2007年にリンから「KLIMAX DS」が発売され、オーディオファイルが真剣に取り組むべき「ネットワークオーディオ」という新しい扉が開かれた。オーディオ評論活動を始めたばかりのぼくは、2008年の春に自室に持ち込まれたKLIMAX DSで、LINN RECORDSが発売し始めたハイレゾファイルを聴いてその音のすばらしさに感激、「オーディオの未来はここにある!」と確信し、ちょっと無理をしてKLIMAX DSを購入したのだった(当時290万円だったか……)。

画像1: ネットワークスイッチで、“確かに”ハイレゾ再生の音が変わる! SOtM「sNH-10GPSMC」を自宅で試し、改めてネットワークのノイズ対策の重要さを確認した

 リンジャパンと相談しながらネットワーク環境の整備に取り組んだが、当時は汎用のNASやLANケーブル、ルーター付属のネットワークスイッチを用いてKLIMAX DSを使っていた。当時はそうするしかなかったわけである(で、さまざまなトラブルを抱え込むことになるのだが、ここでは触れないことにする)。

 2010年代に入ったあたりから、オーディオ用を謳うノイズ対策に意を払ったネットワーク関連機器が登場するようになる。それらを自室で試してその効用の大きさ、つまり高音質化に納得し、DELAから登場したミュージックサーバー(NAS)やネットワークスイッチを購入する。その後、高音質音楽ストリーミングサービスの登場に合わせて、アコースティックリヴァイブの4分割LANケーブルやエディスクリエーションの光絶縁ツールなどを導入することで、自分なりに満足できるネットワークオーディオ環境を構築できたと自負している。

 「ネットワークオーディオの真の高音質化を目指すなら、ネットワーク周辺のノイズ対策を徹底すること」。これが15年以上ネットワークオーディオに取り組んできたぼくの結論だ。

オーディオ専用ネットワークスイッチ:SOtM sNH-10GPSMC
¥1,320,000(税込、銀線仕様)、¥1,210,000(税込、銅線仕様)
●製品構成:sNH-10G、電源ユニット、特製Yケーブル、マスタークロック(sCLK-OCX10)、クロックケーブル(dCBL-BNC50)

画像2: ネットワークスイッチで、“確かに”ハイレゾ再生の音が変わる! SOtM「sNH-10GPSMC」を自宅で試し、改めてネットワークのノイズ対策の重要さを確認した

<sNH-10G>●接続端子:RJ-45✕8、SFP✕2、10MHz マスタークロック入力●寸法/質量:W296×D211×H50mm/2kg
<電源ユニット>●寸法/質量:W106×H48×D230mm/2kg
<マスタークロック>●寸法/質量:W106×H48×D245mm/1.5kg

画像: sNH-10GはLANポート8口、SFPポートを2口備えたスイッチングハブで、sNH-10GPSMCに同梱されるモデルにはマスタークロック入力機能も備わっている。今回はここに外部クロックをつないで使ってみた

sNH-10GはLANポート8口、SFPポートを2口備えたスイッチングハブで、sNH-10GPSMCに同梱されるモデルにはマスタークロック入力機能も備わっている。今回はここに外部クロックをつないで使ってみた

sNH-10Gのラインナップ
標準モデル¥264,000(税込)、リクロックモデル¥286,000(税込)、リクロック/マスタークロック入力モデル¥308,000(税込)

スペシャルエディション 銀線仕様¥54,450(税込)追加、銅線仕様¥48,400(税込)追加
※リクロック仕様でない場合は電磁波シールド追加とコンデンサー交換のみの対応

 韓国SOtM(ソム)はネットワークオーディオ関連機器で定評のあるブランド。その名前は“Soul Ofthe Music”のカシラ文字から採られているそうだ。その輸入元であるブライトーンの福林羊一さんから「オーディオ専用ネットワークスイッチのsNH-10Gのスペシャル・エディションを試してみませんか」とのお誘いが。

 SOtMの評判は何人かのオーディオ仲間から聞いていたので「それはぜひ!」ということで、12月某日、「sNH-10GPSMC」がぼくの部屋に持ち込まれた。これはオーディオ用ネットワークスイッチ「sNH-10G」と別筐体電源ユニット、10MHzクロックジェネレーター「sCLOCK-OCX10」、クロックケーブル「dCBL-BNC50」のセット。自室で愛用しているネットワークスイッチDELAの「S100」と比較試聴しようというわけである。

 sNH-10Gの概要について触れよう。本機は8系統のRJ-45ポートの他、光LAN接続可能な2系統のSFPポートが装備されている。高性能なクロックモジュール基板が実装されているリクロック機能モデルに加え、10MHzマスタークロック入力付きモデルも用意されている。

 ちなみに今回借用したスペシャル・エディションは、電磁波シールドが追加され、コンデンサーがEvoxと呼ばれる高価なパーツに換装されている。加えて電源ラインには銀単線が奢られているという(他に銅線仕様もラインナップ)。まあここまで物量が投入されたネットワークスイッチを使ってみるのは初めてだ。よく考えてみると、コレ「オーディオ機器」ではなく「ネットワーク周辺機器」なのだが……。

画像3: ネットワークスイッチで、“確かに”ハイレゾ再生の音が変わる! SOtM「sNH-10GPSMC」を自宅で試し、改めてネットワークのノイズ対策の重要さを確認した
画像: 現在山本邸では、PLC経由でオーディオルームにネットワークを引き込み、そこからDELAのネットワークスイッチ「S100」に入力、さらにエディスクリエーションの光絶縁ツール「FIBER BOX 2」を通してからNAS「N1A/2」経由でネットワークプレーヤーのDMP-A10につながっている

現在山本邸では、PLC経由でオーディオルームにネットワークを引き込み、そこからDELAのネットワークスイッチ「S100」に入力、さらにエディスクリエーションの光絶縁ツール「FIBER BOX 2」を通してからNAS「N1A/2」経由でネットワークプレーヤーのDMP-A10につながっている

 本機のRJ-45ポートとDELAのミュージックサーバー「N1A/2」を接続、N1A/2とエバーソロのネットワークオーディオプレーヤー「DMP-A10」をLAN接続し、同様の接続状態で常用しているDELAのネットワークスイッチS100とつないだ音を比較してみた。

 内田光子がクリーブランド管弦楽団を弾き振りしたモーツァルトのピアノ協奏曲のハイレゾファイルを聴いてみたが、驚くほど音調が違う。sNH-10GにLAN接続した音はとても華やかで鮮度感に満ちた音がする。またソノリティの向上も明らか。S100接続で少し気になっていたヴァイオリンの高音部のヒリつきが雲散霧消し、スッと抜けるようになったのである。

 ザ・ローリング・ストーンズの1975年のアルバム『ブラック&ブルー』が新たにリマスターされ、ハイレゾファイルで登場した。冒頭のファンク・チューン「ホット・スタッフ」を聴いてみたが、sNH-10GにLAN接続した音は、クリスプなギターカッティングにきらびやかな輝きが感じられ、じつにシャープ。銀線を使った「オーディオ機器」同様の味わいが感じられる。

画像: 山本さんは現在、ネットワークプレーヤーとしてエバーソロの「DMP-A10」(¥825,000、税込)を愛用中だ。今回は上図の接続で、ストリーミングサービスのQobuzの音を中心に試聴した

山本さんは現在、ネットワークプレーヤーとしてエバーソロの「DMP-A10」(¥825,000、税込)を愛用中だ。今回は上図の接続で、ストリーミングサービスのQobuzの音を中心に試聴した

 S100につないだ音もけっして悪くはないのだが、比較すると音色がモノトーンに感じられる。うーむ、この違いは驚き。ネットワーク周辺のノイズ対策を進めることで「音調」まで変化するのだろうか。もう一度言うが、コレ「オーディオ機器」ではなく「ネットワーク周辺機器」なのだが……。

 次にマスタークロックジェネレーターのsCLOCK-OCX10をsNH-10Gにつないだ音を聴いてみよう。モーツァルトのピアノ協奏曲では、サウンドステージがワイドに広がり、ピアノ、弦楽器群ともに音像定位の安定感がぐんと向上する効果が得られた。とくに高さ方向の音場の広がりが断然違う。

 大好きなジャズ・ピアニスト、フレッド・ハーシュの最新作のハイレゾでは、センター定位するピアノ音像のスタビリティがぐんと向上することが確認できた。シンバルの音の粒子が中空を漂うリアリティもこのマスタークロックジェネレーターを加えることで明らかに増す。音場の拡大と音像の安定感。sCLOCK-OCX10を加える効用は、まずそこにあることが確信できた。

sNH-10Gの3台使いで、ホントに音が変わるのか? ネットワークの不思議に挑戦

画像4: ネットワークスイッチで、“確かに”ハイレゾ再生の音が変わる! SOtM「sNH-10GPSMC」を自宅で試し、改めてネットワークのノイズ対策の重要さを確認した
画像5: ネットワークスイッチで、“確かに”ハイレゾ再生の音が変わる! SOtM「sNH-10GPSMC」を自宅で試し、改めてネットワークのノイズ対策の重要さを確認した

 ブライトーン福林さんからの提案で、ネットワークスイッチを3台直列につないだら音が変化するかを確認した。準備した3台はいずれもリクロック機能を搭載しているので、これを通すことで音楽信号のクロックが取り直され、音質に変化があるのではないかという狙いだ。さらに2台のsNH-10Gは外部クロック対応モデルだったので、sCLK-OCX10からクロックを供給している。

 さて、福林さんからもうひとつ提案が。「今日はsNH-10Gをもう2台持ってきているので、合わせて3台をシリーズにつないでみませんか。sCLOCK-OCX10は出力が3系統あるので、クロックも供給できます」

 う〜む、そんなことやって何か意味があるのだろうか、と思いつつ3台接続してみると……。これが効くんですね。静寂の気韻がいっそう深くなり、ローレベルのリニアティが明らかに向上するのである。たとえば休止符に向かうピアノの余韻がいっそう長く感じられ、その休止符の深さが増すのだ。シリーズ接続することで、S/Nが良くなるということなのだろう。

 sNH-10Gを3台購入する資金があるのなら、もっと高級なネットワークプレーヤーを購入したほうが良いのでは……とも思うが、ネットワークオーディオをとことん追求している方にとっては、これが面白いトライアルであることは間違いないだろう。

(撮影:嶋津彰夫)

This article is a sponsored article by
''.