/3m

 

 

❷Forest 48 ハイライトがキレイに伸びた映像

 グリーンのプラグデザイン、シースはPearl 48とよく似ているが、内部導体/eARC導体は、単線LGCに0.5%の銀コーティングを施している。グラウンドドレイン線は錫メッキ銅を採用。映像はハイライトがキレイに伸びて、大井競馬場の電飾が華やかだ。ノイズの粒子は細かく、階調の推移も滑らかで、自然な奥行感が得られる。サウンドは軽快で、セリフ、効果音の明瞭度が高い。

画像4: 創業45周年を迎える米国オーディオクエストの最新HDMIケーブル横並び全視聴!「48Gbps対応HDMIケーブル」【LONG RUN TEST REPORT】

Forest48
●導体 : シグナルライン/0.5%シルバーコーティングLGC、eARC/0.5%シルバーコーティングLGC、グラウンドドレイン/錫メッキ銅
●ラインナップ(税込価格) : ¥10,340/1m、¥14,740/2m、¥19,140/3m

 

 

❸Cinnamon 48 明るさ感が増した映像。音も軽快

 本モデルからポリエステル編組メッシュシースとなり、ケーブル自体も前の2モデルよりも、わずかに太い。導線は単線LGCとし、内部導体/eARC導体の銀コーティング量も1.25%に増えている。グラウンドラインは単線に0.5%銀コーティング単線LGCを使用。映像は全体に明るさ感が増して、色調の描き分けも余裕が感じられる。暗部のノイズはやや見えやすい傾向だが、階調の描き分けは滑らかだ。サウンドは軽快で天井が高い。効果音の響きはきめ細かく、開放的だ。

画像5: 創業45周年を迎える米国オーディオクエストの最新HDMIケーブル横並び全視聴!「48Gbps対応HDMIケーブル」【LONG RUN TEST REPORT】

Cinnamon 48
●導体 : シグナルライン/1.25%シルバーコーティングLGC、eARC/1.25%シルバーコーティングLGC、グラウンドドレイン/0.5%シルバーコーティングLGC
●ラインナップ(税込価格) : ¥17,600/1m、¥26,400/2m、¥34,100/3m

 

 

❹Carbon 48 自然な奥行感の映像。音の骨格も明快

 編組メッシュシースはCinnamon 48の色違いのカーボン(黒)カラーだが、プラグは縦方向に大きくなり、ケーブル自体もわずかに太く、硬い印象だ。LGC導体は単線LGCの銀コーティングは5%に増加、グラウンドドレイン線のLGC導体も1.25%銀コーティングが施されている。映像は鋭いフォーカス感が特徴的で、自然な奥行感があり、大井競馬場の電飾も華やかだ。サウンドは中低域が引き締まり、音像の骨格が明確。響き、余韻の描写も克明で、実在感に富んだセリフが印象的だ。

画像6: 創業45周年を迎える米国オーディオクエストの最新HDMIケーブル横並び全視聴!「48Gbps対応HDMIケーブル」【LONG RUN TEST REPORT】

Carbon 48
●導体 : シグナルライン/5%シルバーコーティングLGC、eARC/5%シルバーコーティングLGC、グラウンドドレイン/1.25%シルバーコーティングLGC
●ラインナップ(税込価格) : ¥29,700/1m、¥44,000/2m、¥58,300/3m

 

 

❺Vodka 48 見通しの良い映像と明瞭度の高い音

 ブルーに仕上げられているが、外観はまさにCarbon 48の色違い版という印象で、プラグ、ケーブルともにほぼ同等に見える。LGC導体の銀コーティング量が異なり、一気に10%まで増えている。グラウンドドレインも5%銀コーティングの単線LGC導体。映像は総じて明るいトーンで、細部の見通しがいい。ノイズの粒子が細かく、階調性が豊か。夜の大井競馬場のパドックのディテイルまで鮮明に浮かび上がる。サウンドは明瞭度が高く、軽快。効果音は複雑な響きが空間にフワッと放出され、浮遊する。

画像7: 創業45周年を迎える米国オーディオクエストの最新HDMIケーブル横並び全視聴!「48Gbps対応HDMIケーブル」【LONG RUN TEST REPORT】

Vodka 48
●導体 : シグナルライン/10%シルバーコーティングLGC、eARC/10%シルバーコーティングLGC、グラウンドドレイン/5%シルバーコーティングLGC
●ラインナップ(税込価格) : ¥58,300/1m、¥82,500/2m、¥103,400/3m

 

 

❻ThunderBird 48 明るくしかも黒が締まる映像

 外観は色遣いも含めてVodka 48とよく似ているが、ケーブル半径はひと回り太く、硬い。単線LGCの銀コーティングの量は10%と同じだが、このモデルはグラウンドドレインの導体にも10%銀コーティングを施している。実際の映像も、全体に明るく見せる画調はVodka 48とよく似ているが、黒の締まり、見た目のフォーカス感など、本ケーブルの優位性は明らか。サウンドは細やかな質感で、空間の描写が雄大。響きの粒子が鮮明に浮き上がる様子も好ましい。

画像8: 創業45周年を迎える米国オーディオクエストの最新HDMIケーブル横並び全視聴!「48Gbps対応HDMIケーブル」【LONG RUN TEST REPORT】

ThunderBird 48
●導体 : シグナルライン/10%シルバーコーティングLGC、eARC/10%シルバーコーティングLGC、グラウンドドレイン/10%シルバーコーティングLGC
●ラインナップ(税込価格) : ¥103,400/1m、¥139,700/2m、¥176,000/3m

 

 

❼FireBird 48 絵も音もさすがの高品位。お見事

 使い初めからほどよいエージング効果が得られるというDBS技術を備えた高級ケーブル。導線はPSS(ピュアサーフェスシルバー)と呼ぶ100%銀線とし、グラウンドラインはLGC単線を10%銀コーティングとしている。映像は白が気持ちよく伸びて、黒がキリッと締まるという実に堂々とした再現性だ。メリハリの効いた高コントラスト調で、黒から中間調にかけての階調性も滑らか。暗闇にうっすら見える国会議事堂の屋根のディテイルも鮮明に映し出してみせた。サウンドは帯域バランスが整った正攻法の仕上がりで、全帯域にわたってムラがなく、気持ちよく吹き上がる。気配を感じさせる微小な信号から大振幅の爆破音まで、効果音の情報量も豊かだ。

画像9: 創業45周年を迎える米国オーディオクエストの最新HDMIケーブル横並び全視聴!「48Gbps対応HDMIケーブル」【LONG RUN TEST REPORT】

FireBird 48
●導体 : シグナルライン/100% PSS、eARC/100% PSS、グラウンドドレイン/10%シルバーコーティングLGC
●ラインナップ(税込価格) : ¥205,700/1m、¥287,100/2m、¥367,400/3m

 

 

❽Dragon 48 圧倒的な高品位はただ者ではない!

 オーディオクエストのHDMIケーブル最高峰。外観はFireBird 48の色違いという印象だが、導線は信号ライン/eARC/グラウンドライン全てをPSS、100%の銀線としている。DBSシステムを搭載。自信に満ちたコントラスト感といい、引き締まったフォーカス感といい、やはりただ者ではない。色再現も意欲的で、大井競馬場の電飾は鮮やかで、透明感がある。ここまで細部まで色濃く描き出すと、生半可なケーブルの場合、どうしてもざわざわとしたノイズが目立ちやすくなるが、Dragon 48はそうした不安は皆無だ。音はどっしりとした重みを伴なった押し出しの強さが特徴的だ。陰影に富んだコクのある聴かせ方で、響きの質感が高い。

画像10: 創業45周年を迎える米国オーディオクエストの最新HDMIケーブル横並び全視聴!「48Gbps対応HDMIケーブル」【LONG RUN TEST REPORT】

Dragon 48
●導体 : シグナルライン/100% PSS、eARC/100% PSS、グラウンドドレイン/100% PSS
●ラインナップ(税込価格) : ¥353,100/1m、¥470,800/2m、¥588,500/3m

 

 

  コントラスト感、S/N感、色再現、階調性と、ケーブルの実力としては、全てのシグナルラインを100%銀線とし、さらに自慢のDBS技術を投じた最高峰とセカンドモデル、Dragon 48とFireBird 48が大きく抜きん出ていた。名画伯による油絵を思わせるような、濃密かつ繊細な描写を持ち味としたDragon 48。解像度とS/N、そして色再現を高次元でバランスさせたFireBird 48という関係で、いずれもレベルが高い。

 DBSを搭載しない通常スタイルのHDMIケーブルでは、ダイナミックレンジが広く、引き締まったフォーカスが特徴的なCarbon 48と、落ち着きのあるコントラスト感で、穏やかな質感の再現性を示したForest 48が印象に残った。特に前者は躍動感に富んで、小気味よく反応するサウンドも魅力的で、価格からするとお買い得感がある。

 今回8機種ものHDMIケーブルを一気に視聴したわけだが、多くの発見があり非常に勉強になった。4K&HDR映像、そしてドルビーアトモス時代になり、HDMIケーブルが最終的なシステムの品位にもたらす意味合いが、ますます高まっていることを改めて実感した。

 

>本記事の掲載は『HiVi 2025年夏号』

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