気持ちよいリズム感と表現力、そして情感たっぷりの歌声がお見事

 すでに多くの読者が利用しているであろう音楽ストリーミングサービス「Qobuz」。僕もサービス開始以来いろいろと聴いているが、楽曲のラインナップを含めて満足度は高い。

 気になる音質の点でもほとんど不満はない。ロスレス圧縮のFLACでストリーミング配信されるので、ネットワーク環境に依存する問題を除けば、自宅のミュージックサーバーに保存した楽曲との音質とほぼ変わらない。オーディオ取材と言えば、ディスクやダウンロード購入したハイレゾ音源をUSBメモリーに保存して持って行くのが普通だったが、これからはQobuzに試聴曲のプレイリストを登録しておけばよいという時代がやってくるかもしれない。

 では、そんなQobuzを使って実際に注目製品の試聴をしてみようというのがここでのテーマ。試すのは、ソナス・ファベールから昨年発売されたばかりのSonetto(ソネット)G2シリーズの2製品。2ウェイブックシェルフのSonetto Ⅰ G1とトールボーイ型のシリーズ最上位モデルで3ウェイ4スピーカーのSonetto Ⅷ G2だ。

 

Sonus faber

画像: 写真(左)Sonetto Ⅷ G2、(右)Sonetto Ⅰ G2

写真(左)Sonetto Ⅷ G2、(右)Sonetto Ⅰ G2

Speaker System
Sonetto Ⅰ G2
¥363,000(ペア) 税込

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:28mmドーム型トゥイーター、125mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:2.1kHz
●出力音圧レベル:86dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W200×H377×D304mm/8.4kg
●オプション:専用スタンド(Stand Sonetto G2、¥148,500ペア税込)あり

 

Speaker System
Sonetto Ⅷ G2
¥1,386,000(ペア) 税込

●型式:3ウェイ4スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:28mmドーム型トゥイーター、165mmコーン型ミッドレンジ、203mmコーン型ウーファー×2
●クロスオーバー周波数:350Hz、2.5kHz
●出力音圧レベル:90dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W334×H1,190×D480mm/45kg

●問合せ先:(株)ノア TEL. 03(6902)0941

 

 

 第2世代を意味するG2シリーズとなるにあたって、同社フラッグシップモデル「Suprema(シュプレーマ)」の技術を継承していることが最大の特徴。Sonetto Ⅷ G2(およびSonetto Ⅴ G2、Sonetto Center G2)に搭載された「カメリア・ミッドレンジ」は、まさにその「Suprema」を踏襲するユニットだ。振動板の5箇所をカットし円形特有の共鳴を回避、名称にあるようにカメリア(椿)に似た形状から命名され、あえて着色せずに、外観のアクセントにもなっている。

 また、コルク材を使用した中高域専用の密閉チェンバーを用いてチェンバー内の共鳴や定在波を最適化する技術も採用している。

 このほか、ソナス・ファベール伝統のリュート形状のキャビネットはさらに改良が加えられ、18mm厚の高密度ファイバーボードによる補強が入るなど剛性を高めた。足元の「カルカーレ・ベース」は、素材や配合を試行錯誤して開発した石灰石ベースのカスタムメイド・コンクリート。キャビネットの構造を支えて剛性を高め、設置の安定性も高めている。軽く叩いてみるとコツコツと変な残響のない心地よい音がする。金属や木製のベースとはひと味違う感触だ。

 ソナス・ファベールのラインナップとしてはミドルクラスにあたるシリーズではあるが、音、デザインともに出来が良く、こうした評価の高さはHiVi本誌前号掲載の「冬のベストバイ」でいずれも上位に選ばれている点でも明らかだ。

 

Sonetto Ⅰ G2の自由闊達で「歌う」ような音が気持ち良い

 では、いよいよ試聴に入ろう。試聴ではMacBook AirでQobuzアプリを使って再生。そのUSBオーディオ出力をデノンDCD-SX1 LIMITEDのUSB入力に接続、バランス出力をデノンPMA-SX1 LIMITEDに接続して聴いた。

 

画像1: 『Sonus faber 』注目モデルで聴くQobuz《スピーカーシステム編》

 

 ふだんからハイレゾ音源で聴いているクルレンツィス指揮ムジカ・エテルナによる『チャイコフスキー:交響曲第6番<悲愴>』の第3楽章。DCD-SX1 LIMITEDにUSBメモリーを直挿しして聴いたハイレゾ音源ファイルとの差をあまり感じない。従来ならばストリーミング再生では元々の情報量に差を感じることが少なくなかったが、そういった差異を気にせず音楽に集中できる。ストリーミング音楽サービスも進歩したものだと感じた次第。

 Sonetto Ⅰ G2はブックシェルフ型ということもあり、オーケストラのスケール感や雄大さは少しコンパクトになってしまうが、そのぶん軽やかで自由闊達に歌う様子が楽しい。大太鼓やティンパニの音を聴くと打音としての低音はしっかりと出ていて、しかも量感に頼らず膨らみすぎないのもいい。軽快で弾むような低音だ。中高域は明るく華やかで「歌う」という表現がぴったり合う気持ちよさがある。しかも、派手になりすぎたり、特定の高音がきつく感じるようなこともない節度のある鳴り方だ。

 続いて小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラによる『ベルリオーズ:幻想交響曲』の第4、第5楽章。収録されたニューヨーク、カーネギーホールの響きが豊かに出て、音場感も広々としている。主旋律を支えるように少し音量を抑えた音も明瞭で、個々の楽器の音の粒立ちも良い。死刑台に鳴り響く鐘の音の響く様子がきれいだ。音の定位そのものは左右のスピーカーを結ぶ線よりも後方に位置するが、リスニングポイントまでスムーズに音が届くような広がり方でリアルスティックに描く。大太鼓の力強い打音もしっかり描かれ、エネルギーもしっかりと感じられる。加えて、ソナス・ファベールの魅力でもある気持ち良く楽しく歌っている感じが実に魅力的だ。

 

画像2: 『Sonus faber 』注目モデルで聴くQobuz《スピーカーシステム編》

Sonetto G2シリーズの最小モデルで、いわゆる2ウェイブックシェルフ型スタイルを採るSonetto Ⅰ G2。シリーズの兄機と同様に、設置している環境に左右されずに、設計者の意図通りの動作になるようなボトム・バスレフ構造のバスレフポートが採用されている。ブックシェルフ型は前方に背圧を放射、トールボーイ型は360度方向に背圧を拡散する仕組みだ

 

アローポイントDAD(Damped Apex Dome)テクノロジーを適用した、シリーズ共通の28mm口径のドーム型ユニット。ドームの中央、頂点部分を的確にダンプすることで、ボイスコイルの逆相動作を抑え、音の透明度を高めるとともに、音場のスムーズな広がりを追求する

 

シリーズ共通のバイワイアリング接続対応のスピーカー端子(写真はSonetto II G2)。Yラグ、バナナプラグ接続に対応している。洒落た端子カバーが付属し、スピーカーケーブル接続後に端子部がむき出しにならないような工夫も備わる

 

 

さすがのSonettoⅧ G2の大スケール。堂々と腰の座った表現が実に雄大だ

 大型のSonetto Ⅷ G2では、さすがにスケールはぐっと大きくなる。チャイコフスキー『悲愴』交響曲は、コントラバスの胴鳴りのサイズ感が等身大になって、オーケストラ全体のスケール感もぐっと雄大になる。このあたりの腰の据わった感じは203mmウーファー2発の威力だろう。小気味よく弾むよう鳴り方のSonetto Ⅰ G2に比べると、ややゆったりとした印象になるが、堂々とした表現ともいえそうだ。

 ベルリオーズ『幻想交響曲』は、ホールの響きがより豊かになり、低音楽器によるリズムの力強さも際立つ。目を見張るのは、充実した低音を軸に安定感のあるステージの上に、軽やかに踊るような中高域が明瞭に定位すること。オーケストラの配置を写実的に描写するというよりは、楽曲のイメージをよく伝えるような鳴り方だ。第4楽章は「断頭台への行進」、第5楽章は「魔女の夜会の夢」というユニークな標題がつけられているが、悲惨さというよりも、むしろ勇ましく行進する様子がよくわかる。

 

画像5: 『Sonus faber 』注目モデルで聴くQobuz《スピーカーシステム編》

シリーズ最上位Sonetto Ⅷ G2。高さ約1.2m、質量45kgに達する堂々とした体躯ではあるが、優美なカーブを巧みに活かしたエクステリアデザインと細部まで質感に優れた仕上げで、いかにもソナス・ファベールの美意識が際立っている

 

Sonetto Ⅷ G2のハイライトが、「Camelia Midrange」と呼ばれる中域ユニット。振動板外周を5箇所カットして、円形特有の共鳴を防ぎ、ナチュラルな音を目指す。伊トスカーナ地方の椿(カメリア)に形状が似ているため、セルロース・パルプをあえて着色せず、オフホワイトカラーのまま搭載している。シリーズでは他の3ウェイ機Sonetto Ⅴ G2とSonetto Center G2にも搭載されている

 

 

ソナス・ファベールで鳴らすアニソンの表現力に大感動

 さて、ここからは僕の好きなアニメソング。Qobuzに限らないが、ついこの間まで放送されていた新しい曲の配信が、すべてではないとはいえ素早く配信されるようになってきたのは歓迎すべきことだ。

 ラップのリズムに乗せて、日本語の歌詞を気持ちよく乗せていく『オトノケ - Otonoke/Creepy Nuts』は、リズム感とグルーヴの気持ち良さが肝心。Sonetto Ⅰ G2はリズムが気持ち良く弾み、転調によるテンポ感の変化もより明瞭。早口言葉のように韻を踏んでリズムを作っていくヴォーカルもクリアーで滑舌に優れ、歌詞もよくわかる。日本語の歌を聴くうえでは外せないポイントだ。

 大型のSonetto Ⅷ G2になるとリズム感はわずかにゆったりと感じられるが、ビート感がパワフルでグルーヴの気持ち良さをきちんと伝える。好みでいえば、もっとキレがほしい気もするが、ラップ音楽のビート感ではこの表現は正解なのかもしれないとも思った。

 地動説をテーマとした中世を舞台としたアニメ『チ。 ―地球の運動について―』のエンディング曲『アポリア/ヨルシカ』は序盤のピアノの弾むようなリズム感はSonetto Ⅰ G2が気持ちよい。つぶやくような歌唱もクリアーで、サビでのコーラスを交えた伸びのある歌声も軽やかだ。歌詞をじっくり味わいながら聴ける音といった雰囲気を醸し出す。ヴォーカルを鳴らすとソナス・ファベールのスピーカーは本当に良いと実感した。表現力と情感の表現が見事なのである。

 Sonetto Ⅷ G2は、バックの伴奏の<腰>が据わるためか、声が明瞭に定位して、空間にポッと浮かび上がるような音場感になる。3ウェイ構成になるためか、Sonetto Ⅰ G2と比べると、声の実体感や質感がワンランク上の表現になっていることがわかる。新発想のカメリアミッドレンジユニットの良さ、効能が如実に感じられた格好なのではないかと思う。

 

音楽を次々と聴きたくなるSonetto G2シリーズに感服

 これらの曲以外にも、Qobuzで数々の曲を次々に聴き込んだが、思わず「試聴テスト」ということを離れて純粋に音楽を楽しんでいる気持ちになる。実は、こうした気持ちになれることは試聴テストの場でも大事な事柄であり、音質に問題があると余計なことばかり気になって、集中できなくなってしまう。

 そんな意味でもQobuzはしっかりと音楽を楽しむことができ、音質的にも優秀な音楽サービスであることがよく理解できる。また、その原動力となったのが、優れた音楽サービスの魅力を存分に味わわせてくれたSonetto G2シリーズの実力だ。しかも気持ち良いリズム感とか、表現力と情感たっぷりの歌声といった、自らの持ち味をしっかりと伝えてくれる点にも、改めて感心させられた。

 

 

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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』

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