HiVi2025年秋号126ページでご紹介したように、我が家では新たに購入したネットワークオーディオプレーヤーのエバーソロDMP-A10とAVセンターのマランツCINEMA70sで、「Qobuz Connect」を用いてこの高音質ストリーミングサービスを利用している。「Qobuz Connect」に対応する製品は大きな広がりを見せていて、高級オーディオ機器にも採用例が見られるようになってきた。ドイツのハイエンドオーディオ・メーカー、ブルメスターの最新プリメインアンプ232もその1つ。ここでは、このアンプで2つのスピーカー、エステロンAURA(オーラ)とソナス・ファベールGuarneri(ガルネリ)G5を鳴らして、その実力を明らかにしてみたい。

伝統と最新技術が融合したブルメスターの超本格プリメイン

 ブルメスターのスタートは1978年。プロミュージシャンで、電気工学を学んでいたディーター・ブルメスター氏が理想の音楽再生を目指して、ドイツ・ベルリンの地で設立した。以来、同氏は“Art for the Ear”というスローガンを掲げ、パワーアンプやCDプレーヤー、D/Aコンバーターなどオーディオ・エレクトロニクス分野で数多くの名機を発表してきた。2015年にブルメスター氏はこの世を去ったが、彼の設計思想、フィロソフィーを受け継いだメンバーがドイツ伝統のクラフトマンシップに基づいたハイエンドオーディオ機器を開発し続けている。

 ここで採り上げる最新世代のプリメインアンプ232は、ネットワークオーディオ機能とD/Aコンバーターを内蔵した製品で、これ1台でストリーミング再生が完結するオールインワン機。対応するストリーミングサービスはQobuzの他、TIDAL、Spotifyなどで、Roonの出力先となるRoon Ready機でもある。デジタル入力はRJ45イーサネットの他、AES/EBU(XLR)、SPDIF(同軸、光)、加えてeARC対応のHDMI端子も装備している。大型テレビとの連携も考えられているわけだ。アナログ入力はバランス(XLR)2系統で、サブウーファー出力(モノXLR)を装備している。

 まず、ブルメスターらしい重量感に満ち溢れたマッシブなデザインに目が惹きつけられる。機能主義を掲げ、モダンデザインの礎となったバウハウスの伝統を持つドイツ製品ならではの佇まいと言っていいだろう。質量は約30kgと一人で持つのはキケンな重さだ。

 AB級動作の232の出力段は、合計8個のパワートランジスターを実装したパラレル・プッシュプル構成。約450VAのカスタムメイドのトロイダルトランスと約80,000μFのフィルターコンデンサーの超本格的リニア電源回路を搭載している。

 

Integrated Amplifier
Burmester 232
¥4,730,000 税込

画像1: 『ブルメスター プリメインアンプ 232』Qobuzが奏でる音楽は、ここまで感動できるのか!嗚呼、音が生きている! これぞ至高の音だ

●出力:95W+95W(8Ω)、150W+150W(4Ω)
●接続端子:アナログ音声入力2系統(XLR)、デジタル音声入力4系統(同軸、光、AES/EBU、HDMI eARC)、アナログ音声出力1系統(XLR)、アナログサブウーファー出力1系統(モノーラル/XLR)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、LAN端子1系統、ヘッドホン端子1系統(6.3mm標準フォーン)、ほか
●対応プロトコル:Qobuz、Spotify、AirPlay2、TIDAL、Roon Ready
●寸法/質量:W450×H203×D480mm/29kg
●備考:アップデートにてUSB Type B、USB Type C、micro SD入力に対応予定
●オプション:MC Phoneモジュール(XLR端子/¥605,000税込)
●ラインナップ:ストリーミングおよびデジタル入出力に非対応モデル(232 Basic、¥3,630,000税込)あり

ドイツを代表するハイエンド・オーディオブランド、ブルメスターの最新世代のプリメインアンプ。同社のステレオパワーアンプ216と同等の増幅回路構成を備えつつ、最新の音楽ストリーミングサービスに対応した。効率的な放熱を意図して前面ならびに左右両サイドに露出させたヒートシンクと鏡面仕上げでタッチパネル仕様フロントパネルなど、ブルメスターらしいエクステリアに、最新のデジタル技術を盛り込んだ。仕上げはシルバーとブラックが用意されている

 

画像2: 『ブルメスター プリメインアンプ 232』Qobuzが奏でる音楽は、ここまで感動できるのか!嗚呼、音が生きている! これぞ至高の音だ

ジャーマン・クラフトマンシップの粋を集め、細部に渡って極めて高い質感で作られている。アナログ音声入力はXLRバランス2系統のみで、LANやHDMI eARCを含むデジタル音声がメインソースとして想定されている点が新しい。高品位なフォノアンプでも知られているブルメスターらしく、MCフォノモジュールの搭載も可能で、そのモジュールが背面左上側のスロットに組み込まれている個体を撮影した

 

問合せ先:(下部)ノア TEL. 03(6902)0941

画像: 伝統と最新技術が融合したブルメスターの超本格プリメイン

232は純正の「Brumester Conduct」アプリが提供され、音量調整や入力切り替え、各種詳細設定などが可能。今回はiPhoneにインストールしたQobuzアプリから232を再生機器として選ぶ「Qobuz Connect」機能を活用した

 

 

解像度の高さと響きの豊かさを両立したAURAの音に聴き惚れる

 ここでは、232のQobuz Connect機能を用いて2種類のスピーカー、すなわちエステロンAURAとソナス・ファベールGuarneri G5を鳴らしてみたが、現代高級スピーカーの魅力が十全に伝わるすばらしい音を聴くことができた。とくに全帯域にわたってみっちりとエネルギーが凝縮したサウンドステージの安定感は驚くべきもので、232の実力の高さと高音質ストリーミングサービスQobuzの可能性の高さを再認識した。

 最初に聴いたのは、東欧バルト三国エストニアのエステロンAURA。コンポジット材(鉱石とポリマーの複合材)を用いた同社製スピーカーならではの優美な曲線で構成されたエンクロージャーにまず目を奪われる。テスト機はシックなアイアン・グレー仕上げ。構成は3ウェイ密閉型で、ユニット配置が興味深い。250mmペーパーコーン・ウーファーは底面に装填され、キャビネット上部には130mmミッドウーファー2基で26mmソフトドーム・トゥイーターを挟み込む仮想同軸配置が採られている。

画像5: 『ブルメスター プリメインアンプ 232』Qobuzが奏でる音楽は、ここまで感動できるのか!嗚呼、音が生きている! これぞ至高の音だ

Speaker System
estelon AURA

¥3,960,000 (ペア、Iron Grey仕上げ)税込
●型式:3ウェイ4スピーカー・密閉型
●使用ユニット:26mmドーム型トゥイーター、130mmコーン型ミッドレンジ×2、250mmコーン型ウーファー
●出力音圧レベル:90dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:85Hz、2.1kHz
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W384×H1,366×D367mm/34kg
●備考:写真はIron Grey仕上げ。通常仕上げ(White)は¥3,465,000(ペア)税込

エステロンは、エストニアのタリンで2010年に創業されたハイエンド・スピーカーメーカーで、独自のコンポジット材を使って独特のオーガニックなデザインに仕上げられているのが共通する特徴だ。AURA(オーラ)は、ソフトドーム型トゥイーターを、130mmミッドレンジで挟み込んだ中/高域部と、スピーカー底面に下向きに配置した250mmウーファーによる3ウェイ4スピーカー構成の密閉型モデル。スリムなフォルムによる理想的なステレオフォニックの再生と、低域が床面と音響的に融合することによる豊かな低音再生の両立を追求している

問合せ先:(株)アークジョイア TEL. 03(6902)0480

 ウーファーとミッドウーファーのクロスオーバー周波数は、音の発生場所が検知しにくいブロードな指向性を持つ85Hz(-18㏈/oct.)と低く設定されている。本機は2ウェイ+サブウーファーシステムという捉え方もできるかもしれない。

 AURAは仮想同軸型2ウェイ部と底部のウーファー位置が大きく離れているが、提示される音像表現に全く違和感がない。全帯域がスムーズに繋がり、音楽の姿かたちを精確に描写する印象だ。分割周波数とフィルター特性、それにコンピューターシミュレーションを用いて決定されたに違いないユニットの配置場所が絶妙だからだろう。

 様々なジャンルの音楽を聴いたが、いちばん感動したのはパティ・スミスの2004年作『Trampin'』の「ラジオ・バクダッド」だった。このアルバム、シンプルなギターロック作なのだが、ぼくがこれまで聴いてきた21世紀のロックアルバムの中で最も音が良いと思う作品。232とAURAのペアが聴かせる途方もないエネルギーの爆発にドギモを抜かれた。音が生きているのだ。これほど各楽器が手でつかめそうな音像の見通しの良いトランスペアレントな録音は稀だと思うが、232&AURAは本録音の魅力を見事に浮き彫りにしてみせたのである。とくによく伸びた量感に満ちた低音のリアリティは抜群で、これほど生々しい豊かな低音を聴かせてくれる密閉型スピーカーは稀だろう。

 ポルトガル出身でオランダで活躍する女性歌手、マリア・メンデスのライヴ・アルバムは、フルオーケストラの伴奏を得たゴージャスなサウンドが聴きもの。なめらかにうねるオーケストラの厚みのある響きと、極めてクリアーに屹立する管楽器の対比が面白く、情感たっぷりのマリアの歌声がシャープにファントム定位し、まるでコンサート会場にワープしたかのような臨場感。ホールプレゼンスも生々しい。

 エベーヌ弦楽四重奏団が世界中を旅しながら録音したベートーヴェン・チクルスから「弦楽四重奏曲第7番第1楽章」を聴く。232&AURAは内声部のディテイルをきめ細かく描写する解像力の高さを訴求し、4人の奏者が眼前にクリアーに浮かび上がってくるようなリアルなソニックステージを提示した。232の凄さとともにQobuzの配信クォリティの高さに改めて驚かされた次第だ。

 ブランフォード・マルサリスの最新作『Belonging』からジャズ・バラード「ブロッサム」でも、このシステムの解像力の高さに息をのんだ。まあとにかく音数が多く、ドラマーのブラッシュワークなど電子顕微鏡でのぞいたかのようにディテイルを掘り起こしていく。しかもソノリティの豊かさもバツグンでテナー、ベース、ピアノの音色の美しさにうっとりと聴き惚れた。

 

Guarneri G5の絶品の声に悶絶!スケール感と音像の実体感も見事

 次に232でソナス・ファベールのGuarneri G5を鳴らしてみよう。本機は1993年に登場した初代機から数えて第5世代となるガルネリのオマージュモデル。イタリア・クレモナ出身の偉大な弦楽器製作者ガルネリ一族へ賛辞を捧げたスピーカーシリーズである。

 コンポジット材を用いたモダンデザインのAURAと好対照なトラディショナルデザインの本機もため息が漏れるほど美しい。シート状の木材を積層させ、プレス機で加圧したプライウッド構造のキャビネットの見事な仕上げには、メイド・イン・イタリーの粋が結集しているように思う。

 本機は非常に凝った構造のスタンド一体型で、150mmペーパーコーン・ウーファーとソフトドーム・トゥイーターの2ウェイ機。ドームの頭頂部をダンプし、超高域で発生するダイアフラムの逆相挙動を制御しているのは、近年の同社製スピーカーの一大特長だ。

画像6: 『ブルメスター プリメインアンプ 232』Qobuzが奏でる音楽は、ここまで感動できるのか!嗚呼、音が生きている! これぞ至高の音だ

Speaker System
Sonus faber Guarneri G5

¥3,850,000 (ペア、スタンド付属)税込
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:28mmドーム型トゥイーター、150mmコーン型ウーファー●出力音圧レベル:86dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:2.2kHz
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W300×H1,139×D390mm/27.6kg(スタンド装着時)

1987年のElecta Amator(エレクタ・アマトール)の登場以来、欧米のみならず日本でも非常に高い人気を誇るイタリアのソナス・ファベール。多数の革新的スピーカーを世に送り出してきたが、1993年にリリースした「Guarneri Homage(ガルネリ・オマージュ)」は、弦楽器の名工の名を冠したモデルとして一斉を風靡。その後に続いたAmati(アマティ)やStradivari(ストラディヴァリ)など、Homageシリーズとして世代を重ねた。本機はHomageシリーズの第5世代機として2024年に登場。天然木とアルミニウムを組み合わせた優美なキャビネットと、最新技術が徹底的に投入され、ナチュラルかつ艷やかなサウンドに磨きをかけている。不要振動を抑制する機構を備えた専用スタンドが付属

問合せ先:(株)ノア TEL. 03(6902)0941

 

 まず驚かされたのは、小型2ウェイ機とは思えない雄大なスケール感の表現。これは232で鳴らしたからこそなのだろうが、音像の実体感において、250mmウーファー搭載機のAURAにまったく引けを取らないのである。それに加えて、ソナス・ファベールならではと思える音色の芳醇さがたまらない。

 ブラジルのベテラン歌手カエターノ・ヴェローゾの『粋な男』の再生は悶絶級のすばらしさ。陰影に富んだカエターノのヴォーカルは絶品で、やはりカンタービレの国のスピーカーだナと思う。チェロの独奏もよく粘り、心の襞に沁み込むようなパフォーマンスを示した。

 マリア・メンデスのライヴ作は、ホールプレゼンスの豊かさはAURAに譲るが、ビシッとした音像の実体感は本機が勝る印象だ。

 いずれにしても、AURA、Guarneri G5ともに音楽ストリーミングサービスはここまでイケるのかと深い感慨を抱かせる至高の音を体験させてくれた。ディスクプレーヤーなんていらない、Qobuzだけで良いから最高の音を聴きたいという方には232を太鼓判を押しておすすめしたい。

 ちなみに試聴取材に同席してくれた本誌編集長に「2つのスピーカー、どっちを買う?」と聞いてみたところ「めちゃくちゃ悩みますが、あえて選ぶならAURAでしょうか……」とのこと。ぼくはGuarneri G5かな……。

 

画像7: 『ブルメスター プリメインアンプ 232』Qobuzが奏でる音楽は、ここまで感動できるのか!嗚呼、音が生きている! これぞ至高の音だ

再生楽曲はこちら>

https://open.qobuz.com/playlist/34220755

 

>本記事の掲載は『HiVi 2025年秋号』

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