不世出の才人、チャーリー(チャールズ)・チャップリンを題材にしたドキュメンタリー映画。あれほどスケールの大きな人物をくまなくドキュメントしようとしたら数十時間あっても足りないのではと感じるが、ここでは的を絞って約90分にまとめられている。ポイントとなるのは「彼がロマ(ジプシー)の血を引いていたこと」、そして「家族から見たチャーリー像」だ。劇中で父親の足跡を辿るのは、息子マイケル・チャップリンや娘のジェラルディン・チャップリン。華やかな女性関係のあったチャーリーだけに、家庭の内部はさぞドロドロだったのではないか。「父親とはどこか距離を置いていた」的な発言もあるが、マイケルにしても今では相当な高齢であり、「チャーリー・チャップリンの息子として生まれてしまった運命」を穏やかに受け入れている感じだ。監督は孫のカルメン・チャップリンが務めている。
往年のチャップリンの名作映画からのサンプリングもあり、白黒のコントラスト、左右と奥行きを生かした画面構成、軽やかな身のこなしには改めて見とれること必至。譜面の読み書きはできなかったが第一級の作曲家であった(つまりマイケル・ジャクソンと同じ)ことについても触れられている。ロマ関連ということで、ギター奏者ストーケロ・ローゼンバーグの発言と演奏場面があるのにもオヤと目を見張らされ、チャップリンとジャンゴ・ラインハルト(編注:ベルギーのギター奏者。ジプシー・スウィングの創始者とされる)が出会ったことはあるのだろうか、とも考えた。ほかジョニー・デップやエミール・クストリッツァも登場。
映画『チャップリン』
12月19日(金)より角川シネマ有楽町ほか全国順次公開
出演:マイケル・チャップリン ジェラルディン・チャップリン ジョニー・デップ トニー・ガトリフ エミール・クストリッツァ ストーケロ・ローゼンバーグ リタ・カベルト ファルキート
監督・脚本:カルメン・チャップリン
音楽:ナサニエル・メカリー 撮影:ケネス・オリベ 編集:フーリア・フアニス
2024年|94分|スペイン・ベネルクス・イギリス・フランス|原題:CHAPLIN SPIRIT OF THE TRAMP|カラー&モノクロ|5.1ch|1.85:1 日本語字幕:渡邉一治 配給:アンプラグド
(C) The Caravan Trail, A.I.E, Kwanon Films Limited, and Submarine Sublime 2024
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