適材適所の巧妙な音質設計が光る

 CDプレーヤーとプリアンプ、プリアンプとパワーアンプなど、増幅前の微弱なアナログ信号を伝送するインターコネクトケーブルこと、オーディオ用ラインケーブル。最もベーシックなケーブルとあって、オーディオクエストのラインナップも豊富だ。

 今回は最も注目度の高いRCA端子を備えたアンバランスケーブルにスポットをあて、売れ筋モデルを中心に紹介していくことにしよう。試聴はQobuzから宇多田ヒカル、オスカー・ピーターソン、チョ・ソンジンなど、ハイレゾ音源も含めて、聴き慣れた楽曲を再生している。

取材はHiVi視聴室で実施、Qobuzを利用してハイレゾ音源を再生している。再生した主な音源は以下の通り。「First We Take Manhattan/ジェニファー・ウォーンズ」(44.1kHz/16ビット)、「イージー・ダズ・イット/オスカー・ピーターソン・トリオ」、「花束を君に/宇多田ヒカル」「モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番/チョ・ソンジン(pf)ネゼ=セガン指揮ヨーロッパ室内管弦楽団」(96kHz/24ビット)

[使用した機器]
●スイッチングハブ : バッファローBS-GS2016/A
●ミュージックサーバー : デラN1A/3
●SACDプレーヤー : デノンDCD-SX1 LIMITED(DAC部を使用)
●プリメインアンプ : デノンPMA-SX1 LIMITED
●スピーカーシステム : Bowers & Wilkins 802 D4

 

取り回し良好なTOWER。中音域重視のチューニングでフレッシュ

 まずはエントリーモデル、TOWERだが、写真からもお分かりのように、比較的細めのケーブルで、柔軟性が高く、取りまわしが良好。導体は長粒銅(Long Grain Copper)の単線として、発泡ポリエチレン絶縁体との組合せで、音質を整えているという。ノイズ対策としてグラウンドとシールドの導線を分けて、別々に送り出すADB(Asymmetrical Double Balanced)構造を採用。音声信号の方向性も表記している。

 さてそのサウンドだが、低域はほどよく締まり、キレ味のある明瞭度の高い聴かせ方が特徴的だ。無理のない中音域重視のチューニングだが、オスカー・ピーターソンはピアノのタッチが鮮明で、バスドラム、ベースの吹き上がりも悪くない。宇多田ヒカルの声はフレッシュで、若々しい。

TOWER ¥8,580 / 1m
●導体 : LGC単線
●絶縁体 : PEフォーム
●ラインナップ(税込価格) : ¥7,810 / 0.6m、¥9,350 / 1.5m、¥10,230 / 2m
●問合せ先 : デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオ

画像2: アナログ接続の価値を良く識るオーディオクエストの最新ケーブル4本を試す【LONG RUN TEST REPORT】

 

ワイドレンジ指向のGOLDEN GATE。フォーカスもビシッと決まる!

 次はGOLDEN GATE。L/Rで独立させたコネクターから比較的近距離で1束のケーブルにまとめているスタイルはTOWERと一緒だが、ケーブル自体はやや太く、シースも上級モデルに近い。導体には高純度で滑らかな表面を持つ銅導体「PSC(Perfect Surface Copper)」として、これをADB構造として収めている。絶縁体は発泡ポリエチレン。金属層によるノイズ消散システム、NDS(Noise-Dissipation System)を装備している。

 サウンドはワイドレンジ志向で、フォーカスがビシッと決まる。帯域バランスは癖のないピラミッド型。ベース、バスドラムも量感豊かに聴かせるというタイプではないが、低域の音階の変化を確実に描き分け、目の前に拡がる空間が雄大で、気持ちいい。宇多田ヒカルの声は透き通るように滑らかで、ヴィブラートが艶っぽい。

GOLDEN GATE ¥17,600 / 1m
●導体 : PSC単線
●絶縁体 : PEフォーム
●ラインナップ(税込価格) : ¥15,400 / 0.6m、¥18,700 / 1.5m、¥19,800 / 2m

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PSC導体採用のRED RIVER。音の鮮度が高く、中低域も厚い

 次はRED RIVER。本ケーブルからL/Rケーブルが完全に独立した構造となり、自ずとケーブル自体も太くなる。導体はよりグレードの高いPSC(Perfect Surface Copper)として、そこに高い空気含有率を誇る窒素注入のハードセルフォームポリエチレン絶縁体を組み合わせている。高周波/電磁干渉を効果的に吸収、反射するNDSを採用。

 さらに3本の同一サイズの導体を配置するトリプルバランスド・ジオメトリー構造としてノイズ対策を徹底している。金メッキ端子は、ハンダを使わない冷間溶接仕様だ。

 基本的な音調は落ち着きのある大人っぽい質感で、中低域の厚みが増す印象だ。ピアノの立ち上がりの鋭さ、ヴァイオリンの響きの滑らかさなど、随所で非凡さを感じさせ、音そのものの鮮度が高い。ハイレゾ音源で聴くオスカー・ピーターソンはピアノとベースが躍動し、ドラムスの切れ味も良好。宇多田ヒカルの息づかい、ヴィブラートの生々しさがいっそう際立つ。チョ・ソンジンのピアノでは、そのきめ細かな響きの余韻に聴き入ってしまった。

RED RIVER ¥41,800 / 1m
●導体 : PSC単線
●絶縁体 : ハードセルフォーム
●ラインナップ(税込価格) : ¥38,500 / 0.5m、¥46,200 / 1.5m、¥49,500 / 2m

画像4: アナログ接続の価値を良く識るオーディオクエストの最新ケーブル4本を試す【LONG RUN TEST REPORT】

 

高度な内容を語るYUKONは自然で総合的な表現力に優れる

 最後は紺と黒の編み込みのシックなジャケットが特徴的なYUKON。導体はPSCをより純度を高めたPSC+(Perfect Surface Copper Plus)として、トリプルバランス構造と組み合わせた。絶縁体は、導体と絶縁体の接触を最小限に抑えることで信号のエネルギー損失が抑えられる、ポリエチレン・エアチューブを採用。ノイズ対策のNDSについても複数の金属層とカーボンを組み合わせた3層のシールド構造と豪華だ。さらにハンダを使わない冷間溶接と、直接銀メッキ処理された純パープルカッパー端子を奢っている。

 空間の拡がりといい、中低域の張り出しといい、随所でグレードの違いを実感させられる。重みのある筋肉質の低音が特徴的で、ベースの響きも厚く、バスドラムの押し出しも強い。ワイドレンジ再生を志向しているのは明らかだが、癖の少ない自然な響きが持ち味で、空間の拡がりもスムーズだ。総合的な表現力の差を実感させる説得力のあるサウンドだった。

YUKON ¥93,500 / 1m
●導体 : PSC+単線
●絶縁体 : PE Air-Tube
●ラインナップ(税込価格) : ¥90,200 / 0.5m、¥107,800 / 1.5m、¥122,100 / 2m

画像5: アナログ接続の価値を良く識るオーディオクエストの最新ケーブル4本を試す【LONG RUN TEST REPORT】

 導線の素材、絶縁材料、ノイズ対策、さらには機器との接点となるプラグ設計と、今回試聴したケーブルは、グレードに合わせて適材適所で採用している印象で、最終的なサウンドからも明確なメッセージを感じ取ることができた。

 今回の取材ではフォーカス鋭く、小気味のいいサウンドで楽しませてくれたGOLDEN GATEと、押し出しの強い、濃密な響きで魅了したYUKONの2モデルが特に印象に残った。

 

お客様相談センター ☎︎ 0570(666)112

 

>本記事の掲載は『HiVi 2026年冬号』

 

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